サッカー名将列伝第24回 ジョゼップ・グアルディオラ革新的な戦術や魅力的なサッカー、無類の勝負強さで、見る者を熱くさせて…

サッカー名将列伝
第24回 ジョゼップ・グアルディオラ

革新的な戦術や魅力的なサッカー、無類の勝負強さで、見る者を熱くさせてきた、サッカー界の名将の仕事を紹介する。今回はスペイン人のジョゼップ・グアルディオラ。バルセロナ、バイエルン、マンチェスター・シティの監督を歴任し、数々のタイトルを獲得。また常に新しい戦術を発明するなどして、ファンを熱くさせてきた。しかし、今季はどうも様子がおかしい。稀代の名将は正念場を迎えているのだろうか。

 カンセロ、ロドリを後方支援に残すことで、ケビン・デ・ブライネとベルナルド・シウバのインサイドハーフが、より攻撃に関与しやすくなる間接的な効果は期待できるかもしれない。しかし、チャンスメークの多くがデ・ブライネにかかっているのが現状で、後方支援は大した効果を生み出せていない。

 ペップの錬金術もネタ切れになってしまったのだろうか。

<アタッキングサードの錬金術師>

 グアルディオラは、監督としてイチからサッカーをつくったことがない。

 バルセロナには、すでに確固とした哲学とプレーモデルが存在していたからだ。ペップ自身も自分を「ラファエロの弟子」と位置づけていた。

 ルネッサンスの巨匠ラファエロ・サンティは、工房に多くの弟子たちを抱えていた。ラファエロは、多くの作品の1から10まで自分でつくり上げたわけではなく、弟子たちが仕上げを行なっていたという。

 バルサのサッカーでデッサンを描いたのはヨハン・クライフであり、つづく監督たちがそれに彩色を施してきた。ペップ自身もその弟子たちのひとりにすぎないという謙遜である。

 ただ、クライフが監督時にイメージしていたサッカーは、おそらく彼の在任中は実現されていない。ペップのチームになって「ああ、そういうことだったのか」と腑に落ちるところがたくさんあった。ペップのおかげで、クライフ時のドリームチームが再評価されたところもあると思う。

 バルサの、いわば原理主義のなかで育ったペップにとって、やるべきサッカーはすでに決まっている。それをどういう方法で行なうかが彼の仕事だった。

 ペップは手にしたものを黄金に変える錬金術師だ。ボールを確保するところまでは、いわばそのための土台にすぎず、「偽SB」やカンセロの移動もその範囲でしかない。錬金術師たるところはアタッキングサードである。

 これまでもリオネル・メッシ、ロベルト・レバンドフスキ、ケビン・デ・ブライネを黄金に変えてきた。ただ、材料がなければ黄金は生まれないのだ。これまで彼が起こしてきた「選手の才能と、監督のアイデアによる化学反応」を現在のシティでは起こせていない。あれほど執着してきたフィル・フォーデンも、黄金には変わっていない。

 無観客試合がつづく状況の今季中に、大型補強が成立する可能性は低い。そうなると、契約延長と言ってもグアルディオラ監督に残された時間は実質2シーズンだ。その間に新たな錬金術を見せるのかどうか。材料はメッシなのか、それともほかの誰かなのか。

ジョゼップ・グアルディオラ
Josep Guardiola/1971年1月18日生まれ。スペイン・カタルーニャ州のサンパドー出身。1990年代にバルセロナの中心選手としてプレーし、スペイン代表でも活躍したMF。引退後は08年にバルセロナの監督に就任し、リーガ優勝3回、CL優勝2回などの華々しい成績。13年からはバイエルン、16年からはマンチェスター・シティの監督を歴任し、それぞれのチームで好成績を残してきている。