NTTドコモが、変革の兆しを覗かせている。先頭に立つのは、ダヴィー・セロン新ヘッドコーチ(HC)だ。

 現在は国内最高峰のラグビートップリーグ入りを目指すトップチャレンジ1に、地域リーグのトップウェストAの首位チームとして参戦中。目下2連勝中で、15日の三菱重工相模原戦(大阪・東大阪市花園ラグビー場)に勝てば4チーム中1位となり、自動昇格を決められる。

 元南アフリカ代表のFL、ハインリッヒ・ブルソー副将は、低迷脱却を図るチーム状況をこう見つめていた。

「この1年、チームは本当に成長した。本当にお互いをリスペクトしています。ストラクチャーもすべて落とし込まれていて、ファミリーのようになっている」

 トップリーグには2011年度に初参戦も、昨季は下部降格。SOのハンドレ・ポラードやLOのエベン・エツベスなど、2015年のワールドカップイングランド大会の南アフリカ代表を擁しながら、サニックスとの入替戦を15-19で落とした。FLの佐藤大朗主将は当時、こんな歯がゆさを覚えていた。

「外国人選手は積極的にコミュニケーションを取ってくれて、いい影響を与えてくれました。ただ、チームに決まったシェイプ(攻撃陣形)があるなか、試合になると外国人選手頼みになってしまうところがあった」

 2シーズンの任期で再建を託されたセロンHCは、2011年から6年間、20歳以下南アフリカ代表を指揮。妥協なき育成手腕に定評があった。7月に来日後も、クラブに簡潔な指針を据えた。

「シンプルなシステムを確立しましたが、そこで大事なのは、そのシステムを信じ込ませることでした。そのうえで、すべての分野を成功させる。セットプレーを強化し、非常にいいディフェンスシステム、アタックシェイプの落とし込みをしました。各担当のコーチ陣は、我々の求めるものが何かを熟知したうえで指導を遂行しました」

 練習時間は短時間に止めながら、とにかく強度の高いセッションを心掛けている。「ラグビーでの成功に欠かせないのは、強度と速いテンポです」。そんななか、例えば身長178センチ、体重108キロのアウトサイドCTBであるパエア ミフィポセチは、見た目が以前よりシャープになったか。

 当の本人が「いまは大切な試合の時期なので(体重を)少し減らしている。でも、去年とあまり変わらないです」とするなか、元日本代表主将でもある箕内拓郎FWコーチは、他の外国人選手を含める形で「高強度の練習のなか、身体も絞れている」と頷いた。

 セロンHCはこう続ける。

「長い練習はいいと思っていません。45~50分くらいの練習を、冒頭からハイペースでおこなう。クオリティーを求め、プレッシャーをかける。高い強度のなかで動くことに、選手が慣れてきました。(選手の身体がシェイプされたのは)その影響ではないでしょうか」

 より気を引き締めるのが、ブルソーら南アフリカ出身の選手か。

 ワールドカップ時の日本代表へも参加した佐藤秀典通訳は、あくまで雑談の延長として、複数の強豪国におけるコーチと選手との距離感について見立てを語ったことがある。その論旨によれば、南アフリカには比較的強い上下関係が存在するようだ。

 さらに、一時期は常に佐藤通訳と行動を共にしていたオーストラリア出身のエディー・ジョーンズ元日本代表ヘッドコーチ(現イングランド代表ヘッドコーチ)も、南アフリカには権力者を強く尊重する傾向があると指摘していた。

 ふたつの仮説に沿えば、ブルソーが「ダヴィーの選手へのプレッシャーのかけ方、選手の心情の扱い方は非常に良かったです」と笑うのも自然な流れか。

「彼の経験がものをいっている。選手は皆、彼に感謝しているでしょう。彼は怒ったら大変ですが、基本的にはポジティブ。いまはエンジョイして、彼のチームで戦っています」

 ある中堅の日本人選手は、かねて勤勉だった南アフリカ勢に対しこんな印象を抱いたという。

「より、真面目になった」

 トップウェストAでおこなわれた計7試合で、平均得点と約92.4点、同失点を約4.1点とした。そんななかでも指揮官は、自分なりの基準で個々のプレーのクオリティを精査してきた。

 パエアは「1人ひとりの足りないところを、1つひとつコーチが言ってくれる」と笑い、箕内FWコーチはこうも続ける。

「来季トップリーグへ上がった時にどうするか…。練習でトップウェスト以上のものを…。そう考えてやってきたことが、いまの状況につながっている。戦い方がクリアに整備された部分もありますが、(何より)選手1人ひとりがタフになった。意識が変わったので、練習中にフッと気を抜く奴もいない。(セロンHCは)選手にもそうですが、コーチにもプレッシャーをかける。練習のテンポが遅ければ『遅い』と言いますし、細やか。そして、情熱家。僕としてもコーチングのいい勉強ができています」
 
 いま戦っているトップチャレンジでは、1月3日、トップイースト2位の日野自動車を68-12と圧倒(東京・秩父宮ラグビー場)。九州電力戦では相手の厳しいタックルにあおられしばしミスを重ねたが、39-12で勝ち切った(福岡・レベルファイブスタジアム)。

「九州電力さんは非常にパッション溢れるプレーをしていた。我々は本調子ではなかった。そんななか39-12で勝利を納められたのは嬉しく思いますが、求めるスタンダードに向けてはさらにステップアップをしないと」

 野太い声でそう語った大柄なボスは、最終戦を見据えてシンプルな道しるべを示す。

「(前職時に参加した)ワールドラグビーU20チャンピオンシップでも、中3、4日でおこなう試合がありました。今回もそれと同じようなケースです。中5日です。まずはしっかりと身体をケアする。ビデオミーティングで試合中のミス、課題を見せる。トレーニングでは具体的に取り組む点を明確にする。そうして、ショートでシャープなセッションをします」

 試合開始直前のロッカールームの前には、出場しないメンバーが列をなす。グラウンドに向かうレギュラー組を、大声で激励するためだ。才能を揃えると同時に「ファミリー」になりつつあるいまのNTTドコモ。まずは目の前の関門を乗り越え、来季はトップリーグで進化を証明したい。(文:向 風見也)