高校バレー界を沸かせた新鋭たちを迎え新体制として始動した3月上旬、宮浦健人主将(スポ4=熊本・鎮西)は力強く言った。「目標は全日本インカレで優勝」。だがこの頃は、相次いで大会が中止になりバレーボールをすることすら困難になったとは、到底思わ…

 高校バレー界を沸かせた新鋭たちを迎え新体制として始動した3月上旬、宮浦健人主将(スポ4=熊本・鎮西)は力強く言った。「目標は全日本インカレで優勝」。だがこの頃は、相次いで大会が中止になりバレーボールをすることすら困難になったとは、到底思わなかっただろう。

 新型コロナウイルスで『当たり前』は奪われてしまった。例年であれば、春季関東大学リーグ戦や黒鷲旗男女全日本選抜、東日本大学選手権と、連戦が続きハードスケジュールになるところだが、すべて中止に。大勢で集まることが困難になり全体練習すらまともにできなくなった。特に、今年が集大成となる4年生のショックは大きかった。「何で一番大事な最後の年に」。大会がなくなり頑張る意味を見失いそうになることもあった。だがその悔しさや無念さを決してチームに見せることはなく、それぞれが今果たせる自分の役割に徹した。

 秋季関東大学リーグ戦は中止となったものの、代替大会が開かれることに。一年の終盤に差しかかった時期に、ようやく現体制で初めての公式戦を迎えられた。「やっぱり試合は楽しい」と宮浦主将は試合ができる喜びを噛み締めた。そんな矢先――。開催早々に早大が所属する男子1部リーグのチームで集団感染が起こり大会はあえなく断念された。4年生から紡ぎ出される言葉は「辛い」。「しんどい」。このままでは優勝はおろか、最後の全日本インカレすら経験できないまま終わるかもしれない。誰を責めることもできないやり場のない悔しさ、先の見えない不安感がただただ募る。だが、このまま終わりたくはなかった。そこで4年生は松井泰二監督(平3人卒=千葉・八千代)を含めて話し合い、自分たちなりに悔いの残らない決断を下した。「全日本インカレの開催に関わらず、今できることをやり切って終わろう」。リスタートを切り、これまでと同様に落ち込んだ姿を見せることなくチームを引っ張り続けた。そんな4年生の姿にメンバーも鼓舞され、より団結は深まった。「優勝して大好きな4年生を喜ばせたい」。

秋季リーグ戦の代替大会が現体制で初の公式戦となった

 ついに明日、ずっと待ち望んでいた全日本インカレが開催される。悩み苦しんだ日々を経て、やっとこの大舞台を迎えられる。「もちろん目標は優勝だが、目の前の一戦一戦を大事にして勝っても負けても悔いのない終わり方をしたい」と宮浦主将。それは大会が相次いでなくなり、当たり前だったことが当たり前ではないこと、試合ができる喜びに気づいたからだ。

 また宮浦主将はこうも話す。「プレーで現体制の集大成を表したいのはもちろんなんですけど。コートにいるメンバーだけでなく、自分たちを支えてくれているスタッフやベンチにいないメンバーの働きも併せて、みんなで戦っているところに注目してほしいです」。チームのマネジメントを行う宇野耕平主務(スポ4=愛知・星城)。試合に出られずとも、ボール拾いやドリンク作り等の雑務を行う選手たち。神野遥香(人4=愛媛・松山南)を中心に日々の練習を撮影したり試合のない中でも選手にデータを提供したりと、献身的にサポートしてきたアナリスト陣。大事な大会で選手がベストコンディションで挑めるよう体のケアをするトレーナー。このイレギュラーな事態に悩みながらも、4年生を筆頭にそれぞれが自分にできることを探した。

 紆余曲折を経てチームワークはより強固になった。集大成となる場でこれまでの思いをぶつけ、『全員バレー』で前人未到の四連覇へーー。

(記事、写真 西山綾乃)