新型コロナウイルスの影響でほとんどの大会が中止になった中、今シーズン最初で最後の公式戦となる全日本学生運転競技選手権(全日本フィギュア)が行われた。フィギュアという種目はジムカーナやダートとは違い、乗用車や貨物トラックに乗車して区画された…

 新型コロナウイルスの影響でほとんどの大会が中止になった中、今シーズン最初で最後の公式戦となる全日本学生運転競技選手権(全日本フィギュア)が行われた。フィギュアという種目はジムカーナやダートとは違い、乗用車や貨物トラックに乗車して区画されたコースで正確さと速さを競うのが特徴の種目である。そして今大会は例年の運営形式と異なり、各大学ごとに入場時間が指定されたり、同じ大学の選手が同時並行でそれぞれの種目をスタートしたりと、選手同士の接触を最大限減らす施策が講じられた。早大自動車部からは男女合わせて5人が出場。男子の部では、公式戦最後となる鷹尾一成主将(先理4=神奈川・桐蔭学園中教校)が男子貨物Bで個人2位、男子乗用Bでは、3年男子で唯一出場した中山将志(人3=東京・早実)が個人3位となる活躍を見せたが、目標だった男子団体優勝にはあと一歩届かず2位。そして女子個人の部では、大沼すず音(国教3=東京・日比谷)が小型乗用の部に出場し、見事優勝に輝いた。

 

 男子乗用Aでは、綠川壹丸(基理4=東京・早実)が出場。個人優勝を目標に、最も思い入れの強い競技として最後のフィギュアの試合に臨んだ。減点なしの安定的な走行で競技を終えたが、タイムが振るわず4位。「手数の少なさでタイムを削るのが取り柄なのに、ミスを恐れ修正が多くなるという守りのフィギュアをしてしまった」と振り返り、悔しさを噛み締めた。男子乗用Bに出場したのは、3年の中山だ。初めての全日本フィギュア出場となったが、大きなミスはなく完走。「最低限の働きは出来た」と、5分00秒で堂々の3位入賞に輝いた。

 

乗用Aに出場し、個人順位は4位となった綠川

 

 男子貨物Aでは主務も務める渡邉道理(基理4=富山・片山学園)が出場した。男子貨物Aには、各大学エース級の選手も多く揃い、ハイレベルな種目に。その中で、4分26秒と好タイムを記録。しかし、終盤のミスにより減点され、3位となった。そして、エース鷹尾は男子貨物Bに出場。タイムアウトの足切りが厳しく、ほとんどの選手が失格となる波乱の展開となった。鷹尾は攻めた走りを繰り広げ、最速タイムである4分58秒でゴールイン。しかし、途中でミスをしてしまった影響で、個人優勝へあと一歩届かず、2位となった。「攻めて走った結果だったので不思議と悔いはありません」と振り返った。そしてその結果、男子団体としては優勝は逃したものの、堂々たる準優勝を飾り幕を閉じた。

 

 一方、女子乗用では3年大沼がステアリングを握った。大沼以外の選手は全員タイムアウトとなる中、メリハリのあるハンドルさばきで大きな減点もなく6分18秒で完走。見事個人優勝を掴んだ。「第二の目標である男子リーグで入賞できる成績を果たせなかった」と満足したタイムを出せなかったことを悔やんだが、「前回大会に比べて本番中に自分の走りを客観視して柔軟に手を変えながら走ることができた」と振り返る。

 


メリハリのあるハンドルさばきで優勝を掴んだ大沼

 

