名古屋フィギュアスケートフェスティバルで今年初滑りを見せた宮原知子 1月4日、日本ガイシアリーナで行なわれた「名古屋フィギュアスケートフェスティバル」。昨年12月の全日本選手権でショートプログラム(SP)6位からフリーで挽回して総合3位に食…



名古屋フィギュアスケートフェスティバルで今年初滑りを見せた宮原知子

 1月4日、日本ガイシアリーナで行なわれた「名古屋フィギュアスケートフェスティバル」。昨年12月の全日本選手権でショートプログラム(SP)6位からフリーで挽回して総合3位に食い込んだ宮原知子は、エキシビションナンバー『Egyptian Disco』(ブノワ・リショー振付)を披露した。

 22歳になり、大人の女性としての表現の幅を広げてきた宮原が、テンポの速い曲に乗ったエキゾチックな演技で観客を引き込み、音楽の雰囲気を十二分に発揮してひとつの作品を表現してみせた。

 今季は新型コロナウイルスの世界的流行により、予定されていた大会が次々と中止や延期に。プログラム作りも、プログラムを滑り込むことも難しい状況だった。そんな中で、SPの『グノシエンヌ 第一番』(ステファン・ランビエール振付)とフリーの『トスカ』(ローリー・ニコル振付)というプログラムを新しく作り上げた。ただ、出場予定だったスケートカナダが中止になった以降、ひたすら拠点のカナダで練習に取り組むことしかできず、新プログラムを披露する機会がなかった。やっとプログラムを初お披露目した大会が全日本選手権だった。

 この大会のフリーを終えた後、宮原はこう振り返っている。

「今年、最初で最後の大会で新しいプログラムを初披露することになったので、自分も楽しもうと滑りました。どんな失敗でも全部受け止めようと臨んだ大会でした。SPもフリーもミスはありましたが、緊張もしていろいろなことを考えて、複雑な気持ちを抱えて試合に臨みました。でも、少しは手応えを得られたので、いい全日本でした」

 SPでは3回転ループが2回転となり、フリーでも3連続ジャンプの2回転ループで回転不足を取られ、連続ジャンプの3回転トーループでは「q」マーク(4分の1回転足りない)がついた。

 試合本番で気持ちのコントロールが思うようにできず、練習どおりの演技ができないことが課題だという宮原。昨季までは動きの硬さからジャンプをしっかり回り切れないことが多く、回転不足を取られることが多かったが、全日本選手権ではしっかりと回り切ったジャンプがほとんどで、GOE(出来栄え点)での大幅減点は少なかった。

 ただその一方で、大幅加点も少なかった。宮原本人もジャンプの改善や修正について「ジャンプはそんなに良くない。まだまだ課題ばかり」と、道半ばの段階にあると自覚していた。

 得点源になるジャンプの課題をクリアするにはもう少し時間がかかりそうだが、表現面での成長は目を見張るものがあった。

 今回のアイスショーのアンコールで披露した『トスカ』の見せ場であるステップからレイバックスピンまでの終盤の演技は、何度見ても圧巻の迫力あるものだった。滑り込めば滑り込むほど洗練され、熟成度も増してくるはずで、演技構成点の得点もさらに積み上げられるはずだ。全日本選手権ではSP、フリーともに、ステップと3つのスピンでいずれも最高のレベル4を取ったのは宮原ただひとりだけだった。

「今季はここまで自分に集中して練習してきました。試合がなかった中で自分なりにやって来て、(全日本選手権で)思い切り演技ができてよかったです。スピンはこれまで以上に速く回ることを意識して、たくさん練習した成果を出せました。フリーのステップは踊り負けないように滑り込んできました」

 シニア転向後、何度も殻を破って成長を遂げてきた。念願だった平昌五輪では、総合4位と表彰台まであと一歩だった。「練習の虫」と言われるほど膨大な練習量をこなしてきたが、年齢を重ねて、量よりも質を重視する練習方法に変えてきたという。自分を見つめて自己分析する能力が高い宮原。だからこそ、もっと自信を持って試合に臨み、さらに殻を破って変貌を遂げてもらいたいものだ。

 イレギュラーなシーズンとなった2020年は、宮原にとっては自己観察の年だったという。

「2020年を漢字一文字で表すなら『観察』の『観』です。ずっと自分と向き合って自分と会話してきた1年でした。そして、あらためてフィギュアスケートの良さを知りました」

 トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)や4回転ジャンプを跳ぶ新時代を迎えた女子フィギュアスケート。そんな中で自分らしい演技を追求する宮原はどんな戦いを見せていくのか。北京五輪を控える来季に注目したい。