~第31回目~ 岡部紗季子(おかべ・さきこ)さん/32歳 体操選手→体操教室、イベント・テレビ出演、経営者 取材・文…

~第31回目~ 岡部紗季子(おかべ・さきこ)さん/32歳 体操選手→体操教室、イベント・テレビ出演、経営者
取材・文/奥田高大 多くの国際大会に出場して、成績を残した体操選手の岡部紗季子さん。大学卒業と同時に競技を引退し、現在、積極的に取り組んでいるのが『たくさんの人に体操を知ってもらうための活動』。
体操教室での指導と並行しながら、さまざまな障害物を乗り越えていくスポーツエンターテインメント番組『KUNOICHI』などメディアへの出演のほか、SNSでも積極的に情報発信している。ニューヨークのタイムズスクエア、渋谷のスクランブル交差点、浅草の雷門など、いたるところで“逆立ち”をして、インスタグラムにアップした画像は“逆立ち女子”として、大きな反響を集めている。
「ここ数年、いろんな競技の方やまったく違う業界の方に会う機会が増えたのですが、体操のイメージを聞くと、地味だったり、敷居が高いと思われていたりで、魅力や凄さが伝わっていないと感じることが多かったんです。そこで体操に興味をもってもらうにはどうすればいいかを考えて、いろんな活動を始めました。逆立ちもそのひとつで、体操の会場やマットの上よりも、街で逆立ちするほうが興味をもってもらえると考えました」
メディアへの出演など活動の幅が広がった影響で、SNSを通じて高校生や親からメッセージや相談が届くこともある。
「例えば私が選手時代に抱いていたような、ピークを過ぎていく自分との向き合い方についての相談をもらうこともありました。とても難しい問題ですが、アドバイスできるのは、身近な人や信頼できる人には相談してほしいということ。競技に集中しているときは難しいと思うのですが、頑張って相談してみてほしい。
自分だけで考えられることには限りがあるけれど、信頼できる人に相談することでいろんな選択肢も見えてくる。私自身は周りに相談できないタイプだったのですが、誰かに相談していれば、選手時代もまた少し違っていたかなと思うこともあります」 現在、岡部さんがもっとも力を入れているのが、幼稚園や保育園に正課体育の先生として信頼できるスタッフを派遣する取り組み。2019年10月には会社を設立し、指導者としてだけではなく、経営者としての顔も持つ。
「今は体操だけですが、“かけっこ”や“サッカー”など、いろんな競技を組み合わせて子どもたちに教えることができたらと思っています。体育だと全員が参加するので、すごくやりがいがありますし、体操の魅力をたくさんの人に広げられる。会社を設立したのは、今後、ライフスタイルが変化した時に、フリーランスよりも法人化したほうが良かったからです」
さらに昨年からは、パルクール(※走る・跳ぶ・登るといった移動に重点を置く動作を通じて、心身を鍛えるスポーツ)にも挑戦中。ストリートスポーツが盛り上がる中で、新しい体操の表現として感じてもらえたらと考えた。ただ、闇雲に活動の幅を広げているわけではなく、大事なのは『体操という軸がぶれないこと』。そして、すべての活動の中心にあるのは“体操が好き”という想い。
「体操の良さは、誰でも練習すればできること。もちろんセンスが左右する部分はありますが、練習を重ねれば誰もができるようになりますし、たくさんの技があって、頑張った成果も見えやすくて達成感が味わえる。“逆上がりができた!じゃあ次はこれに挑戦しよう!”って。そんな体操の楽しさをもっとたくさんの人に知ってもらいたいですね」
最後に、引退後のキャリアを考えている現役選手に向けてアドバイスを聞いた。
「好きなものが“ハッキリと分かる人”と“分からない人”との差で、キャリアは大きく異なるものになると思います。私は『体操が好き』という決断が早かった。そして、社会に出たら自分の得意なことで勝負しないと勝てないと思ったので、体操の世界を選びました。その中でも選手を見ているコーチではなく、一般の子供を対象に体操を教えることを選択しました。まず『自分の好きな事』を見つけ、その中で、どのような役割なら勝負できるかを考えることが大切だと思います」
(プロフィール) 岡部紗季子(おかべ・さきこ) 1988年5月生まれ、東京都出身。4歳で体操を始める。2002年ナショナルチームメンバー初選抜、明治大学では2大会連続ユニバーシアード代表に選出。得意種目はゆか。引退後は明治大学のコーチを経て、体操教室で指導を行う。現在は、株式会社W.O.Eを設立し、幼稚園や保育園に正課体育の先生として指導するほか、スタッフを派遣する事業を行う。
※データは2021年1月27日時点