今季Jリーグ開幕を前に、現在、各クラブが長いシーズンを戦うためのチーム編成を整えている。 もちろん、それぞれのクラブに…

 今季Jリーグ開幕を前に、現在、各クラブが長いシーズンを戦うためのチーム編成を整えている。

 もちろん、それぞれのクラブにそれぞれの事情があり、必ずしも順調に補強が進んでいるクラブばかりではないだろう。しかし、この冬の移籍市場は主力級の動きも活発で、概ね盛況の印象を受ける。

 なかでも積極的な動きを見せているのが、名古屋グランパスだ。各クラブからレギュラークラスを獲得し、AFCチャンピオンズリーグ出場に向けて選手層は厚みを増している。

 特に柿谷曜一朗(セレッソ大阪→)、齋藤学(川崎フロンターレ→)という元ワールドカップメンバーは昨季、持てる能力に比して思うような活躍ができなかっただけに、新天地での復活への期待と併せて、注目を集める存在となっている。

 実際、過去のJリーグを振り返ってみると、一時期出場機会を減らしたり、結果を残せなかったりしていた選手が、移籍をきっかけに再び才能を開花させる例は少なくない。

 その最たる成功例が、大久保嘉人だろう。



川崎フロンターレに移籍して3年連続得点王に輝いた大久保嘉人

 セレッソ大阪に所属していた当時、大久保は2002年から3年連続でふた桁ゴールを記録(※2002年はJ2)。ジーコ監督時代の日本代表でもエースストライカー候補のひとりとして、ワールドカップアジア予選やコンフェデレーションズカップなどでプレーしている。

 だが、2007年から所属したヴィッセル神戸では、初めの2年こそふた桁ゴールを挙げたが、2009年から4年間はひと桁止まり。神戸での最終年となった2012年はわずか4ゴールに終わっていた。

 ところが、翌2013年に川崎フロンターレに移籍すると、突然の大復活。ショートパス主体のチャンスメイクに長けた川崎にあって、大久保はフィニッシャーとして仕事を得ると、まさに水を得た魚のごとく自己最多の26ゴールを記録し、得点王まで手にしてしまったのである。

 以後、大久保はJリーグ史上初となる3年連続得点王に輝いたばかりか、再び日本代表にも選出され、2014年ワールドカップに出場している。

 また、同じ川崎への移籍組では、家長昭博の復活も著しい。

 ガンバ大阪のアカデミーで育った家長は、若くしてその才能を高く評価され、18歳にしてJ1デビュー。順調に活躍の場を増やすとともに、イビツァ・オシム監督時代の日本代表にも、次代を担う有望株として選出されていた。

 しかし、その後は海外クラブも含めて移籍を繰り返すなかで、プレー機会が減少。天才と称されたレフティーも、徐々に目立たない存在になっていた。

 そんな家長も2017年に川崎へ移籍するや、高い技術を生かしてパスサッカーに適応。昨季までの4シーズンで3度の優勝を果たしたばかりか、自身も2018年にはMVPに選ばれている。

 2014年に大宮アルディージャへ移籍したことをきっかけに、すでに復活の兆しは見えていたとはいえ、それを確かなものとしたのは、川崎への移籍だったに違いない。

 さらにJリーグの歴史をさかのぼれば、移籍による復活で印象深いのは柳沢敦だ。

 柳沢は1996年に鹿島アントラーズ入りして以降、長らく常勝軍団の2トップを支えてきた。チャンスメイクを得意とするタイプだけに、決してゴール数は多くなかったが、前線に不可欠な選手だったと言っていい。2000年シドニー五輪や2002年ワールドカップでも活躍し、まさにJリーグを代表するFWのひとりだった。

 しかし、2003~2005年のセリエAへの挑戦を経て、鹿島に復帰したあとは次第に出場機会が減少。2007年は19試合出場で5ゴールを記録するにとどまった。

 そこで、柳沢が選択したのが、京都サンガへの移籍である。

 2008年、京都に新天地を求めた柳沢は、シーズン自己最多タイとなる32試合に出場し、自己2番目の14ゴールを記録。14位と苦しんだチームにあって獅子奮迅の活躍を見せ、ベスト11にも選出されている。鹿島時代を含め、異なる2クラブでベスト11に選出されたFWは、Jリーグ史上ただひとりの快挙だった。

 栄枯盛衰は世の常とはいえ、過去の栄光が輝かしいものであればあるほど、それが色あせたときのマイナスイメージも大きくなる。

 だが、かつて栄光を手にすることができたのは決して偶然などではなく、相応の能力を有していればこそ。プロ野球の世界では、その昔、野村克也監督が率いたヤクルトスワローズが、いわゆる「野村再生工場」として名を馳せたが、しばらく低調な結果に終わっていた選手がちょっとしたきっかけで再び力を発揮する可能性は当然ある。

 そして、時にそのきっかけとなるのが、移籍なのだろう。

 今季もまた、新たな復活劇が見られることを期待したい。