大学卒業後、大手飲料メーカーに就職。しかしカヌー競技を世間に拡めたいという、ロンドンオリンピック カヌー日本代表コーチ尾…
大学卒業後、大手飲料メーカーに就職。しかしカヌー競技を世間に拡めたいという、ロンドンオリンピック カヌー日本代表コーチ尾野藤直樹氏の考えに賛同し、一般社団法人カヌーホームの設立に参加した江盛咲子。前編はカヌーを始めた大学時代から就職までを振り返ってもらった。
--江盛さんが、カヌーを始めたキッカケを教えてください。
江盛咲子(以下 江盛):子供の頃から体を動かすのが好きで、中学・高校と剣道をしていました。球技が苦手でしたね。陸上部に入りたかったけど、中学校に陸上部がなくて、剣道部に入部しました。
大学に進学した時、部活ではなくサークルで、「スポーツを楽しみたい」と思いました。でも新人歓迎会で惹かれたのは「部活」でした(苦笑)。人が何かに一生懸命打ち込む姿が好きなんです。何部に入ろうか悩んでいたら「カヌー部が毎週土日で合宿を行っているよ」と噂が耳に入りました。
私は京都大学なので、大学の場所は京都。カヌー部の合宿先は琵琶湖のため、滋賀県にあります。毎週、「合宿して、みんなでご飯を食べている」と先輩から聞いて、「運動してみんなで一緒にご飯を食べるなんて楽しそう!友達も出来そう」と思ってカヌー部に入部しました(笑)。
--中学や高校で友達がいなかったわけでないですよね?
江盛:そういうわけではないです(笑)。ただ大学に入学した時、「友達ができるか」不安はありましたね。
--京都大学では、何学部でしたか?
江盛:総合人間学部です。ヒャダインさん出身の学部ですね。理系も文系もあって、なんでも出来る学部です。教育系・心理学とか哲学系とか、いろんなことを学べますね。当時、やりたいことが決まっていなくて、いろんなことを吸収しました。
--江盛さんは、どんな学生でしたか?
江盛:計画的にステップを踏んでいくより、「ここだ」と決めて行動に出るタイプ。周りからすると「深い理由があるように見えない」と良く言われます(苦笑)。京都大学に進学すると決めた時も、「京都に住みたい」と「国立大学の方がいいだろう」という軽い気持ちで受験しました。一浪して、京大に進学しました。

--大学に入り、カヌー部に4年間在籍。京都大学のカヌー部はどんなチームでしたか?
江盛:大学にいろいろな部活がある中で「カヌーは大学からも始められるよ!」という触れ込みに惹かれたこともあり、入部しました。
--カヌー部ではカヤック(水をかくブレードが片方のみ)とカナディアン(水をかくブレードが両方についている)、どちらに取り組んでいましたか?
江盛:カヤックでスプリント競技です。リオ五輪のカヌー競技で日本人初の銅メダルを獲得した羽根田卓也選手は、カナディアンでスラローム競技ですね。
--カヌーは、最初艇に乗るだけでもバランスを取るのが大変ですよね。人によっては3ヶ月以上かかる人もいると伺いました。江盛さんは、どのくらいかかりましたか?
江盛:1ヶ月くらいだと思います。高校生に比べると練習量が格段に多いですから。大学生から始めた人は1ヶ月くらいで、だいたい乗れるようになりますね。
--普段、カヌー選手は、どのような練習をしているのですか?
江盛:主に水上での練習になります。筋トレもしますよ。カヌーで大切な筋肉は、背中の広背筋です。一般的に腕を使ってパドルを漕いで、艇が進んでいるように見えると思います。本当はパドルを水の中に挿して、そこに自分の身体と艇を持っていくイメージです。
棒高跳びを想像してもらえば分かりやすいと思います。支点を作って、そこに身体を持っていく感じ。パドルを水の中に挿して、背中の広背筋を使い、身体と艇を近づける感覚ですね。厳密には様々な筋肉を使いますけど、大きく説明すると背中の広背筋が大切です。
--全身の筋肉を使うけど、主に背中の筋肉を使うスポーツということでしょうか?
江盛:そうですね。あとは体幹も使います。身体を捻るので腹斜筋が大切ですね。
--カヌー選手は、格闘技やアメフト・ラグビー選手と同じようにキレイな逆三角形のボディですよね。ちなみに大学時代は、どのくらい練習をしていましたか?
江盛:やってから知りましたが、カヌーは想像より体力を使う競技ですね(笑)。大学時代の練習時間は、準備や片付けとかも入れると早朝が1時間半、午後が3時間くらい。計5時間くらいです。
練習内容も季節によって変わります。冬は日が沈むのが早いので、筋トレ中心になりますね。水上の練習は早い時間帯に行い、日が沈んだら水上ではない練習。あとはエルゴです。エルゴはカヌーの動きで筋トレできるトレーニングマシンですね。

