第99回全国高校サッカー選手権大会の準決勝が1月9日に埼玉スタジアム2002で行なわれる。第1試合は明確な色を持ったチ…

 第99回全国高校サッカー選手権大会の準決勝が1月9日に埼玉スタジアム2002で行なわれる。第1試合は明確な色を持ったチーム同士の対戦となった。



帝京長岡は、攻守の切り替えが武器。組織と連動性で勝負する

 2年連続のセミファイナルとなる帝京長岡(新潟)は、攻撃力に特徴を持つチームだ。昨年は晴山岬(町田ゼルビア)、谷内田哲平(京都サンガ)、田中克幸(明治大)といった、圧倒的な個を持つ選手を軸に攻め倒して相手を凌駕した。

 今年は、そうした独力で局面を打開できるタレントはいない。しかし、チーム伝統のパスワークや足元のテクニックは健在で、今大会は一戦ごとにたくましさを増して勝ち上がってきた。とくに組織力は目を見張るものがあり、複数人が絡む連動性は昨年以上だ。

 また、今年は前線からハイプレスを仕掛けての、攻守のトランジションにこだわりを持って取り組んできた。

 その成果はプレーに表われている。準々決勝の市立船橋(千葉)戦では、強度の高い守備で相手を圧倒。3回戦で負傷したFW石原波輝の代わりにポジションを1列前に上げた酒匂駿太と、得点感覚に長けた葛岡孝大の2トップが前からボールを奪いにいき、それを合図に中盤の選手が一体となって動いた。

 葛岡が決めた1点目はまさに狙っていた形で、連動したプレスから高い位置でボールを奪うと、ショートカウンターでペナルティーエリア内に進入してゴールが決まった。

 そんな今年のチームを語るうえで欠かせないのが、キャプテンでチームのエースナンバー14を背負う川上航立だ。メンバーのなかでは唯一3年連続で選手権のピッチを踏んでおり、ずば抜けた経験値を持つ。

 昨季はアンカーのレギュラーとして黒子役を担い、華のある先輩たちを影から支えた。迎えた今季は名実ともに大黒柱となり、攻守のリンクマンとして中盤の底からピッチ全体に睨みを利かせている。今大会は3回戦でゴールを奪うなど、課題だった攻撃面でも存在感を発揮。川上の出来がチームの命運を握ると言っていい。

 また、下級生の選手たちにも注目だ。守備の柱を担う松村晟怜は左利きのセンターバック(CB)。アタッカーから転向して1年未満とは思えないほど守備が安定しており、カバーリングや状況判断のセンスがある。181cmとサイズに恵まれているだけでなく、前線の選手顔負けのテクニックを生かしたビルドアップの質も高い。

 1年生トリオのGK佐藤安悟、左サイドバック(SB)桑原航太、2列目の廣井蘭人も存在感を示しており、チームに勢いを与えている。怖いもの知らずの下級生たちが、初の準決勝でどんなプレーを見せるのかも興味深い。

 この帝京長岡と対戦する山梨学院(山梨)は、堅守を最大限に生かす方策として、前線からのハイプレスを導入しているチームだ。

 基本システムは4−4−2。前線からボールを追って相手にプレッシャーを与え、自由にボールを運ばせない。一方で中盤から後ろの安定感も抜群で、たとえ押し込まれても跳ね返すだけの強度があり、簡単には突破を許さない。

 今大会はこの攻撃的な守備が機能し、4試合で1失点。とりわけ凄まじかったのは準々決勝の昌平(埼玉)戦で、相手の須藤直輝、小見洋太のホットラインをシャットアウト。攻めても早い時間帯に得意のセットプレーから久保壮輝が先制点を挙げ、これが決勝点となった。

 チームの核はキャプテンを務めるGK熊倉匠。1年次からトップチームに帯同し、GKとしての総合力が高い。精神的支柱としてチームに欠かせない存在だ。

 彼と共に守備陣の軸を担うのが、184cmの大型CB一瀬大寿で、跳躍力に絶対の自信を持つエアバトラー。中学時代はサイドハーフやボランチを主戦場にしていたが、高校入学後に止まったと考えていた身長がさらに10cmほど伸びた。そこで長谷川大監督がCBにコンバートすると、メキメキと力をつけて守備の柱を担うまでに成長した。

 その高さは攻撃でも生かされ、セットプレーではターゲットマンを担う。準々決勝ではアシストを記録するなど、攻守両面でチームの命運を握る選手だ。

 また、「チームのために体を張った守備や、鼓舞する声を出してくれている」と熊倉が絶大の信頼を置く左SB鈴木剛も今大会を通じて成長を遂げ、ボランチの谷口航大も球際の強さを生かしたボール奪取で中盤の守備を支えている。



山梨学院の攻守両面でチームのカギになる、DF一瀬大寿(写真中央)

 攻撃陣は、一芸を持った個性豊かな選手が揃う。FWの中心となる野田武瑠はスピードと技術を併せ持つ点取り屋。2列目の廣澤灯喜はドリブル、新井爽太は運動量とロングスローが持ち味。ベンチにも個性的な選手が控えており、技巧派レフティの笹沼航紀、一瞬の速さと体の強さが特徴の茂木秀人イファインはスタメンに名を連ねてもおかしくない実力者だ。

 丁寧なビルドアップでポゼッションするだけではなく、ハイプレスでボールを奪ってショートカウンターも狙える帝京長岡。前線からアグレッシブな守備を仕掛け、セットプレーと速攻でゴールを狙う山梨学院。

 技術では前者に分があるが、フィジカルでは後者が優る。異なる武器を持ちながら、似た戦術を組み合わせて戦う両者の戦いはどちらに軍配が上がるか。

 互いに相手の分析にも長けており、相手の特徴を消す術を持つ。実際に山梨学院の長谷川監督も「自分たちのやりたいこともある。だけど、相手に応じて自分たちの良さをコントロールできる引き出しがあるのが強み」と言い切り、帝京長岡の古沢徹監督も「(山梨学院は)前から推進力を持った選手がどんどん出てくるけど、我々は相手と同じことができるわけではない。アングルを取ってそのプレッシャーを利用して前に進む準備をしたい」と話す。

 強度の高い展開のなかでも選手の個性を引き出せる両チームだけに、序盤から激しい攻防が展開されるのは間違いない。選手たちのプレーに加え、この準決勝では両指揮官の駆け引きにも注目が集まる。