1月13日に開催された『第96回天皇杯 全日本バスケットボール選手権大会』3次ラウンドで、川崎ブレイブサンダースが千葉ジェッツを72-62で下した。佐藤賢次ヘッドコーチが「シーズン前半戦の集大成としての位置づけで準備をしてきました」という一戦で、選手たちは攻防に川崎“らしさ”を発揮。天皇杯に限って言えば、92回大会(2017年)は決勝、94回大会(2019年)では準々決勝で敗れていた相手に勝ち切って、タイトル獲得へ前進した。

 この試合を振り返れば、得点が物語るとおりディフェンスの攻めぎあいで、少しのミスも許されない展開だった。そのような状況の中、川崎はディフェンスが機能し、今シーズンB1で最多得点を誇る千葉を62点に封じた。勝負所の4クォーターはわずか7失点。指揮官も「本当にチームのディフェンスが機能した証拠だと思います」と、選手たちの頑張りを称えた。

 また、篠山竜青も勝利がどちらに転ぶか分からない40分間を終えて、手ごたえをつかみ、こう話した。

「ヘッドコーチによく言われている『試合の中で良い時間帯も悪い時間帯もボディーブローを打ち続けることで、最後の5分、3分でしっかりと粘って勝ち切る』という、うちがやりたいプレーを今日は表現できたと思います」

 そして「粘って勝ち切る」局面で、大きな役割を果たしたのが辻直人だ。この日は3ポイントシュート5本を含む21得点をマーク。特に第4クォーター残り4分を切って64-62の流れから、全8得点を決めてみせた。とりわけ70点目となる5本目の3ポイントは一瞬、リングに嫌われたかに見えたが、彼の思いが乗り移ったのか、何度か縁を跳ねてネットへ吸い込まれた。

 試合後のコートインタビューで辻は活躍について、ファンの前でこう明かした。

「本当に天皇杯という大会で2年前(94回大会)ですかね、脱臼をしてしまった復帰戦で千葉ジェッツさんと対戦して負けた記憶がありました。今日はその借りを返そうと、朝から不安と自分との戦いですごく体調が悪かったのですが、その自分に打ち勝つことができました。良かったです。本当にありがとうござます!」

 さらに会見でも「今シーズン、個人的に『勝負の年』と言っているのですが、自分が結果を出すことによって、やはりチームのタイトルにもつながると思っていますので、タイトルは一つでも多く取りたい、という強い思いがあります」と胸の内を明かした。

 昨年は天皇杯で手負いのチームを引っ張り、決勝まで戦いきった辻の姿が思い起こさせる。しかし今年は違う。「僕がミスをしてもみんながカバーしてくれたのをすごく感じましたし、我慢するところは我慢して、本当にチームが一つになって戦って、この勝ちにつながったと思える試合でした」(辻)と、チーム状態が上向き、全員で白星をもぎとった。もちろん、今シーズンも怪我人が相次ぎ、12月は3連敗するなど難しい時期もあったが、それを乗り越え、2021年最初のホームゲームを飾った1勝は、今後に向けて弾みがついたに違いない。

 これで川崎は2014年以来の天皇杯制覇に向けて前進した。また、現在リーグ戦でも東地区6位から浮上するきっかけになったことだろう。1月23日からはじまるリーグ後半戦、そして3月12日に控える天皇杯のファイナル4へ向けて“らしさ”を突き詰めていく。

 文=大橋裕之