現場の問題に目を向けた教育システムでアメリカのコーチの質を高めるいまだ世界中で…

現場の問題に目を向けた教育システムで
アメリカのコーチの質を高める

いまだ世界中で広がっている新型コロナウイルス。アメリカでは、コロナの感染拡大の懸念の中、地域スポーツはサッカーやバスケットボールの対外試合の禁止、テニスも通常の練習でマスク着用を義務化するクラブも出てきている。

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そんな中、アメリカプロフェッショナルテニス協会(USPTA)は、2021年の会費を無料とするプログラムを発表した。
USTAとUSPTAは、互いに協力し、条件を満たしたコーチを対象に年会費$299(日本円で約3万1000円)を免除することで、経済的な支援を提供するとしている。

その条件というのは、下記である。
①アメリカに居住してテニスを教えていること
②現在、活動中の会員であること(2021年に受け付けできなかった会員は2022年に資格を受け取る事が可能)
③USPTAの教育システム(セミナーの参加やウェブでの教育単位の修得)を完了すること
④身元調査を含むUSTAセーフプレイトレーニングに合格すること
⑤誠意を持って新しい人々にテニスを紹介すること

この取り組みは、現場で教えるコーチ達の負担を軽減するとともに、各項目をクリアするためのコーチの資質を高めることにある。

実際に私自身、USPTAのコーチ資格を持っており、③の教育システムを受講した。
その内容は、驚くべきことにテニスの技術に関するものではない。生徒同士のいじめやアルコール、ドラックの問題に対し、どのように対処するのかというものから、コーチによる虐待や性的な交渉についての問題が主な内容。
教育システムでは、具体例をいくつか挙げており、時にインタビューも交え、徹底的に注意喚起を促し、小テストを行う。これに合格しなければ、次の画面に進まず、偏見等を含めたコーチの資質を問う内容で2時間近くかかった。

だが、これほど本格的な教育システムを提供されたことはなく、コーチ側からすると有益な情報かつ抑止力にもなるものだったと思う。



コーチとしての資質を問うことで
テニスというスポーツを広げる

過去に、アメリカのスポーツチャンネル『ESPN』が、2017年~2018年の間にLSU(ルイジアナ州立大学)の女子テニス選手がフットボール選手から身体的虐待を受けていたことをテニス部のコーチが知りながら、事実を隠していたことを報じたことがある。

だからこそ、③の教育システムを受講することや、④の身元調査では民間企業に委託し、そのコーチの犯罪歴まで調べ、現場で起こっていることの解決を見出したかったのかもしれない。


コーチの実技ではなく、資質を問うた教育システム

スポーツの現場では、競技とそれ以外の境界線が曖昧な部分も多い。そのグレーゾーンに一歩踏み込み、タブーとされる問題に協会が取り組んだことは大いに評価すべきところだ。

いまや“会費だけ納めてもらえれば良い”という協会の考え方は、過去の遺物だ。今のスポーツの現場で起こっている問題に目が向けられたことは、テニスというスポーツを草の根から広げていこうとする意図を感じられる。

コロナ禍でもできることを着実に進められており、ラジオからは「テニスは距離を保ってできる安全なスポーツです!」とUSTAが宣伝をしている。インドアシーズンとなったニューヨークのテニスクラブは、コロナの感染拡大により、いつジム施設と同じような扱いで業務停止になるのかわからない状況になりつつある。

まだ、コロナの波が収まったわけではない。クラブオーナーやテニスコーチの正念場は、これからかもしれない。