 どの選手も安定的な走行で好成績を収めたものの、求めていた結果が出せずに悔しさを口にした。新型コロナウイルスの蔓延によって、今シーズン最初で最後の公式戦となってしまった今大会。大きな目標であった男子団体優勝は、ライバルの慶大に取られてしまったが、堂々たる団体準優勝、そして個々の好成績は早大自動車部の確固たる強さを示すものであった。そして、4年生にとっては今大会が公式戦ラストランとなった。綠川は「最上級生としてチームに貢献できず、やるせない気持ち」と口にしたが、3年の中山は「来年は今年果たせなかった優勝を後輩と共に目指したい」と強く語った。4年生の勇姿や思いは後輩に伝わり、さらなる高みへ、早大自動車部のエンジンはさらに回り続けることだろう。また、4年生にとって公式戦は最後になったが、早大自動車部と慶大自動車部で行われる「早慶ジムカーナ」、各大学自動車部のOBとOGの有志にて企画された、4年生の現役最後のレースとなる「関東学生ジムカーナ記念大会」がまだ残っている。「早慶戦では必ず倍返しをします」と鷹尾主将。最後の最後まで、早大自動車部は走り続ける。

(記事 風間元樹 写真 末次拓斗)

※掲載が遅くなり、申し訳ございません

 

今回出場した部員たち。これからの自動車部に期待だ

結果

▽男子団体の部

2位 早大

▽男子個人の部

乗用A 4位 綠川

乗用B 3位 中山

貨物A 3位 渡邉

貨物B 2位 鷹尾

▽女子個人の部

乗用 優勝 大沼

コメント

綠川壹丸(基理4=東京・早実)

――今回の試合を振り返っていかがでしたか

 可もなく不可もなくという感じで、ぱっとしない走りで、手数の少なさでタイムを削るのが取り柄なのに、ミスを恐れ修正が多くなるという守りのフィギュアをしてしまいました。

――今大会は公式戦最後の競技となりましたが、どのような気持ちで臨みましたか

 フィギュアという競技は、自動車部に入ってから一番練習した競技であり、一番思い入れの深い競技でもあります。自動車部の集大成として、絶対に優勝しようという思いで臨みました。

――個人4位となりました。自身の結果をどう感じていますか

 個人優勝を狙っていたので、入賞すらできなかったことはとても残念です。団体としても最上級生としてチームに貢献できず、やるせない気持ちです。

――公式戦は最後になってしまいましたが、早慶ジムカーナや関東学生ジムカーナ記念大会に向けての意気込みをお願いします

 楽しむことを第一に、大会に出るからには全力で頑張ります!

 

中山将志(人3=東京・早実)

――今回の試合を振り返っていかがでしたか

 今大会は自分以外が2年生から全日本を経験している4年生ということもあり、足を引っ張らないようにという思いで臨みました。団体優勝することは出来ませんでしたが、最低限の働きは出来たと思っています。

――個人3位となりました。自身の結果をどう感じていますか

 自分の実力以上の結果となり嬉しさもあります。その反面、苦手意識があり一番練習した部分でペナルティをしてしまい、それがなければあと1つ順位をあげられたなと悔しさが残る結果でした。

――4年生にとって最後の公式戦となりました。4年生へ伝えたい言葉や思いはありますか

 今年の4年生は全員が2年生から全日本の選手として活躍してこられました。今の自分では到底及ばない程の実力を持った方々なので、フィギュア含め全競技でまだまだ教えていただきたいことばかりです。来年は今年果たせなかった優勝を後輩と共に目指したいと思います。4年間お疲れ様でした。

――最後に来年への抱負をお願いします

 今年は新型コロナにより今大会以外の全大会が中止になってしまいましたが、来年はジムカーナ、ダートトライアル、フィギュアでの総合杯獲得に向けて邁進していきたいと思います。

渡邉道理(基理4=富山・片山学園)

――今回の試合を振り返っていかがでしたか

 競技終盤での1つのミスにより大きな減点を食らってしまい、それがなければ優勝が見えていたため非常に悔しさの残る結果となりました。

――個人3位となりました。自身の結果をどう感じていますか

 自分が走ったグループは各大学のエース格と目されるメンバーが多くいたので、上位争いは激しいものになると考えていました。結果入賞することはできましたが、優勝を逃してしまい悔しい気持ちがあります。

