今年度で79回目を迎えた早稲田大学・慶應義塾大学定期戦(早慶戦)。本大会で4年生が引退となる、シーズンを締めくくる一戦は、10m立射60発部門、50m伏射60発部門、50m三姿勢60発部門の3競技全てで慶大に勝利。総合得点で30点差をつけ…

 今年度で79回目を迎えた早稲田大学・慶應義塾大学定期戦(早慶戦)。本大会で4年生が引退となる、シーズンを締めくくる一戦は、10m立射60発部門、50m伏射60発部門、50m三姿勢60発部門の3競技全てで慶大に勝利。総合得点で30点差をつけ早慶戦連覇を達成し、引退に花を添えた。 


高記録で有終の美を飾った加藤

 午前中に全ての団体メンバーが出場したのは50m三姿勢60発競技。満井菜月(社4=東京・早実)、前田留那(スポ3=埼玉・栄北)、杉山瑞季(スポ2=神奈川・横須賀学院)を起用し伝統の一戦に臨んだ。「全然満足のいく結果ではなかった」と、満井は思うように点数が伸ばせず唇を噛んだが、前田、杉山は前回大会から点数を伸ばした。「後輩たちや他のレギュラーのみんなに助けてもらった」(満井)とチーム一丸となり、慶大に8点の差をつけて勝利を収めた。

 

 50m伏射60発競技には梅津怜(基理4=埼玉・早大本庄)、加藤東(社4=神奈川・聖光学院)、宮本裕喜(政経2=東京・早稲田)を団体メンバーに選出。加藤は昨年度、個人優勝を成し遂げており、「今年も当然個人優勝をしなければならないという思いがあった」と強い気持ちで臨んだこの競技。613.8点と2位以下に大きく水を開け、昨年度の自身の得点も上回る高得点で、2年連続の個人優勝を達成した。また、宮本も個人2位の好成績を挙げ、この競技でも慶大に勝利を収めた。


2年連続の個人優勝となった鈴木

 10m立射60発競技では鈴木志佳(人3=東京・目黒星美学園)、高橋祐衣(スポ3=東京・お茶の水女大附)、岡部藍(法2=早実)の3人で慶大を迎え撃つ。岡部は序盤、立て続けに10点台を撃ち抜いたが17発、19発目と7点台が出てしまう。しかし、その後は大きく乱すことはなく総合5位でフィニッシュ。一方の高橋は序盤、なかなかリズムが作れず、繰り返し銃を置く場面が見られた。総合6位のフィニッシュとなったが、前回大会から個人として点数を落とす結果に終わった。本来高い実力を持つ選手であり、来シーズンの成長と復調が待たれる。

 

 活躍が光ったのは鈴木。「先週、一般の大会に出場し617点が出ていたので、今回もいけるだろうと感じていた」と大台である620点を目標に試合に臨んだ本大会。序盤から常に10点台を撃ち続け、試合中に笑顔が溢れる珍しい場面すら見られた。41、42発目で初めて9点台が2度続いたが、「谷川コーチのおかげ」(鈴木)と、コーチの助言で気持ちを切り替え618.4点でフィニッシュ。圧倒的な強さでチームをけん引し、個人2連覇を成し遂げた。

 

 新型コロナウィルスの影響で思うように進まなかった今シーズン。4年生の口からは悔やむ声も溢れた。最後のシーズンの多くを棒に振ることとなった、最高学年の無念は想像に難くない。「寂しい!」(満井)、「まだまだ続けたいですね」(加藤)。しかし、射撃部で過ごした時間と経験。そして大切な仲間たちは必ずや、旅立ちの時を迎えた4年生の糧になることであろう。四年生は新たな道へと、そして後輩たちは新シーズンへと、再び歩み始める。

(記事 橋口遼太郎 写真 朝岡里奈、橋口遼太郎)

 

全出場選手結果

【10m立射60発競技】

▽団体 1809.0点(優勝)
岡部  藍 596.8点
鈴木 志佳 618.4点(個人優勝)
高橋 祐衣 593.8点
▽個人
陶山 絹香 590.4点
澤井 祐音 586.8点
杉山 瑞季 586.6点
宮本 裕喜 586.4点
熊田 圭祐 583.7点
吉間 民音 582.2点
須田 智晴 578点
井手 悠太 575.9点
廣島 温弓 570.7点
粕谷 美知 568.2点
島田明日嘉 567.3点
泉田  瞳 564.4点
小林 大輔 538.6点
渡辺 泰央 523.4点

【50m三姿勢60発競技】
▽団体 1658点(優勝)
杉山 瑞季 553点
前田 留那 573点(個人優勝)
満井 菜月 532点
▽個人
鈴木 志佳 559点(3位)
加藤  東 556点
江澤  誠 541点
椎野  凌 519点
保坂 剛志 504点

