『特集:Jリーグが好きだっ! 2021』2021シーズンJ2展望2月26日に開幕するJリーグ。スポルティーバでは、今年のサッカー観戦が面白くなる、熱くなる記事を、随時配信。さまざまな視点からJリーグの魅力を猛烈アピール!今回は22チームで争…

『特集:Jリーグが好きだっ! 2021』
2021シーズンJ2展望

2月26日に開幕するJリーグ。スポルティーバでは、今年のサッカー観戦が面白くなる、熱くなる記事を、随時配信。さまざまな視点からJリーグの魅力を猛烈アピール!

今回は22チームで争われる、J2の戦いを展望。プレーオフなしの自動昇格(2チーム)・降格(4チーム)となるレギュレーションでの争いは、激戦になるのは間違いない。



J2の激しい昇格争い。1試合1試合、気の抜けない戦いがつづきそうだ

 昇格(やる)か―――、降格(やられる)か―――。血で血を洗う仁義なきJ2抗争は、2月27日に幕が上がる。

 と言うと、大げさかもしれないが、今季のJ2が空前絶後の激しいリーグになるのは避けられないだろう。上位2チームがJ1へ自動昇格、下位4チームがJ3へ自動降格。プレーオフはなくリーグ戦の結果が直結する。まさにタマのとりあいだ。

 今季の争いを一言で表わすと「本命不在」か。プレーオフがなくても、多くのクラブに昇格の可能性があると言えるシーズンだ。J1から降格してきたチームも、J3へ降格したチームもないため、全体的に実力が拮抗した展開が予想される。5人交代と飲水タイムの導入は継続となった(ただし、飲水タイムは両チームが合意した際はなくすことも認められている)。

 コロナ禍のなか過密スケジュールという嵐が吹き荒れ、例年にも増して血気盛んな若手選手たちがJ2の荒波で暴れまわるだろう。若手選手の活用とケガ人をいかに減らせるかは、このリーグを制するうえで大きなポイントになりそうだ。

<J1昇格を知り尽くした監督が京都へ>

 ただ、「本命不在」と言われるなかでも、昇格候補の呼び声が高いのが京都サンガF.C.である。流通経済大学で1年間指導し、チームをアミノバイタルカップ初優勝に導いた曺貴裁氏が、京都の指揮を執ることになった。京都出身の曺監督は次のように語っている。

「京都はスポーツを度外視して、神社、仏閣、世界遺産になるようなものを見に来る人が多く足を運ぶ場所。そういう人たちと、元々京都に住んだり関係している人たちに何を見せなければいけないかというと、魅力や面白さ、激しさやフェアさ。そういうものが見ている人たちの心を打って、大きな売りになる都市だと感じている。

 湘南には湘南の良さがあった。海の近くなので暴れん坊的な気質のサッカーが街に合っていたと思う。京都には京都の良さがあって、色んな人を巻き込んで一つのことを成せる可能性が高い街。京都サンガもそうなれるようにやっていく。金閣寺に勝てるかはちょっとわかりませんが(笑)、でもそのぐらいのつもりでやりたい」

 金閣寺を持ち出すあたりは曺監督らしく、相変わらず視座が高い。

 京都はオフシーズンに曺貴裁サッカーをよく知るMF武富孝介、MF松田天馬、中川寛斗、白井康介を補強した。彼らがピッチ内外で伝道師となり、1年目からスピード感をもってチームにスタイルが浸透していくと思われる。

 昨季J2得点王のFWピーター・ウタカの残留も決まり、得点力に関しては文句なし。さらに中野桂太ら若手で期待される素材も多く、積極的に若手選手を起用する曺監督のもとでブレイクを果たすプレーヤーも出てくるだろう。また曺監督は若手のみならず、年齢に関係なく選手を成長させてきたので、中堅やベテラン選手の成長も期待できる。

 昇格候補と呼ばれることについては「プレッシャーです(笑)」と笑顔を見せたが、あくまで今目の前にあるものをこなしていく、ブレない姿勢を見せた。

 曺監督は湘南ベルマーレ時代にJ2を3度戦い、そのすべてでJ1昇格を成し遂げているのも強みだ。曺監督が生まれ育った地元京都で、チームを11年ぶりの昇格に導く可能性は決して低くはない。

<昨季の上位陣は戦力を維持>

 そのほかに昇格候補に挙げられるのが、昨季の上位陣であるV・ファーレン長崎、ジュビロ磐田、モンテディオ山形、ヴァンフォーレ甲府あたりか。

 長崎は昨シーズンのレギュラーメンバーをほぼ残留させることに成功し、J1主力級のFW都倉賢を補強できたのも大きい。戦力的にはJ2最高クラスと言える。手倉森誠監督のあとを受けるのは、アシスタントコーチを務めていた吉田孝行氏。クラブとして、昨季からの継続路線を貫く姿勢が感じられる。
 
 その長崎に戦力で肩を並べるのが磐田だ。MF上原力也の放出は痛いが、レギュラー組をほぼ残留させることに成功した。負傷が長引くかと思われたFWルキアンはキャンプでしっかりトレーニングマッチもこなし、健在をアピールした。

 どうやら鈴木政一監督は、遠藤保仁を中心としたプランAと、相手が遠藤封じに来た時のプランBを準備して戦っていくようだ。かつての常勝軍団は、これ以上長くJ2にいられないという想いも強い。

 監督継続を選んだ山形(石丸清隆監督)と甲府(伊藤彰監督)は、昨季1年間で積み上げてきたものが、真価を問われる年となる。両チームともに昨季は戦術の幅が広がり、臨機応変に戦える強さを身に着けた。今季はJ1昇格が現実的な目標となる。

 そして今季のJ2でなんと言っても恐ろしいのが、J3降格が通常の倍の4チームに増えたことだ。リーグ終盤戦にもなれば、なりふり構わない残留争いが繰り広げられる可能性がある。

 上記に挙げたJ1昇格候補のクラブが、サプライズ降格という憂き目にあうかもしれない。昨季最下位だったレノファ山口をとってみても、降格候補とも昇格候補とも言えるほど予想が難しい。それだけ今季のJ2は各チームの力が拮抗している。

 昨季は降格がなくなったため、チームが成績不振でもシーズン中の監督交代というリスクを取るところが少なかった。だが、今季は監督交代の判断が遅れれば、過密スケジュールも手伝い一気に降格の危機に陥る可能性がある。シーズン中の選手補強も含め、フロントの素早い判断と行動が必要となってくる。悠長に構えていたらあっという間にJ3降格は目の前だ。

 早々の監督解任、金にものを言わせる夏の大型助っ人補強、急なレンタルバックなどなど、今季のJ2はそんな仁義なき戦いが見られるかもしれない。