『一年間のいろんな想いが詰まっている試合』となった。フェンシング部は、最もコロナ禍の影響を受けた部の1つと言っても過言ではない。室内会場に多くの選手が会する競技性から感染拡大防止対策が難しい面もあり、ほとんど全ての試合が中止に。この早慶定…

 『一年間のいろんな想いが詰まっている試合』となった。フェンシング部は、最もコロナ禍の影響を受けた部の1つと言っても過言ではない。室内会場に多くの選手が会する競技性から感染拡大防止対策が難しい面もあり、ほとんど全ての試合が中止に。この早慶定期戦(早慶戦)は、1年生にとっては初めての試合。そして4年生にとっては、引退前最後の試合となった。待ち望んでいた試合で、終始活気ある雰囲気の中、チーム一丸となって戦った早大は、6種目中5種目で勝利を飾り、見事総合優勝を果たした。

 男女それぞれエペ、サーブル、フルーレ、計6つの団体戦が行われた早慶戦。男子エペから試合が始まった。増田陽人(商3=岡山・大安寺中教校)、金髙大乘(社2=香川・高松北)、寺井健斗(教2=東京・早大学院)、藤澤将匡(スポ1=宮城・仙台城南)のメンバーで臨んだ早大。一進一退の展開が続いていたが6周り目で、慶大の田村純也(4年)に一挙10点を奪われ3点のリードを許してしまう。続く藤澤は、エペの練習をそれほどできていなかったというものの「プレッシャーを感じることはなく臨めた」と、奮起し点差を縮めた。8周り目で積極的に仕掛けた金高が、慶大・田村から立て続けに点を奪い、一気に逆転。最後周りの増田は、じっくりと時間を使いながら確実に相手の出先を突き、45-39で男子エペを制した。 続いての女子エペも大接戦となった。各早大選手が確実にリードを守り、6点差をつけ試合は最後周りへ。早大の駒場みなみ(スポ4=富山西)に対峙するは、全日本選手権で優勝を果たしている田原紗季(2年)。駒場は、田原の怒涛の追撃を防ぎきれず、試合終了間際に同点とされ、試合は1本勝負に持ち込まれてしまった。これまで1本勝負を落としてしまうこともあった駒場。だが今日は「勝ちたいという気持ち、四年生の意地、いろんな人の気持ち」を強く持っていた。息をのむ緊迫した接近戦の中、熱い気持ちで田原から1点を奪取。劇的勝利に駆け寄るチームメイトの村上夏希主将(スポ4=三重・津東)らと共に、笑顔の花を咲かせた。


チームメイトに見守られながら、1本勝負に臨んだ駒場

 続いて行われたのは男子サーブル。「団体戦の練習を繰り返すことで最終的には早慶戦でいい状態に持っていけた」と、小山桂史(スポ4=東京・クラーク)が振り返るように、1周り目の森多諒(社2=山口・柳井)が幸先よく5連続で点を取り、チームに勢いをもたらすと、岸本大輝(社4=東京・早実)、小山も安定した攻めを見せる。4周り目では慶大・山本健斗(3年)が流れをつかみ、11点あった差を1点差まで詰め寄られも、岸本が何とか粘り、逆転を許さなかった。その後は、順調に5点を積み上げていった早大。来年を見据えて最後周りを務めた森多が、しっかりと試合を締めくくった。女子サーブルでは、これからの早大フェンシング部を引っ張っていく、高原真央(人3=福井・武生)、村上万里亜(スポ3=愛媛・三島)らが慶大を圧倒し、45-17で勝利。これで早大は4戦全勝とした。