【50m伏射60発競技】
▽団体 1817.8点(優勝)
梅津  怜 597.2点
加藤  東 613.8点(個人優勝)
宮本 裕喜 606.8点(2位)
▽個人
満井 菜月 601.6点
澤井 祐音 597.3点
大芝 嶺花 594.7点
髙木  薫 580.4点
岩脇 輝和 559.7点
渡辺 泰央 516.8点

【総合】
早稲田大学 5284.8点(優勝)
慶応義塾大学 5254.8点

コメント

熊田圭祐主将(基理4=早大本庄)

――最後の早慶戦でしたが、どんな思いで臨みましたか

やはり4年間の集大成として、去年も優勝したので、今年も絶対に優勝するぞという気持ちで臨みました。

――今日が最後の試合でした。ご自身の結果を振り返っていかがですか

自分自身の結果はいつも通りかなと思います。

――チームの結果はいかがでしたか

かなり実力のある人がいつも通りの実力を出せてましたし、少し落ちてしまった人もしっかりと味方がカバーできていたので、インカレなどと同じような結果が出せたかなと思います。

――今日のチームの結果に点数をつけるとしたら

今日は嬉しいので100点をつけます。

――今シーズンは思うようにいかなかった最後のシーズンだったかと思います。どんな1年でしたか

やはりコロナの感染症があり、春先に出鼻をくじかれてしまったのはあります。でもチームとして秋からどう頑張っていくかというのをチーム全体でしっかり話し合って一つの方針を決めて、それに向かって最後のこの大会(早慶戦)に向けて何点取っていこうかとか練習していこうかというのを決めたことが今シーズンの1番の収穫というか、後につながることだったかなと思います。

――後輩たちへの思いを伝えるとするならどんなことでしょうか

自分たちの代がかなり射撃部の基礎を作ってきたのかなと思っていますし、それをしっかり後輩たちにも伝えられることは伝えてきたので、このまま成長していってくれればと思います。

――ご自身が射撃部で過ごした4年間はいかがでしたか

私自身、1年や2年の頃は銃を持っていなかったのもあって関わりが薄かったんですが、主将や副将を経てチームの思いを自分の中で自覚して、部活というのはこういうものだというのを後輩たちに伝えられて、何かのかたちとして残せる4年間だったかなと思っています。

――射撃部での学びを挙げるとしたら

今部員が40人ほどいるんですが、このような大所帯を率いることが初めてだったので、そこでのリーダーシップの取り方だったり人間関係の構築だったりというのはすごく学べた部分かなと思います。

――大変だったこともやはり多かったですか

やっぱり特に後輩とかの人間関係の問題だとか、春先はけっこうあったので、なんとか丸く収まったという感じです。でもそういうのを乗り越えてチームとして強くなっていくのかなと思います。

――同期にメッセージを送るとしたら

本当に同期には支えられっぱなしで、いい同期を持ったなという印象です。みんながいたからこそやってこれた、ありきたりですが、本当にそう思っています。

――引退になりますが、率直な思いを聞かせてください

一言で言うなら、4年間本当に楽しい部活動生活だったなという感じです。

加藤東(社学4=神奈川・聖光学院)、満井菜月(社4=東京・早実)

――前回大会から短い準備期間とはなりましたが、この早慶戦に向けてどのような準備で臨まれましたか

加藤 伏射のレギュラーであったので、絶対に求められている点数を出せるように伏射を努力しました。

満井 最後の大会であったので周りに迷惑をかけないように頑張ったのですが、 なかなか思い通りには行かなかったです。

――やはり最後の大会でかける思いは強かったですか

満井 はい。去年もレギュラーとしてやらせてもらって、今年は4年生で最上級生として参加したので引っ張っていけるようになりたかったです。

加藤 去年は個人優勝できて、今年も当然個人優勝をしなければならないという思いがありました。しっかりと優勝ができてよかったです。

――4年生としてこの1年間意識していたことはありましたか

満井 去年の自分が調子がよくて、早慶戦としてみても去年の早慶戦の方がずっと点数がよかったです。新型コロナウイルスの自粛期間でなまっていた自分をどうにか戻そうと、去年の自分に追いつけるようにしていました。

加藤 今年の前半は満足に練習ができる状況ではなくあまり上達できず、去年の実力や感覚を取り戻して、今年さらに成長しようとは思っていたのですが、あまり結果には繋がらなかったので残念です。

――ご自身の今日の競技を振り返っていかがでしたか

加藤 最初の伏射は、不満な内容もあるのですが 仕事はできましたし優勝することもできたので、とりあえずよかったなと思っています。その後の三姿勢では、途中まではなんとか許せる内容ではあったのですが、最後で崩れてしまったのは非常に残念です。

満井 私は正直全然満足のいく結果ではなかったです。去年の早慶戦から点数が30点も下がってしまったので、本当に後輩たちや他のレギュラーのみんなに助けてもらって。ただ、午後になんとか最後だという気持ちで楽しく撃つことができたのでよかったです。

