2021年、DDT最初のビックマッチが2月14日カルッツかわさきで行われる。10.25後楽園KO-Dタッグ戦で坂口に絞め落とされた上野勇希は、第4代DDT UNIVERSAL王者として坂口征夫の挑戦を受ける。前編はDDT UNIVERS…

2021年、DDT最初のビックマッチが2月14日カルッツかわさきで行われる。10.25後楽園KO-Dタッグ戦で坂口に絞め落とされた上野勇希は、第4代DDT UNIVERSAL王者として坂口征夫の挑戦を受ける。前編はDDT UNIVERSALベルト獲得前後を振り返ってもらった。


--お久しぶりです。前回の取材が6月、#STRONGHEARTSのT-Hawk選手とエル・リンダマン選手とのKO-Dタッグ戦前でした。あの頃から約8ヶ月、状況がガラリと変化しましたね。
上野勇希(以下 上野):(少し考えて…)KO-Dタッグベルトを落として、チームも変わりました。確かに状況は変わりましたね。

--僕が印象に残っているのが10.25後楽園大会、EruptionとKO-D6人タッグ、KO-Dタッグと2試合連続タイトル戦が組まれたことです。1試合ごと激しい戦いで、体力を削りあった2試合でしたね。
上野:2試合連続タイトルマッチで、負けられない戦いでした。例えば、タッグ王者としてベルトを死守するため、最初の6人タッグ戦で体力を温存する作戦も可能でした。
しかし、当時DISASTER BOXとして平田一喜さんとの6人タッグでベルトも必要としていた。もちろんベルトに優劣はありません。ですから最初から全力で行こうと思っていました。
相手チームのEruptionも、こざかしいことを考えて戦うチームではありません。全力で戦った結果、ベルトを失ったわけで(苦笑)。今振り返っても非常にスリリングな2連戦でしたね。

--たぶん、上野選手のプロレス人生でも、今後「2試合連続タイトルマッチ」って、なかなかないことですよね。
上野:タイトルマッチを2試合連続は、なかなかないでしょうね(苦笑)。あのメンバーでやることも、ほぼほぼないと思いますし。2試合とも負けてしまったのが悔しいですね。
ただ1試合1試合、あの状況の中で自分の全力を出せたので…逆に言えば常にフルパワーを出し続けて戦うという感覚を得たような気がします。余力を残さず試合をし続ける。6人タッグで締め落とされたところから、2試合目が始まるという。その経験が大きかったですね。

--6人タッグ後、上野選手の回復を待って時間を取るのかと思ったら、すぐに始まりましたよね。
上野:坂口さんに締め落とされて、頭が朦朧として6人タッグで負けたことを知って…(少し考える)ここで休んでいたら、自分の士気が下がってしまうので「よし、すぐに行こう」と向かって行きました。結果、返り討ちに合いましたが(苦笑)。
やっぱり一瞬でも心が負けると戦いに影響が出るので、常に自分の闘志を上げていきますね。

--6人タッグの坂口さんとの戦いで、次の試合を考えずにぶつかり合って敗れた。しかし次の瞬間、またスイッチを切り替えて向かっていく上野選手の姿は本当に勇気をもらいました。
上野:あの時だから出来たわけで、今そのことを想像しても「頭おかしいな」と思いますね(笑)ただレスラーなので、お客さんの応援を感じたら頑張れます。
もしそれが無観客だったら、モチベーションを上げる別の材料を見つけるかもしれないですが、後楽園ホールでセミファイナル・メインイベントの試合、お客さんもなかなかプロレスを観られない状況にある。そしてタイトルマッチ、僕たちも掴み取らなければいけないものがある。相手に立ち向かう条件は多かったと思いますね。

--いろいろなものを背負いながらの2試合でしたね。そして翌月、11.3大田区大会はクリス・ブルックス選手の持つDDT UNIVERSAL王座に挑戦しました。あの試合を振り返っていただけますか?
上野:クリス・ブルックス選手は世界でも有名なレスラーです。もちろんDDTに来てもすごいレスラー。その「すごい」というのは背が高いとかフィジカルな部分ではなく、自分の持っているものを「全てぶつけてくる」という凄さです。
ただKO-Dタッグベルトを失ったばかりで、僕にも挑戦者として捨てるものがなかったので、なりふり構わずいきました。
その試合の前から、結果はどうであれDISASTER BOXを離れようと決めていました。タッグパートナーの吉村直巳くんが欠場することでノーチラスも活動休止。HARASHIMAさん、大鷲透さん、もちろん丸藤正道さんにも相談しました。平田さんには言わなかったんですけど(苦笑)。
レスラーとして上に上がるために、「今何が大事なのか?」を考えていました。もちろんDISASTER BOX・ノーチラスの一員として続けても、まだまだ成長できたと思いますが一つのタイミングです。