勝利を決め、ほえる森多

 男子フルーレには、1、2年生が出場。1、2回り目は、川村京太(スポ2=東京・東亜学園)、ビューワーニック・ダグラス(スポ1=埼玉・星瑳国際)が制したものの、3周り目以降は、慶大の藤倉類(3年)、長谷山泰紀(2年)らのアタックを防ぎきることができず、徐々に点差を広げられた。それでも、持ち前の活気ある雰囲気は変わらず、点を取ると盛り上がりを見せるなど、全員が男子フルーレ陣を鼓舞する。8周り目で藤澤が反撃をみせたが届かず、惜しくもこの種目を落としてしまった。 最後は、溝口礼菜(スポ4=千葉・柏陵)、千葉朱夏(スポ4=岩手・一関第一)、仙葉楓佳(社4=秋田・聖霊女短大付)、登尾早奈(スポ4=愛媛・三島)と全員が4年生の女子フルーレ。慶大からはフルーレ専門選手が出場しないということもあり、「45-0で勝つことを目標」(千葉)に、どの1プレーも本気で臨んだ早大。目標の完全勝利とはならなかったが、一人一人が今まで培ってきたスタイルを発揮し、5点を積み重ねていった。それぞれの選手がこの早慶戦にかけた想いを体現し、笑顔で大学最後の試合を大勝で締めくくった。

女子フルーレに出場したメンバー(左から順に、仙葉、千葉、登尾、溝口)

 総合優勝を果たした早大。この試合をもって4年生は引退となる。最後の1年間がこのような厳しい年になってしまったが、初のライブ配信の挑戦や、チームの未来のため必死に楽しく努力を続けてきた4年生の方々に、改めて敬意を表したい。そして、バトンは次の世代に引き継がれていく。「私たち4年生が戦いきれなかった1年間の分を、後輩たちには来年こそ出し切って、日本一を取ってほしい」と村上主将が期待するように、来年こそはーー。早大フェンシング部が剣を手に、大舞台で活躍する来春が待ち遠しい。

(記事 樋本岳、写真 小原央、大貫潤太、倉持七海)

※フェンシングの団体戦は3人、または4人の選手が交代で出場し、1試合当たり3分という持ち時間内で争う。あるいは3分以内にどちらかが先に5得点先取すると、そこで次の選手に交替となる。最終的には9試合戦い、45点を先取、または持ち時間が終了した場合は得点が高い方が勝ちとなる。

※フルーレ:頭・両足・両腕を除いた胴体部への突きのみが得点となる。 両者がほぼ同時に突いた場合は、どちらの攻撃が有効だったかを主審が判定する。また、先に攻撃をした方が「攻撃権」を持ち、防御側は攻撃を防御してから攻撃しなければならない。

※エペ:全身が有効面となる上に、両選手が同時突きをすると両者にポイントが与えられる。より慎重な攻め方が求められるため、時として両者が睨み合ったまま時間が過ぎることは稀な話ではない。

※サーブル:両腕も含む上半身への突きと切り(剣先ではなく剣の胴部分で相手の体に触れること)が得点となる。また、先に攻撃をした方が「攻撃権」を持ち、防御側は相手の攻撃を防御してから攻撃しなければならない。この攻撃権の奪い合いにより、両選手はピスト上を常に前後に往復し合うため、サーブルは3種目の中で最も全身運動が激しい種目だと言える。


<早慶合同での集合写真>

結果

▽男子エペ団体

早大[増田陽人(商3=岡山・大安寺中教校)、金髙大乘(社2=香川・高松北)、寺井健斗(教2=東京・早大学院)、藤澤将匡(スポ1=宮城・仙台城南)]

〇45-39 慶大

▽女子エペ団体

早大[村上夏希主将(スポ4=三重・津東)、駒場みなみ(スポ4=富山西)、影山野希花(政経2=東京・早実)、蓮井陽菜(スポ1=香川・高松北)]

〇33-32 慶大

▽男子サーブル団体

早大[小山桂史(スポ4=東京・クラーク)、岸本大輝(社4=東京・早実)、森多諒(社2=山口・柳井)、齊藤丈(商1=山形東)]

〇45-34 慶大

▽女子サーブル団体

早大[高原真央(人3=福井・武生)、村上万里亜(スポ3=愛媛・三島)、黒田ほのか(スポ2=香川・三本松)、仙葉楓佳(社4=秋田・聖霊女短大付)]

