「光の消えたチームで、クボにはわずかな煌めき」 レアル・ソシエダ戦に0-1で敗れた後、大手スポーツ紙『アス』は選手個別評…

「光の消えたチームで、クボにはわずかな煌めき」

 レアル・ソシエダ戦に0-1で敗れた後、大手スポーツ紙『アス』は選手個別評価の記事で、そんな見出しを打っている。ヘタフェの出場選手中、単独最高の二つ星(0~3の4段階)と採点。右サイドで相手を翻弄し、左足でクロスを味方に合わせたプレーは数少ない見せ場で、「純粋なサイドアタッカーとしてプレー。1対11の勝負を求めながら、二度、好機を作り出した」と高い評価を与えた。

 久保建英(19歳)は、今も地元メディアから根強い期待を寄せられている。ボールを持って、攻めかかるときの"予感"は傑出したものだ。

 もっとも、真価を発揮しているとも言えない。久保は本当に居場所をつくれるのか?



レアル・ソシエダ戦は後半13分からの出場だった久保建英(ヘタフェ)

 ホセ・ボルダラス監督が率いて5年目になるヘタフェは、荒々しい戦いをトレードマークにするチームである。

 とにかく球際では激しく戦う。万が一、相手に入れ替わられたら、少々削ったり、軽く殴ったり、ユニフォームを引っ張ったり、つかみかかったり、なりふり構わず止める。全員が反則ギリギリで体を当て、敵のプレーを分断する。

 攻撃に関しては、ボールポゼッションもつなげて攻めることも念頭にない。ロングボールを蹴り込み、そこに殺到し、セットプレーやカウンターを仕留め、再び守りを固める。

「アンチ・フットボール」

 一部の人々はそう酷評するほどだ。

 ボルダラス自身、4部、3部から這い上がってきたこともあって、"喧嘩殺法"を思わせる勝負への執着を感じさせる。レアル・ソシエダ戦では、直前にボールがタッチラインを出ていたとはいえ、あろうことかドリブルする相手選手のボールを"カット"し、退場処分を食らっている。敵選手や指揮官に対して、声を荒げ、目をむくなど、戦意を隠せないタイプだ。

 必然的に、ヘタフェには闘争精神が旺盛でフィジカル的にタフ、勝負の際を好む選手が多い。ウルグアイ代表MFのマウロ・アランバリなどは典型だろう。プレー同様、戦士のような風貌だ。

 ボルダラス・ヘタフェは、その戦闘力の高さを武器に2部から昇格し、躍進してきた。屈強な守備、荒っぽい攻撃。それで2018-19シーズンは5位に入っている。戦力を考えたら、快挙だ。

 しかし今シーズンは、何もかもが裏目に出ている。度を超えた積年のハードワークで、選手が摩耗したのか。守備が甘くなり、ラインを突破され、攻撃どころではなくなった。

 手詰まりのボルダラスが白羽の矢を立てたのが、久保だったのだ。

 いきなりの抜擢となったエルチェ戦、ウエスカ戦と、久保はその技術の高さでチームを牽引した。ただ、どちらも昇格組で力が落ちる相手だった。その後は、アスレティック・ビルバオ、アラベス、セビージャ戦と先発するが、効果的にプレーに絡めていない。ついにレアル・マドリード戦では先発を外され、レアル・ソシエダ戦も同様だった。

その立場は、わずか1カ月でエース候補からスーパーサブへ格下げだ。

――システムを変えましたが、新たに獲得した選手(久保やカルレス・アレニャ)を信じられなくなったのですか?

 レアル・ソシエダ戦後、記者が詰め寄ると、ボルダラスは淡々と答えていた。

「(今日の)システムはマドリード戦と同じだし、ここ数年ずっと使ってきたものだ。変えたというより、オリジナルに戻しただけだ。2人の選手は我々をサポートするためにやって来て、すぐに先発でプレーした。しかしチームの失点は増え、堅固さを失ってしまった。守備水準を戻すための編成だ」

 指揮官は、久保やアレニャのようなテクニカルな選手を入れた戦いに見切りをつけたのか――。

 久保は正念場だろう。ビジャレアルでも、ウナイ・エメリから非力さを疎まれた。シーズン途中に移籍したが、ボルダラスはエメリ以上にフィジカル中心の戦いを好む指揮官で、またもベンチで過ごす時間が増えつつある。

 先述したように、ヘタフェの選手は、技術的な高さよりもフィジカルや戦術面で秀でたタイプばかり。いざ「攻撃的に」と号令をかけても、思ったようにボールがつながらない。

 レアル・ソシエダ戦で、久保、アレニャ、マルク・ククレジャと"元バルサトリオ"が流れるようなパスをつなぎ、エリア内のフアン・マタに通したが、コントロールミスでチャンスをふいにしたシーンは象徴的だ。

 久保はボールを持てば脅威を与えられるし、高い位置でコンビネーションを使うことで守備組織を崩せる。守備意識も高くなったし、帰陣も早く、「ヘタフェの選手」にふさわしい振る舞いなのだが......。

「久保はフィジカル的に改善の余地がある」

 ボルダラスにはそんな注文を付けられ、このままでは袋小路だ。

 久保は矛盾の中で結果を残さなければならない。厳しい状況だが、得点、もしくはそれに直接絡んで、チームを勝利に導くしかないだろう。過去3試合、ヘタフェは枠内シュートゼロ。その状況を打破したら、フィジカルの不足など補って余りある。過酷な現実だが、ボルダラスの言うフィジカルは体のサイズも含めたもので、一朝一夕にどうにかなるものではない。

 2月19日、14位のヘタフェはベティスと対戦する。ボルダラス監督は退場処分を受け、指揮を取れない。解任の話も現実味を帯びてきた。

 久保は、次回も切り札的な起用になるか。どうにか虎口を脱する一撃を――。風雲、急を告げてきた。