――今大会は公式戦最後の競技となりましたが、どのような気持ちで臨みましたか

 コロナの影響で今年唯一で最後の公式戦となってしまいましたので、自身の自動車部としての集大成として後輩たちに恥ずかしくない姿で走ろうと思っていました。

――公式戦は最後になってしまいましたが、残り少ない自動車部生活でどのように過ごしていきたいですか

 今年度の公式戦は優勝することができなかったので、後輩が優勝出来るよう最後まで指導をしていこうと思います。

鷹尾一成(先理4=神奈川・桐蔭学園中教校)

――今回の試合を振り返っていかがでしたか

 個人団体ともに準優勝という結果でしたが、内容的には優勝した慶應とは大きな差を見せつけられたなと感じました。今年の慶應は在籍する四年生のほとんどが全日フィギュア優勝経験者ということもあり、個々のレベルも団体のレベルも非常に高いチームでした。早稲田も慶應も四年生主体のチームだったので、来年以降がどのような戦いになるかは、これからの練習次第で大きく変わると考えています。

――今回の試合に向けて主将としてどのように引っ張っていかれましたか

 早稲田は 4年生 3 人、3 年生 1 人のチーム構成で、団体優勝を目指す上では公式戦初出場の 中山のレベル上げをしなければいけないという状態でした。中山と大沼を集中的に指導することは、来年以降にもチームの核として技術面でも経験面でも大きな存在になると考えていました。結果としては中山が、3 位入賞、大沼が女子の部優勝ということで非常に良い結果を残してくれました。この結果は、彼らにとっても自信となり、この経験が来年に繋がることと思います。

――貨物 B で個人2位となりました。自身の結果をどう感じていますか

 自分の走行した貨物 B は中間の足切りタイムが非常に厳しく、僕と慶應の2名しか完走することができないという波乱の展開となりました。慶應のミスのない完璧な走りの後に自分の走行だったので、優勝を狙う上ではかなり追い込まれた状態で出走しました。結果珍しくペナルティーをしてしまい優勝を逃しましたが、生タイムは一番早く、攻めて走った結果だったので不思議と悔いはありませんでした。具体的な大きな敗因としては、今年は自分の得意としていたコースが事前発表のスタイルから、当日発表の苦手なスタイルへと変更されてしまった点も敗因の一つだと考えています。

――今大会は公式戦最後の競技となりましたが、どのような気持ちで臨みましたか

 今年はコロナウイルスの関係で予定されていた公式戦がほとんど中止になってしまい、入部以来の目標であった個人と団体で全日本学生年間総合杯連覇を達成することができなくなってしまいました。そのため、今年唯一残された公式戦であるこの全日本フィギュアで優勝することが、自分の夢であった小野梓賞獲得への唯一残された道だと思って臨みました。

――公式戦は最後になってしまいましたが、早慶ジムカーナや関東学生ジムカーナ記念大会に向けての意気込みをお願いします

 この全日本フィギュアでは優勝した慶應に大敗を期してしまったので、早慶戦では必ず倍返しします。また、関東学生ジムカーナ記念大会については現役最後のレースになるので、今年入学してくれた新入生や後輩に向けて、主将として、エースとして「何か大切なもの」 を最後の走りで伝えられたらと思います。

大沼すず音(国教3=東京・日比谷)

――今回の試合を振り返っていかがでしたか

 難易度の高いコースだったので、まず完走して結果を残せてよかったです。一方で、臆病になってしまい実力を出し切れなかったことを反省しています。

――個人優勝となりました。自身の結果をどう感じていますか

 タイムと結果を残すことができたのは嬉しいです。ただ第二の目標である男子リーグ入賞を果たせなかったので悔しさは残りました。

――この大会に向けて、練習に取り組んでいたと思います。その成果は出せたでしょうか

 練習から本番想定の走りを心がけたつもりでしたが、本番は緊張から守りの走りになってしまったので、成果を出せたとは言えません。ただ、前回大会に比べて本番中に自分の走りを客観視して柔軟に手を変えながら走ることができたので、練習の成果は表れていると感じました。

――最後に来年への抱負をお願いします

 男子と戦える走りを目指します。