〇45-17 慶大

▽男子フルーレ団体

早大[川村京太(スポ2=東京・東亜学園)、ジェット・ン(国教2=シンガポール・メリディアンジュニアカレッジ)、藤澤将匡(スポ1=宮城・仙台城南)、ビューワーニック・ダグラス(スポ1=埼玉・星瑳国際)]

●36-45 慶大

▽女子フルーレ団体

早大[溝口礼菜(スポ4=千葉・柏陵)、千葉朱夏(スポ4=岩手・一関第一)、仙葉楓佳(社4=秋田・聖霊女短大付)、登尾早奈(スポ4=愛媛・三島)]

〇45-18 慶大

コメント

※4年生のインタビューにつきましては別途記事に掲載します。

高原真央(人3=福井・武生)

――ご自身のプレーに関して、振り返っていかがですか

人数が足りないため、サーブルの練習をしてから初めての団体戦ということで、すごく緊張していたのですが、ベンチからの声や応援のおかげで、何もプレッシャーを感じずにやらせてもらえました。とても自由にできたと思います!

――早大全体としては、どのような試合になったと感じますか

最初にエペが一本勝負などを制して勝ち、盛り上がりました。今年度初めての団体戦になりましたが、しっかりチームとして一体感があるなと思いました。点を取られても、大丈夫と声をかけることや、点数を取ったらすごい盛り上がる早大特有のところなど、すごいいい雰囲気だなと感じました!これが早大の良い点だと思っているので、それができて良かったと思います。

――今日の試合を迎えるまで、どのように取り組んでこられましたか

目標となる大会がないと緩みがちになってしまうところを、しっかりと目標を立てて毎日練習することを意識していました。1年生には部に入ってきてまだ何もわからないところで、いろいろと教えたりする中で、しっかりとまとめてくることが出来たのかなと思います。

――今日で引退となる4年生の皆さんは、後輩から見てどのような代でしたか

4年生はそれぞれいろんな色を持っていて、一番早大の雰囲気を表していると思います!つらいことも楽しく乗り越える、ということが4年生の中で(モットーとして)あって、引っ張ってもらえたかなと思います。

――これから主将を担うと伺いました。今後にむけて意気込みをお願いします

とてもいい雰囲気で4年生からバトンをもらったので、この早大の良い点を残しつつ、先輩方に負けない成績を残していきたいと思います!

藤澤将匡(スポ1=宮城・仙台城南)

――ご自身初の早大勢として臨まれる大会でした。意識する部分はありましたか

コロナの影響で久々の大会ということだったのですが、1年生らしく元気に勝っても負けても場を盛り上げられるように、という意識で臨んでいました。

――この大会に向けては満足のいく練習ができていましたか

練習を始めることができたのは9月頃だったので、高校卒業から今年の8月までは本当にフェンシングができない状況の中で迎えた大会でした。そこはやはり悔やまれますね。

――今大会を振り返るにあたって、まずはフルーレでの出場はいかがでしたか

一巡目の時に先輩と同期の(ビューワーニック)ダグラスが勝って(自分に)回ってきた状況だったのですが、その流れを自分が立ち切ってしまったのでその部分の責任は自分にあると思います。実際その流れがそのまま負けにつながってしまったので、その要因を作ってしまったことは反省しています。

――一方のエペに関しては良い結果だったのではないですか

エペは実はあまりやれていなくて、今日はリザーブとしても出れるか出れないのか分からない感じでした。だからというか、プレッシャーを感じることはなく臨めたのではないかなと思っています。

――来年度に向けて意気込みをお願いします

1か月後にはJOC(ジュニアオリンピックカップ)という大会が控えていますし、まだ自覚はないですが、2年生として後輩が入ってくるので環境が変わっていくと思います。そういった中でもその環境に早く順応して、自分のパフォーマンスを向上して強くなっていきたいです。