--タッグのベルトも失って、クリス戦は背水の陣で臨んだ試合でしたか?
上野:いえいえ、伸び伸びと戦いましたね。DISASTER BOXのHARASHIMAさんや大鷲さん、平田さんや吉村くんがセコンドに付いてくれたので本当に楽しかったですね。全然追い込まれることもなく伸び伸びとプロレスが出来ました。

--試合前、クリス戦に向けて戦略は考えましたか?
上野:クリスは上手な選手で、精神的なところでも煽られ続けました。でも僕は焚き付けるなら焚き付けられた方がいい選手なので、リング上では冷静になれたと思います。
ただクリスに対して事前に戦略を練っても、軽くいなされると考えたのでリング上で「なるようになれ」と思って戦いましたね。

--DDT UNIVERSAL王座を獲得して、精神的な面や周囲の環境等変化はありましたか?
上野:ノーチラスはKO-Dタッグ王者として約1年ベルトを保持しました。DDT UNIVERSAL王座を獲得して「より負けられない」と感じていますね。KO-Dタッグは吉村くんが居てくれたからこそチャンピオンになれた。「僕だけの実力ではない」という自信が逆にありました(苦笑)。もちろん自分に対してのプレッシャーはありましたけど。
ただ、これがシングルチャンピオンになった時、「自分の中での言い訳が、より出来ない」。先日、岡田佑介選手とシングルマッチがありましたが、まず確実に負けられない。今までは吉村くんが居て僕が居てタッグチャンピオンとして負けられない立場だったのが、シングルマッチだと絶対に負けられない。
それがタッグであれ、6人タッグであれ、負けてしまうと相手に舐められる。常に「お前は1人でチャンピオンなんだぞ」と自分に対してプレッシャーをかけています。

--DDT UNIVERSAL王者になり、よりチャンピオンとして責任が増したわけですね。ところで同じ時期に「DDTサウナ部(以下、サウナ部)」に加入しました。これまでのDISASTER BOX・ノーチラスとは、ちょっと変わった「ほんわかしたユニット」ですよね。
上野:僕たちも「4人でユニット」というより、「楽しくサウナに入って楽しくプロレスしようよ」という感じなので、ユニット内序列がないし、みんなが仲良しの集まりなので縛りもないし気を使うこともないです。キャリアでいうとタケ(竹下幸之介)が1番上だけど同級生だし、勝俣さんもMAOさんも友達のように接してくれるので伸び伸びとやれていますね。

--最近、お笑いで第七世代が人気です。みんな仲が良くて争いもない。サウナ部にすごく近いものを感じます。
上野:確かに似た雰囲気を感じますね(笑)。「みんなで集まって楽しくプロレスを盛り上げようよ」というのが1番の志かもしれないですね。

--今後、サウナ部では、「何かをタイトルを狙っていこう」とか話していますか?
上野:サウナ部として賞を取りたいですね。今度タケとMAOさんがKO-Dタッグに挑戦しますが、ベルトを獲得して「サウナ部ここにあり!」というのを見せたいですね(笑)。

--年末、サムライTV「インディーのお仕事」で行われる「輝く!日本インディー大賞」で「ベストユニット」を取るとかでしょうか。
上野:そういうのが1番いいですよね!きっとベルトを獲得することで、そういう賞に近づけると思います。ベストユニット賞は「DDTサウナ部」って発表されたら、見ている人が「なんだ、それ?」と思うことを考えるだけで面白くないですか(笑)。

--メチャクチャ面白いです(笑)。面白いといえば翔太選手とのやりとりも面白かったです。12.27後楽園の6人タッグで、上野選手のDDT UNIVERSAL王座に挑戦表明した翔太選手のマイクアピールに、「このベルトじゃなくて、マイクがお似合いだと思います」と返すあたり。
上野:翔太さん、よく喋るんですよ(笑)ただ僕は赤ちゃんの頃から「あ〜いえば、こ〜いう」大阪という環境で育ったため、何か一言返したいんですよね(苦笑)。
翔太さんは、僕の知らないプロレスを沢山知っています。逆にいえば、僕は培ってきたものをぶつけるだけでした。1.9後楽園 翔太さんとのDDT UNIVERSAL戦では、それがリング上でハマり、勝利することができました。
それに翔太さんは探究心が強い方です。今回対戦決まって、翔太さんの好きなアメリカンプロレスを改めて研究しました。翔太さんは、「ただのプロレス好き」でなく、「研究家」なんです。そういうところは負けないように試合前から意識していましたね。
ただ試合では翔太さん、最初からグイグイ来ましたね。でもフィジカル的には僕に分があると思っていたので、翔太さんのペースに引き込まれないように締めるところは締めていく、というのが自分の中でのテーマでした。