――今シーズンは新型コロナウイルスの影響からなかなか思うようにいかなかったかと思います。どんな1年間でしたか

加藤 かなり苦しい1年間であったと思います。思うようにいかなかったり、ちゃんと結果が出せなかったり。あまり満足のいかない1年間でした。

満井 私も、やり切ったかと聞かれれば正直うまく答えられない1年であったなと思います。ただ、特に最後の2、3ヶ月、東もそうだし他の後輩たちも、すごく一緒に練習してくれて。楽しくて充実した時間を過ごせたと思います。

――射撃部で過ごしてきた4年間を振り返って、どんな4年間でしたか

満井 私は本当に楽しかったです。射撃自体も楽しかったですし、部員と過ごす時間も楽しくて。正直引退したくないなと思う4年間でした。

加藤 最初の方あまり結果が出なくて苦しかったのですが、3年になりようやく部内でもそれなりに上位の方に行けて。もしかしたらインカレとかでも結果が出せるかもしれないと思えたのは、すごくいい経験になったなと思います。4年間やってきて、楽しかったというよりも、今後の人生において意味のある経験ができたと思います。

――具体的にこの部分が人間的に成長をしたなと感じる部分はありますか

満井 自分の問題だけで成り立つスポーツをあまりやったことがありませんでした。どんな点数を撃っても、全部自分自身に責任がきます。自分に対する責任感などで成長できたと思います。

加藤 これまでスポーツをやったことがなかったのですが、今回大学でスポーツをやったことで、自分を成長させるためにはどういったことをやって、どのように結果を出すか、といったことをしっかりと考えられるようになったのは大きいと思います。

――同期や後輩に向けての思いはありますか

加藤 特に後輩に関してなのですが、努力している後輩にはしっかりと結果を出して欲しいですし、頑張って欲しいです。

満井 同期には楽しくて充実した4年間であったなとお礼を言いたいです。特に東には競技面ですごくお世話になったので、本当に感謝しかないです。後輩たちはみんなちゃんと練習してちゃんと上手くなっている子たちばかりです。これからも応援していますし、見に行きたいなと思います。

――最後に、この大会で引退となりますが、率直な思いを聞かせてください

満井 寂しい!(笑)。

加藤 まだまだ続けたいですね(笑)。

満井 私はこれで射撃自体がもう終わりなので、寂しいです。楽しかったです。

鈴木志佳(人3=東京・目黒星美学園)

――2試合連続となりました。体力的にもハードでしたか

30分試合開始が延期になったので助かりました

――前回大会から短い準備期間でしたが、どんな準備をしてきましたか

先週、クラブ対抗という一般試合に出場していたので、SBの実射経験は出来ていました。またエアはその大会で617点が出ていたので今回もいけるだろうと感じていました。練習でもS60で点取りという試合形式で練習する形を何度か繰り返して、一度620点も出すことができていました。そのため、今回は大丈夫だろうと思っていて、620点を目指していました。しかし、その中でも9点の浅いのが2回続いてしまいました。ただ、今回の勝因としては途中でリカバリーで2度射座を出たこと、そしてその時に谷川コーチ(谷川諒、平28スポ卒)から緊張をほぐす一言がもらえたことが一番大きいと思います。

――序盤から10点代を撃ち続けていた中で、9点が2度連続しました。その時にはどんな思いでしたか

105点が出た直後であったので、少し気持ち的にも余裕が出た中での9点でした。これは射座を出なくては、と思いました。緊張が高まっていたことも要因としてあったかと思います。

――一度射座を出てから、再び高得点が続きました。うまく切り替えることができましたか

この場面でも谷川コーチからの声かけがありました。本当に谷川コーチのおかげでちゃんとできたという感覚です。

――ご自身の誕生日に花を添えましたね

ありがとうございます(笑)。ただSBで3位となったのは悔しいです。元々は3位くらいに入れたらなという思いで撃っていたのですが、2位とセンター数の違いで負けてしまいました。最後の8点3連続がなければ2位になることができたので残念です。

――あえて反省点を挙げるとするならば8点が3度続いた場面ですか

そうですね。Sで反動にビビってしまう部分があります。空撃ちだと97点くらいまで行くのですが、実射になると90点前半になってしまうのが今後の課題かなと思います。

――4年生は最後の大会となりました。どんな4年生でしたか

東さんと満井さんは特に、最後まで射撃を頑張っていて仲間という思いがあります。東さんは射撃も教えてくれるし、今後も是非コーチとして頑張って欲しいという気持ちです。多分なってくれる気がするので(笑)。話しやすくて、2人ともすごくいい先輩でした。

――ご自身としては来季につながる結果となりました。この先は部としては公式の大会のないオフシーズンとなります。来季に向けてどのような準備をしていきたいですか

銃が変わるので、KK500のセッティングをしっかりとして、万全な状態で3月のランクリストを迎えたいと思っています。