サイクルロードレースの国内最高峰のリーグ戦『Jプロツアー』。2日間の連戦となる広島森林公園ロードレースのDay-2が9月27日に広島県中央森林公園で開催された。リーグの頂点に立つ選手の証である赤いリーダージャージはDay-1で宇都宮ブリッツ…

サイクルロードレースの国内最高峰のリーグ戦『Jプロツアー』。2日間の連戦となる広島森林公園ロードレースのDay-2が9月27日に広島県中央森林公園で開催された。リーグの頂点に立つ選手の証である赤いリーダージャージはDay-1で宇都宮ブリッツェンの増田成幸選手の手に移動した。このまま増田選手が守るのか?チームを挙げて追い上げるベネズエラ人のレオネル・アレクサンダー・キンテロ・アートアーガ(マトリックス パワータグ)が奪取するのか?に注目が集まった。

前日同様の会場で開催されるDay-2だが、距離は12.3kmのサーキットを右回りに6周する73.8kmの設定。前日の半分の距離になる。気温は25度。雲の合間に時折、青空も見える快適な秋の気候となり、選手たちにとっても全力で臨める絶好のコンディション。この短いレースに、それぞれの思惑を抱えたチームの選手たちはどのように挑むのか。スタート前の会場にも緊張感が漂っていた。

スタート直後からアタックの掛け合いとなり、レースはハイスピードな展開に。



序盤から椿大志(キナンサイクリングチーム)と阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)の2名が先行する



沢田桂太郎(TEAM BRIDGESTONE Cycling)が強力に牽引し、先行する2名に迫った

2周目に椿大志(KINAN Cycling Team)、阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)の2名が飛び出した。メイン集団は先頭にマトリックスパワータグ、Team UKYO、那須ブラーゼン、TEAM BRIDGESTONE Cyclingが集まり、コントロールを始め、2名と集団の差は1分以内にキープされた。周を追うごとに、ジワジワと差が詰められ、4周目にメイン集団が2名を飲み込んだ。



パワータグが先頭に集結、集団をコントロール

マンセボ、小林が合流し、一気にチーム力を高めたマトリックスが先頭を固め、集団を制御し始める。5周目に入ると、前日と全く同じようにマンセボが先頭に立ち、強烈な牽引を始めた。集団は縦に長く伸び、選手たちが振り落とされていく。

上り区間に入ると、キナンサイクリングチームからトマ・ルバや山本元喜らが次々と飛び出し、波状攻撃を展開し始めた。しかし、この動きもマンセボがことごとく反応して、どのアタックも決定的な動きにはならなかった。



最終周回、上りで最後の望みを懸け、アタックするトマ・ルバ(キナンサイクリングチーム)

最終周回を迎えても状況は変わらず、マトリックスの砦を破るものは現れなかった。トマ・ルバがラスト3kmの上りで渾身のアタックを仕掛けるが、勝利を狙うチームたちに阻まれ、抜け出しを決めることはできなかった。


選択肢は集団スプリントに絞り込まれていく。ラスト200m、ホームストレートに飛び込んだ集団の中から西村大輝(宇都宮ブリッツェン)が力強く伸びてきた。チームメイト孫崎のリードアウトで爆発的なスプリント力を持つ今村駿介(TEAM BRIDGESTONE Cycling)が加速。キンテロもゴールを狙い、全力でスプリントを仕掛ける。


ところが2名とも西村には届かず。西村はそのままフィニッシュラインを越え、自身初のJプロツアー優勝をもぎ取った。チームにとっては今季5回目の勝利となった。

平均時速は前日より2km/h以上も速く、42km/hという高速レースとなった。さらにゴールは集団スプリント勝負と、このサーキットを使うレースとしては異例づくしの展開。2020年は短いシーズンとなり、残りレースが僅かとなり、ようやくスタートラインに並ぶことのできた選手やチームの勝利への思いが強いせいなのか?世界の頂点で戦ってきた驚異の身体能力とレース勘を持つマンセボの存在からくるものなのか?



スプリント勝負を戦った3名が並ぶ表彰式



勝利の喜びを語る西村

初勝利となった西村は表彰台で喜びを語った。上りスプリントは自身の得意なパターンであり、ここだと思えるタイミングで仕掛けることができ、勝利できたと。



念願のプロリーダージャージを手に入れたキンテロ



この日もリーダージャージに恥じない積極的な走りを見せた織田(弱虫ペダルサイクリングチーム)



プロリーダージャージとネクストリーダージャージの2名

このレースで3位になったキンテロが僅かに累積ポイントで増田を上回り、リーダージャージはキンテロの手に移動することになった。その差は24ポイント。残された3レースの優勝ポイントはそれぞれ300、450、900ポイントあり、中間スプリントポイントも設定されている。まだまだ十分に挽回は可能だ。U23のリーダーは変わらず、織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)が守り続けた。

残りのレースは大分のクリテリウム(レース格付・ブロンズ/優勝ポイント300)、ロードレース(レース格付・シルバー/優勝ポイント450)。そして、重要度が高い経済産業大臣杯(レース格付・プラチナ/優勝ポイント900)の3戦を残すのみ。マトリックス パワータグがこのままの勢いで最後までジャージを守るのか?ここまで大健闘を見せ、ジャージを着続けてきた宇都宮ブリッツェンが奪い返すのか?最終レースまで目が離せない展開となった。

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【結果】広島森林公園ロードレースDay-2  JPT 73.8km
1位/西村大輝(宇都宮ブリッツェン)1時間44分24秒
2位/今村駿介(TEAM BRIDGESTONE Cycling)+0秒
3位/レオネル・キンテロ(マトリックスパワータグ )+0秒
4位/孫崎大樹(TEAM BRIDGESTONE Cycling)+1秒
5位/フランシスコ・マンセボ(マトリックスパワータグ)+2秒
6位/横山航太(シマノレーシング)+3秒

【敢闘賞】
椿大志(KINAN Cycling Team)

【中間スプリントポイント】
2周回完了時 阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)

【Jプロツアーリーダー】
レオネル・キンテロ(マトリックスパワータグ)

【U23リーダー】
織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)

画像提供:一般社団法人 全日本実業団自転車競技連盟(JBCF)