--11月以降、クリス選手・MAO選手・翔太選手とシングルで戦ってみていかがでしたか?
上野:3選手ともタイプは似ていますね。若干、MAOさんはスタイルを使い分けているレスラーだと思いますが、クリスと翔太さんは自分のリズムに落とし込もうとする選手です。気がつくとペースを握られている。
そこに引き込まれないように気をつけないといけないし、引き込まれた際の対処の仕方も考えないといけない。テクニックがあるだけではなく、相手をコントロールする能力も高い。MAOさんは、それに飛ぶこともできます。だから試合前に「どんなことをしてくるんやろ?」と、通常の試合より考えましたね。

--クリス選手(196cm)と翔太選手(160cm)、フィジカルの違いによって上野選手の対応の仕方も変わりましたか。
上野:対処の方法は全然違いますね。クリスは力も強いので自分の持っているものを、どのように使おうか考えて戦いました。

--シングルといえば1.23上野選手の地元大阪で元全日本プロレスの岡田佑介選手と戦いました。1人でDDTのリングに乗り込んできた岡田選手と肌を合わせていかがでしたか?
上野:岡田さんとは大阪で初めて試合で絡んだわけですが、DDTに観戦に来られていた時、僕のTwitterをすぐにフォローしてくれたんですよ。その時点で「いい人だ」と(笑)。すぐにフォロバして、岡田さんのTwitterを確認したんですけど、秋山イズムとか言っている。それが不思議でした。
師匠の秋山さんをリスペクトするのは分かります。ただ秋山イズムがどうとか、遠藤さんに「秋山さんの試合で舐めたことしてるんじゃねぇよ」と発言したり、岡田さんと戦う前まで「彼はDDTに、何をしに来たのだろう?」と思っていました。
根本には秋山イズムや全日本プロレスがあると思うんですけど、リング上で戦って、「岡田佑介」という選手を感じることが出来ました。
岡田選手から「DDTに舐められないようにやってやろう」「ここでチャンピオンに勝ってDDTで名前をあげてやろう」という気持ちを感じた。
だからこそ岡田さんのことを舐めてはいませんけど「舐めんじゃねぇよ」という気持ちでぶつかりました、大阪では。

--試合を通じて感じるものがあったから、試合後共闘とも取れる発言をしたのでしょうか。
上野:試合終わりで興奮していましたが、「岡田さんとタッグを組んでも面白いかな」と思いましたね。ただ僕にはサウナ部がありますし、岡田さんとは戦う方が楽しいかな。

--岡田さんをサウナ部に勧誘しているわけでは…
上野:全然ないです!どうなるのか分からないですけどね。Twitterでも岡田さんの反応が好意的で、「あっ、こんなに反応が良いんだ…」と若干引いてしまいました。僕は求められると引いてしまうタイプなので(苦笑)。
本当は岡田さんに「タッグ組みましょう」と言えば「上野、舐めんじゃねぇよ!」と来る姿を想像していたら、意外と反応が良くて逆に照れちゃいました(苦笑)。
基本的には敵でいたけど「味方であっても面白いかもね」というのが、あの発言の真相ですね。組んでも面白いと思いますが、DDTに居ないタイプの選手なので戦いたいですね、岡田さんとは。

 

<後編に続く>

<インフォメーション>
DDT、2021年最初のビックマッチ「KAWASAKI STRONG 2021」が神奈川カルッツかわさきで行われます。上野勇希選手に坂口征夫選手が挑むDDT UNIVERSAL選手権を始め、遠藤哲哉vs秋山準のKO-D無差別級選手権など全8試合が予定されています。詳細はこちらをご確認ください→https://www.ddtpro.com/schedules/14872


また2.14カルッツかわさき大会の模様は、動画配信サービス「WRESTLE UNIVERSE」でLIVE配信されます。
WRESTLE UNIVERSE→https://www.ddtpro.com/universe


上野勇希Twitter→https://twitter.com/dna_ueno
上野勇希Instagram→https://www.instagram.com/dna_ueno/
DDTサウナ部Twitter→https://twitter.com/DDT_SaunaClub


取材・文/大楽聡詞
写真提供/DDTプロレスリング