前半10分、敵陣22メートル付近左。パナソニックはSH田中史朗のキックで落球を誘い、自軍スクラムを獲得する。先制の好機。先頭のPR平野翔平は背筋を芝と平行に保ち、強力さで鳴らす相手の圧力下でボールを確保する。

 出された楕円球をSH田中が拾い上げると、後方から2人のランナーが駆け上がる。相手防御網をめがけ、突っ込む。奥側のCTB林泰基が2人のタックラーを引き寄せるかたわら、手前側のWTB福岡堅樹がSH田中のパスを受け取る。守備の背後を抜け出し、インゴールを割った。

 ゴールキック成功。スコアは7-0。

「本当は林に渡すところ。ただ、ヤマハ(のFW陣)がスクラムに集中していて、堅樹の目の前が空いた」

 アシスト役のSH田中がこう振り返るなか、ロビー・ディーンズ監督はその背景に想像を巡らせる。

「前に出る選手がいれば、相手の守り以上の結果が得られる。いいプラットフォームがあったから、堅樹のトライが生まれた」

 8月のトップリーグの開幕節で敗れたヤマハに対し、パナソニックは「正確なプレーをする。お互いを信じ合う」と指揮官は言う。

「プラットフォーム」を全うした結果か。攻撃の折は、先制時のCTB林やWTB福岡のような仕掛け役が続出。相手守備の出足を鈍らせる。

 12分にはSO山沢拓也が魅せた。例の仕掛け役の後ろでバトンをもらうや、目の前の相手の背後へキック。敵陣22メートルエリア左でその球を再獲得し、援護についたCTB林のトライを呼んだ。

 パナソニックは続く24分にも、SO山沢のキックで敵陣の深い位置へ侵入。攻撃権を得る。SH田中が敵の死角へ配球し、WTB山田章仁が加点した。19-0。

 我先に、己の形を示す。その姿勢は守りでも貫く。37分、グラウンド中盤で横幅の広い防御網を作る。その後ろにキックをされると、FL布巻峻介がカバーに回る。

 攻守交替。刹那、左大外に展開。WTB福岡が敵陣22メートルまで走り、最後はCTBリチャード・バックマンが大勢を決した。33-7。

 敗れたFL三村勇飛丸主将は、もともとのお家芸たるスクラムについても「もっとエナジーを出せた」と悔やみつつ、こうもしていた。

「(パナソニックは)キックの攻防の理解度が高かった」

 昨季までトップリーグ3連覇中の勝者は、今季、尻上がりに調子を上げてきた。12月に合流したオーストラリア代表のFL/NO8デーヴィッド・ポーコックは、この日も得意のジャッカルを連発。倒れた相手の持つボールへ何度も絡み、対するFL三村主将に「判断が素晴らしい。(ランナーを)1人にしないよう意思統一していたのですが、少しでも1人にしたら…」と言わしめた。

 29日、東京・秩父宮ラグビー場でサントリーとの決勝戦に挑む。

 この年度の最初のタイトル奪取へ、2年目にしてリーダー格のFL布巻ゲーム主将はこうだ。

「相手どうこうより、自分たちのしたいことをできるか」

 多彩な個性が、ひとつの意志で「プラットフォーム」を動かす。(文:向 風見也)