2021年1月3日、アトレティコ・マドリードは年明け初戦、アラベスを敵地で1-2と打ち破っている。年末から破竹の4連勝…
2021年1月3日、アトレティコ・マドリードは年明け初戦、アラベスを敵地で1-2と打ち破っている。年末から破竹の4連勝。全20チーム中、試合消化数が一番少ないにもかかわらず、リーガ・エスパニョーラ首位を堅持している。レアル・マドリード、バルセロナのビッグ2を寄せ付けない強さだ。
今シーズンのアトレティコは、今までとどこか違う。変幻自在の堅守だけではない。攻撃にも「華」がある。監督就任10シーズン目となるディエゴ・シメオネは、とうとう革新に成功したのか――。

就任10シーズン目のディエゴ・シメオネ監督(アトレティコ・マドリード)、2度目のリーガ制覇なるか
シメオネ・アトレティコの象徴は、鉄壁のような4-4-2だった。ひとつのブロックが厚い壁として立ちはだかる。そうして相手を辟易とさせた後、猛然とカウンターを繰り出し、あるいはセットプレーでゴールし、勝利に結びつけた。
しかし、今シーズンは、3バックの採用が必然的な変化につながっている。3-4-2-1、もしくは3-5-2を、起用する選手によってマイナーチェンジ。コケ、ジョアン・フェリックス、トマ・ルマールなど。若干くすぶっていたクリエイティブな選手たちが真価を発揮するようになった。
システムの運用に関しては、ルイス・スアレスをバルセロナから獲得したことが大きい。スアレスはワールドクラスのゴールゲッターだが、特筆すべきはその戦術的な適応力にある。バルサという特異な戦術を信奉するクラブで、ほとんどの新加入のストライカーは苦しんでいるが、スアレスは滑らかにフィットした。耳かみつき事件など、粗暴な印象があるかもしれないが、サッカーIQの高さが群を抜いているからだ。
スアレスは1トップで相手のラインを巧妙に押し下げることができる。動きの質が高く、強度も備える。タイミングよくサイドに流れてスペースを作り出せるし、センターバックを釣り出し、消耗させることもできる。そうして背後に陣取るジョアン・フェリックス、マルコス・ジョレンテという2人の力を最大限に引き出しているのだ。
ジョアン・フェリックスは、シーズン前半のMVPと言っても過言ではない。昨シーズンはリーガ挑戦1年目で厳しい評価を付けられたが、前を向いてボールを持てるようになったことで、マジックを見せるようになった。ボールのどこを蹴れば、どのように転がり跳ぶのかを、理屈ではなく、感覚的に心得ている。"ボールに愛されている"というのだろうか、一瞬で試合を決められるのだ。アラベス戦でも交代出場後、終了間際にサイドからスアレスの決勝点をアシストした。
ジョレンテは、まさにシメオネ好みの「incombustible(不燃性。転じて、しぶとく耐久力がある)」と言われる選手だろう。前線にパワーを注入する点では、かつて"空飛ぶ猛牛"と言われたラウール・ガルシアに近いか。
しかし、ジョレンテは高さだけでなく、陸上の中距離選手のように何度もスプリントを繰り出し、ゴール前に飛び出して得点することができる。アラベス戦でも一気のカウンターからミドル弾を放り込んだが、すでに6得点。相手を突き崩せるだけのパワー、スタミナ、スピードを備えたファイターだ。
中盤では、伸び悩んでいたコケがようやく本来のプレーを取り戻した。システム変更で、余裕をもってボールを動かせるようになって、そのビジョンやテクニックの持ち味を出せるようになった。プレーメーカーとして、シーズン前半のベストプレーヤーだろう。
ウィングバック的に起用しているキーラン・トリッピアー、ヤニック・カラスコも天職を得た感がある。高い位置を取って、ぎゅうぎゅうと相手を押し込む。アップダウンする力があり、守りでもゴール前に厚みを加えられる。トリッピアーはサッカー賭博への関与で2カ月半の活動停止処分が出されたが、クラブの訴えで一時保留案件となり、今後は出場できる見込みだ。
もちろん、持ち味である守備の堅固さも変わっていない。
3バックにしたことで、センターバックの豊富な人材が生きている。ステファン・サビッチ、ホセ・ヒメネス、マリオ・エルモソと、パワーや高さだけでなく、協調関係も構築。セットプレーでは、守りでも攻めでもアドバンテージとなる。
そして守護神、ヤン・オブラクは欧州最高のGKの称号がふさわしいだろう。アラベス戦でも失点はオウンゴール。完璧なポジション取りと適切な判断で、勝ち点をもたらすセービングを見せている。
「オブラクを破るというのはエクストラなモチベーションだ」
あのリオネル・メッシが賛辞を贈るほど、そのゴールキーピングはもはや芸術的だ。
7年ぶりのリーガ優勝も夢ではない。
「リーガは複雑怪奇で、罠が潜んでいる。我々は常に万全の準備をし、気を抜いてはならない。誰もが勝ちたいと願っている。後半戦、残留を争うチーム、ヨーロッパカップ戦を狙うチームとの戦いは激しくなり、これまでの平穏はないだろう。唯一の道は、1試合1試合を戦い抜くだけだ」
アルゼンチン人指揮官はいつものように言う。今年はシメオネ・アトレティコの新たな元年になるか。