2月7日(日本時間2月8日)、NFLの「第55回スーパーボウル」がフロリダ州タンパのレイモンド・ジェームス・スタジアム…

 2月7日(日本時間2月8日)、NFLの「第55回スーパーボウル」がフロリダ州タンパのレイモンド・ジェームス・スタジアムで開催される。

 アメリカが大熱狂する年に一度のスーパーイベントまで勝ち上がったのは、カンザスシティ・チーフス(AFC王者)とタンパベイ・バッカニアーズ(NFC王者)。今年は新旧のNFLを代表するQB(クォーターバック)が対決することで、さらに注目が集まっている。



日本のNFLブームの火付け役にもなったジョー・モンタナ

 チーフスのQBは、2017年ドラフト1巡目・全体10位指名で入団したパトリック・マホームズ。1997年途中から1998年末まで横浜ベイスターズに在籍したパット・マホームズ投手を父に持つ25歳だ。昨シーズンはTE(タイトエンド)トラビス・ケルシー、WR(ワイドレシーバー)タイリーク・ヒルといった攻撃陣を率いてスーパーボウルでサンフランシスコ49ersを撃破し、入団3年目でNFL王者に輝いた。

 シーズンオフには、10年総額5億300万ドル(約540億円)で契約を更改。年俸換算約54億円という金額は、ロサンゼルス・エンゼルスで大谷翔平のチームメイトであり「MLB現役最高の選手」と称されるマイク・トラウトの年俸38億円を超え、アメリカ4大プロスポーツ史上最高額となった。

 対するバッカニアーズのQBは、43歳のトム・ブレイディ。「NFL史上最高のQB」との呼び声も高いブレイディは、移籍1年目でバッカニアーズを18年ぶり2度目のスーパーボウル進出に導いた。

 ブレイディはニューイングランド・ペイトリオッツに2000年ドラフト6巡目・全体199位という下位指名ながら、プロ生活20年間でスーパーボウルを6度制覇。高年齢がネックとなって年俸面で折り合いがつかず、このオフにペイトリオッツを離れるも、このスーパーボウルへの返り咲きによって2年総額6000万ドル(約66億円)の価値を証明したと言える。

 新旧スーパースターQBの対決が実現することで、果たしてどんな名シーンが生まれるのか。スーパーボウルの歴史を振り返ると、今もファンの記憶に刻まれる数々の名シーンがある。そのなかでも、もっとも有名なのが『ザ・ドライブ』だろう。

 舞台となったのは、49ersとシンシナティ・ベンガルズが対決した1989年の第23回スーパーボウル。ベンガルズの3点リードで迎えた試合時間残り3分10秒、自陣8ヤードから始まった49ersの逆転勝利への一連の攻撃が、今も語り継がれる『ザ・ドライブ』だ。

 そして、このプレーの主役を演じたのが、49ersを率いた「生ける伝説」QBジョー・モンタナである。

 モンタナは1979年ドラフト3巡目・全体82位で49ersに入団。上背があったほうではなく(身長188cm)、強肩を持ち合わせていたわけでもなかったため、プロ入り前の評価はそれほど高くはなかった。

 しかしモンタナには、俊敏な動きとパスの正確さがあった。短いパスをミスなくつないで得点につなげる49erの「ウェストコーストオフェンス」にマッチしたことで、モンタナはQBとして頭角を現していく。

 そして、1982年の第16回、1985年の第19回、ザ・ドライブの生まれた1989年の第23回、そして1990年の第24回と、モンタナはスーパーボウルに4度出場し、4度ともチャンピオントロフィーを獲得。しかもモンタナは、そのうち3度もスーパーボウルMVPに輝いた。

 記録だけを見れば、ほかのスターQBのほうが上回っている部分も多いかもしれない。しかし、1981年の『ザ・キャッチ(※)』など記憶に残る名シーンの多さは、モンタナの右に出るものはいない。試合終盤に逆転劇を演出することから「モンタナマジック」と呼ばれるほど、数多くの逆転劇を生み出した。

※ザ・キャッチ=1981年にダラス・カウボーイズと対戦したNFCチャンピオンシップゲームで、モンタナがWRドワイト・クラークに逆転の決勝タッチダウンパスを決めたプレーの愛称。

 モンタナの爽やかなルックスもあいまって、国内でもNFL人気は一気に高まった。モンタナの日本での知名度は、40代以上には抜群に高い。NFLの衛星放送が1989年から始まったことに加え、1991年には出演料5000万円(推定)で、三菱電機のテレビ(ミラクルフェイス)、ビデオ(ミラクルプレイ)、ビデオカメラ(ミラクルショット)の「ミラクルシリーズ」のCMに起用されたからだ。

 当代随一の人気女優、今でいうなら広瀬すずのような人気を誇った牧瀬里穂と共演し、カタコトの日本語で「ドンナ・モンタナ」というセリフが脳裏に思い浮かぶ人も多いのではないだろうか。ちなみに、ミラクルショットでの締めのセリフは「ドンナ・モンタナ」ではなく、「ジョー・キョーハンダン(状況判断)」であった。

 モンタナは1992年、故障で戦列を離れた間に若手QBスティーブ・ヤングにポジションを奪われ、1993年にチーフスへ移籍。在籍2シーズンでスーパーボウル出場は叶わなかったものの、チーフスをプレーオフで戦えるチームへと変貌させた。そして1995年4月、現役を引退。2000年にはプロフットボール殿堂入りを果たした。

 引退して四半世紀、モンタナの名前が昨年9月に思わぬ形で久しぶりに日本でも報じられた。共同通信によれば、ロサンゼルス郊外の自宅で9カ月の孫が誘拐されそうになったのを阻止し、モンタナが犯人の女を落ち着かせて孫は無事に保護されたという。

『どんなモンタナ』と言わんばかりの、さすがの『状況判断』である。

 毎年、全米のシーズン最高視聴率を叩き出すスーパーボウル。今年はカナダのR&Bシンガー「ザ・ウィークエンド」がハーフタイムショーのヘッドライナーを務め、制作費の7億円の自腹を切ったことでも話題となっている。

 チーフスが2連覇を成し遂げてマホームズの黄金期が訪れるのか、それともブレイディの活躍によってバッカニアーズが史上初めてホームスタジアムでヴィンス・ロンバルディ・トロフィーを掲げるのか。モンタナに負けじと名シーンを生み出すのは、果たしてどちらだ。