今春の牡馬クラシックの行方を占ううえで注目の2歳GI、GI朝日杯フューチュリティS(12月20日/阪神・芝1600m)…
今春の牡馬クラシックの行方を占ううえで注目の2歳GI、GI朝日杯フューチュリティS(12月20日/阪神・芝1600m)と、GIホープフルS(12月26日/中山・芝2000m)が昨年末に行なわれた。結果は、朝日杯FSをグレナディアガーズ(牡3歳/父フランケル)が、ホープフルSをダノンザキッド(牡3歳/父ジャスタウェイ)が勝った。

年明けの京成杯を制したグラティアス
さらに年が明けて、関西ではGIIIシンザン記念(1月10日/中京・芝1600m)が行なわれ、ピクシーナイト(牡3歳/父モーリス)が勝利。関東ではGIII京成杯(1月17日/中山・芝2000m)が行なわれ、グラティアス(牡3歳/父ハーツクライ)が快勝した。
なかでも注目度が高いのは、2歳王者に輝いたダノンザキッド。新馬→GIII東京スポーツ杯2歳S(11月23日/東京・芝1800m)を経て、無傷の3連勝でホープフルSを制した臨戦過程が昨年の三冠馬コントレイルと同じということもあって、同馬への期待は一段と増している。
しかしながら競馬関係者の間では、3歳牡馬戦線はいまだ「混戦」というのが大勢を占めている。パソコン競馬ライターの市丸博司氏もこう語る。
「昨年と違って、3歳牡馬の戦いは"まだこれから"。ここから先、いきなり大物が現れて、クラシックで旋風を巻き起こす可能性が大いにある」
実際にこのあと、GIIIきさらぎ賞(2月7日/中京・芝2000m)、GIII共同通信杯(2月14日/東京・芝1800m)など、「クラシックへの登竜門」と言われる注目の前哨戦が次々に控えている。しかも、それらの戦いには力を蓄えた"大器"がこぞって参戦するという。
そうした状況のなか、ここでは現時点(1月24日終了時点)での3歳牡馬の『Sportivaオリジナル番付(※)』を発表したい。ただその前に、ひとつだけ注釈を加えたい。同番付はあくまでもクラシックを目指す馬たちの評価ゆえ、今後もマイル路線を主戦場としていくことを早々に表明したグレナディアガーズについては、ここでは評価の対象外とした。
※『Sportivaオリジナル番付』とは、デイリー馬三郎の吉田順一記者、日刊スポーツの木南友輔記者、独特なデータを駆使するパソコン競馬ライターの市丸博司氏、フリーライターの土屋真光氏、Sportiva編集部競馬班の5者それぞれが、今春のクラシックを目指す3歳牡馬の、現時点における実力・能力を分析しランク付け。さらに、そのランキングの1位を5点、2位を4点、3位を3点、4位を2点、5位を1点として、総合ポイントを集計したもの。

前回に引き続き1位は、ダノンザキッド。GI制覇を遂げたことで、ポイントは前回よりも大幅に伸ばしている。
吉田順一氏(デイリー馬三郎)
「半兄のミッキーブリランテやオールザワールドとは違って、つなぎが長くスケールの大きいフットワークが特徴。さらに、クッション性があることと、トモ腰の完成度が高いことが3連勝につながっていると思います。
ホープフルSでは4角で外に振られる不利がありましたが、コーナーでしっかりと踏ん張って、早め先頭から押し切る芸当を披露。走法や脚質からすれば、直線の長いコース向きですが、小回りの中山で結果を出せたことは、収穫大と言っていいでしょう。
手応え以上にしぶとく、長くいい脚を使える点も強調材料となりますが、緩急がつく流れで速い脚を求められると、若干の不安があります。また、ジャスタウェイ産駒は、好不調の波が激しく、一度の敗戦で落ち込む可能性があるので、その辺りは注意したいところです」
土屋真光氏(フリーライター)
「同じ戦績で2歳王者となり、のちに無敗の三冠馬となったコントレイルと比べると、その血統背景やレースぶりは若干地味に映るのは確か。それでも、コースやレースの性格が大きく異なる東スポ杯2歳SとホープフルSの両方を制したことは、高い能力があってこそ。ソツのない競馬で、今のところ大崩れするイメージは浮かびません。
ただ堅実な分、クラシック本番ではダイナミックな馬の一発に屈してしまう不安があることは否めません。もちろん、父ジャスタウェイのように化ければ、手がつけられない存在になる可能性もありますが......」
2位は、朝日杯FSで2着となったステラヴェローチェ(牡3歳/父バゴ)。GIIIサウジアラビアロイヤルC(10月10日/東京・芝1600m)では極悪馬場で圧勝し、朝日杯FSではレコード決着の馬場にもきっちり対応した。