--そういうトレーニングマシンがあるんですね。ところで大学時代、出場した大会での成績を教えてください。
江盛:ひとつは、大学3年の時、「Head Of The Seta」という大会で優勝しました。滋賀県大津市の瀬田川で1番速い人を決める大会ですね。元々、ボートの大会で往復約6キロ。
--往復だと最初追い風なのに、途中から向かい風になる感じでしょうか?
江盛:そうですね、風には左右されます。ただカヌースプリントは基本、静水でやる競技です。多少、上りと下りで水の流れは違ったりしますが、上れないということはない(笑)。水面は穏やかです。
長距離レースだと20キロとかありますが、それから比べると6キロはたいした距離ではないですね。
--20キロは、どのくらい時間がかかりますか?
江盛:大体2時間くらいです。男子は2時間を切りますね。マラソンと同じように途中で給水しても大丈夫です。
あと大学4年時に「京都府選手権」で優勝しました。出場するのは琵琶湖で練習している方々や京都の学生です。カヌー強豪校の同志社大学や立命館大学も参加していましたね。この時、競り勝って優勝することができたので印象に残っています。
--大学卒業後は、一般企業に就職されたのですか?
江盛:全くカヌーと関係のない企業に就職しました。元々カヌーは「大学4年間で終わり」と考えていました。カヌーを続けたい場合、「大学院に進む」や「海外に行く」とか様々な選択肢があります。でも私は「大学卒業したら就職するぞ」となぜか強く決めていました。
「早く働きたい」という意識が強かったのかもしれません。親に、高校時代留学させてもらったり、浪人をさせてもらったり、部活動も支えてもらったりと、いろいろなことをやらせて貰いました。ですから「早く働いて恩返しできたら」と。早く自立したかったですね。
大学4年生の最後の大会である、インカレ(全日本学生選手権)が不甲斐ない結果に終わってしまい、後ろ髪を引かれる感じではあったんですけど…でも就職しました。
就職先は大手飲料メーカーでした。同期が約80人、事前に希望の配属先を聞かれます。私は地方配属を希望したところ鹿児島配属になりました。
その会社自体、新入社員の女性を地方に赴任させることが初めてだったようで、会社としても挑戦だったみたいです。

--鹿児島にはどのくらいの期間過ごしましたか?
江盛:2年間です。入社して半年間は研修期間、その後鹿児島に行きました。鹿児島生活はなんだかんだメチャクチャ楽しかった記憶ばかりが残っています(笑)。いろいろ悩みはありましたが、大切な友達もできたし就職して自由に使えるお金ができたことも大きかったですね。
鹿児島で生活して仕事にも慣れてきた頃、「もう1度カヌーをやってみようかな?」と思いました。
--それは鹿児島に行って、どのくらい経っていましたか?
江盛:半年です。
--あっという間じゃないですか?
江盛:そうですね、あっという間です(笑)。知り合いに連絡し、「鹿児島でカヌーできるところない?」と相談すると、車で1時間のところにあるカヌーができる場所を教えてもらいました。
そこは当時、中学・高校生のクラブチームで、指導者の方のお名前は大学時代から知っていました。私の現在の状況とカヌーの練習をしたい旨を伝えたところ、快く受け入れて頂きました。
会社勤務だったので、「行けるときに行って練習に参加させてもらう」感じでしたね。ですから土日の練習や平日の夜、仕事終わりなどでカヌーを漕ぎにいってました。
--鹿児島では、1年半くらいカヌーをしていたんですね。
江盛:高校生と一緒に香川や石川の大会に参加していましたね。ただ気持ち的には、複雑でした。カヌーは好きだけど、あくまでも仕事終わりの空いている時間でカヌーを楽しんでいる。目指しているものあるわけでもないので、「中途半端だな」と悩みながらカヌーを漕いでいましたね。
そんな時に、今一緒にカヌーホームで活動している代表理事の尾野藤直樹さんから、声をかけられました。
<中編に続く>

<インフォメーション>
第1回オンラインエルゴ選手権大会
2021年1月30日(土)10:00~ レース開始
北は秋田から、南は鹿児島まで、全12都府県14か所を同時接続しレースを実施!
ライブ動画は下記サイトからご覧いただけます。
午前の部→https://youtu.be/Cq3wJrPe9lU
午後の部→https://youtu.be/ueW0WT4mH10
第1回オンラインエルゴ選手権大会の詳細に関してはこちらをご覧ください→https://sites.google.com/view/canoehome2021/
カヌーホームはこちらをご覧ください→https://canoehome.or.jp