ロンドン2012パラリンピックをテレビで見た。風を切って走るアスリートの姿に心を突き動かされ、陸上競技への道に進んだ。その後、急成長を遂げた佐藤友祈は、新人だったリオ2016パラリンピックで銀メダルを獲得。400mと1500m(T52)の世…

ロンドン2012パラリンピックをテレビで見た。風を切って走るアスリートの姿に心を突き動かされ、陸上競技への道に進んだ。その後、急成長を遂げた佐藤友祈は、新人だったリオ2016パラリンピックで銀メダルを獲得。400mと1500m(T52)の世界記録保持者として挑む東京パラリンピックでは “金メダルに最も近い”選手として注目を集める。目標は「世界記録更新で金メダル」。コロナ禍でも揺るぎない信念で前に進む佐藤に、激動の2020について、そして今後の展望を聞く。

年末年始もトレーニングができているからか、まだ2021年になった実感はありません。ニュースを見て、早くコロナが収まってくれたらいいなと思いますし、東京パラリンピックが無事に開催されることを信じ、夏に向けてピーキングしていきたいと考えています。

今年はチャレンジの年です。タイムも縮めたいし、チャレンジすることでもっと自分を高めていけると思うとわくわくします。

2019年世界パラ陸上競技選手権大会で2個の金メダルを獲得し、東京パラリンピック日本代表に内定した ©Getty Images Sport

 マーティン選手も強くなっていると思うし、世界選手権で勝ったとはいえ決してあなどれません。世界記録を持っているのは僕だけど、パラリンピックのタイトルはまだ彼のもの。真の王者になるために、東京パラリンピックでは絶対に金メダルを獲ってリベンジします。

 昨年のお正月は「もう少しで東京パラリンピックを迎えられるんだな」と、わくわくした気持ちで迎えました。そこから自然と気合いも入り、拠点とする岡山で冬季練習に励みました。2月になって日本でもコロナ患者が出てきたので、「東京2020大会の開催に影響してしまうかな」と少しずつ不安な気持ちが押し寄せてきました。それでも、まだ開催されると言われていましたし、変わらず練習できていたので大丈夫かなと思っていました。ですが、3月に入って海外の選手が不参加を表明するというニュースで見て、これは今年の開催は厳しいなと思うようになりました。3月に出場予定だった岡山のグランプリ大会も中止が決まり、いよいよという雰囲気だったので、東京パラリンピック延期の報せは「やっぱりな」という感じで受け止めました。心づもりをしていたからか、そんなに動揺はしなかったです。ただ、大変なことになってきたなって。

日本のエースに成長した佐藤は、東京パラリンピックで金メダルと世界記録を目指す

 自粛期間中も幸いなことに練習はできていたので、どこかの大会にピークを合わせようと思いましたが、なかなか開催される大会のスケジュールが決まりません。こればかりは仕方ないので、9月に予定されていた日本パラをターゲットにしてトレーニングメニューを組んでみることにしました。日本パラが中止になる可能性もあったので未知数なところもあったけれど、どのくらいの期間があれば最高のパフォーマンスを出せるところまで持っていけるのか考えながら調整することで、2021年の東京パラリンピック本番での自信にしたい狙いもありました。

 世界記録で2冠という目標に変わりはありません。新国立競技場で世界記録を出し、会場のお客さんの前で「おっしゃー!」って喜んで、一緒に盛り上がれたら最高ですね。テレビの応援もうれしいですが、リアルの応援はやはり選手にとっては力になりますから。あと、2冠を達成したらぜひ閉会式の旗手をやらせてほしいです。僕はまだ一度しかパラリンピックに出ていませんが、リオの盛り上がりは格別でしたし、オリンピックとパラリンピック合同で行われた銀座のパレードも忘れられません。次は金メダルを手にまたあの特別な舞台に戻りたいという気持ちは強いです。プレッシャーもありますが、注目されればされるほどいいレースができると思うので、東京パラリンピックではぜひ僕のレースに注目してください!

31歳の佐藤は、東京が2度目のパラリンピックになる

 東京パラリンピックをひとつのきっかけにして、パラ陸上をもっと多くの人に見てもらえるようになるとうれしいです。健常者の大会に障がい者のレースが組み込まれるのもいいですよね。義足クラスなど一部の種目は日本選手権などでも行われるようになってきたので、T52クラスの種目も実施してもらえるようにアピールしたいです。そして、その結果がもっとメディアに取り上げられるようになることを願っています。障がいを持っている人もがんばっているという扱いではなく、スポーツニュースで当たり前に取り上げられるように変わったらいいなと思います。

text by Asuka Senaga

photo by X-1