市丸博司氏(パソコン競馬ライター)
「個人ランキングは、前回から上位の顔ぶれがガラッと刷新されました。TF指数(※市丸氏が独自に編み出したデータ指数)上位は朝日杯FS組で、今後マイル路線に行きそうな馬たちを除くと、ステラヴェローチェが1位になりました。
バゴ産駒で、近親にゴスホークケンがいる血統。朝日杯FSではメンバー最速タイの上がりを見せているものの、どちらかというと、渋った馬場や平均ペースのレースが合うイメージが強いです。(クラシックへ向けての最終的な評価は)前哨戦を見てから判断しても、遅くはないでしょう」
木南友輔氏(日刊スポーツ)
「朝日杯FSで見せた直線の脚は見事でした。ただ、その際に覗かせたのが、ゲートへの不安。今後に向けて、テンションの高さは心配な点になります」
3位は、ワンダフルタウン(牡3歳/父ルーラーシップ)。昨年末のGI戦はスキップし、年明けはGII弥生賞(3月7日/中山・芝2000m)から始動する見込みだ。
吉田氏
「GIII京都2歳S(11月28日/阪神・芝2000m)を勝ったあとは、クラシックを見据えて早めに休養。月日を重ねて成長していくルーラーシップ産駒ということを踏まえれば、無駄打ちすることなく、ゆったりしたローテーションで春に挑むのは正解でしょう。
新馬戦ではダノンザキッドに子ども扱いされましたが、血統背景や馬体の完成度などを鑑みれば、伸びしろは絶大。つなぎは長めでクッション性があり、長くいい脚が使えるタイプです。コーナーリングもスムーズで、舞台設定は不問。復帰戦でどこまで成長したのか、きちんと見極めたいですね」
4位は、グラティアス。年明けの京成杯で強い競馬を見せて、圏外からランク入りを果たした。
吉田氏
「つなぎが長め&立ち気味で、少しクッション度は硬めですが、ガニ股走法だった父ハーツクライとは違って、左前肢がやや内に入るぐらいで、きれいな走りをしています。スッとギアが上がるタイプで、京成杯でも前が開くとサッと抜け出してきました。
馬込みやキックバックに不安はなく、一瞬の脚が生きやすい中山コースは歓迎のクチでしょう。逆に直線の長い東京コースは、切れすぎるがゆえ、仕掛けどころが難しいタイプ。とはいえ、前向きさがあって、瞬発力は世代トップクラスです」
3歳牡馬戦線の"混戦"を象徴するように、4頭の馬が5位にランク入り。オーソクレース(牡3歳/父エピファネイア)、ヴァリアメンテ(牡3歳/父ドゥラメンテ)、ランドオブリバティ(牡3歳/父ディープインパクト)、シュネルマイスター(牡3歳/父キングマン)である。
木南氏
「オーソクレースは、母がマリアライト、叔父にクリソライト、クリソベリルがいる奥手の血統ながら、2歳時からオープン特別のアイビーS(10月24日/東京・芝1800m)を勝って、ホープフルSで2着と好走。賞金は十分に加算されて、余裕をもってクラシックに臨めます。
ダービーでも期待できる1頭ですが、クリストフ・ルメール騎手がクラシックでこの馬を選ぶのか、それともグラティアスを選ぶのか、興味深いところです」
市丸氏
「ヴァリアメンテは、オープン特別の若駒S(1月23日/中京・芝2000m)で2着に敗れてしまったので、クラシック出走のためにはトライアルを使う必要があります。そして、どうやらオープン特別の若葉S(3月20日/阪神・芝2000m)に向かうとのこと。そこでの勝利を期待したいです。
ドゥラメンテ産駒の何か1頭は、クラシックに出て活躍してくれる予感があって、それがこの馬かもしれません」
木南氏
「ランドオブリバティは、ホープフルSで◎を打った馬。昨秋のGIで一番自信があるレースだったのですが、まさかの逸走。現地で見ていて、自らの予想を猛省しました。
しかしその後、調教再審査、きさらぎ賞の1週前追い切りを見て、能力は間違いない、と改めて確信しました。人馬の反撃に期待しています」
土屋氏
「シュネルマイスターは、1勝クラスのひいらぎ賞(12月19日/中山・芝1600m)を圧勝。4コーナーで完全に囲まれて、直線に向くところでもインに切り替えざるを得なかったのですが、そこからグングン加速して後続を突き放しました。その伸び脚は見事なものでした。
父は欧州の名マイラー、キングマンとあって、一見マイラーに見えるものの、昨年の凱旋門賞(フランス・芝2400m)では産駒のペルシアンキングがエネイブルに先着して3着という結果を残しました。加えて、母はドイツオークス馬で、距離面の不安は十分に補えています。次戦の弥生賞が試金石となりますが、そこを突破するようなら、今年の3歳牡馬戦線に"真打登場!"となるかもしれません」
まだまだ"暫定"の様相が強い今年の3歳牡馬ランキング。これから大きな変動が起こる可能性は大いにある。そういう意味でも、いよいよ本格化する"トライアルシーズン"から目が離せない。