暖かい日差しが降り注ぐ中、第28回早慶戦が開催された。今年は新型コロナウイルス感染対策のため無観客となり、場内は例年と異なる妙な静けさが漂ったが、試合は両者一歩も譲らない熱いものだった。関東学生秋季リーグ(秋リーグ)初戦で慶大と対戦した際…

 暖かい日差しが降り注ぐ中、第28回早慶戦が開催された。今年は新型コロナウイルス感染対策のため無観客となり、場内は例年と異なる妙な静けさが漂ったが、試合は両者一歩も譲らない熱いものだった。関東学生秋季リーグ(秋リーグ)初戦で慶大と対戦した際には、終始流れをつかめず2−0で敗北を喫したが、今回は「雰囲気づくりに力を入れよう」(南家未来副将、教4=京都・立命館)というように、立ち上がりから早大の流れをつくると早々にPCを獲得。しかし惜しくも得点とはならず、0−0で前半を終えた。迎えた後半、第3クオーター(Q)に相手に先制を許したものの、焦りでプレーを乱すこともなく、第4Qのペナルティコーナー(PC)をしっかりと決めて同点に。その後も一進一退の攻防の末、25年ぶり2回目の引き分け、両校優勝で幕を閉じた。

 慶大のセンターパスで試合が開始。すると直後から南家のドリブルで相手サークル付近まで攻め込み、早速チャンスが到来。一度相手ボールとなったもののすぐに奪い返すと、吉野真啓(スポ1=富山・石動)がサークル内に打ち込み、開始わずか2分でPCを獲得した。これはうまくはまらず先制とはならなかったが、ここからしばらく早大が押す展開が続く。しかし相手も徐々に早大ゴールに迫り、約8分にPCを獲得されてしまう。それでもここは「チームを支えたい」との強い思いで挑んだGK古屋萌杏主将(スポ4=埼玉・飯能)のナイスセーブで切り抜ける。その後も何度かシュートを放たれひやりとする場面があったが、これらは枠外へ逸れゴールには結びつかなかった。続く第2Q、早大はボールをキープしてはいるもののなかなか攻め上がることができない。南家のドリブルで攻撃の契機をつくるが、シュートにはつながらず。その後カウンター攻撃を仕掛けられたが、DF橋本実結(社4=東京・早実)のナイスディフェンスもありピンチをしのいだ。互いの固いディフェンスを前にゴールを決め切れないまま、0―0で前半が終了した。


ナイスセーブで早大ゴールを守る古屋

 均衡が破れたのは第3Q。立ち上がりは早大が押す展開となったものの、開始6分、ロングパスをきっかけにサークルまで迫られると慶大のロングコーナーに。そこからサークル内に攻め込まれ、守備の隙間を抜けたボールがついに枠内へ。相手に先制を許したことは「想定外」(古屋)と振り返ったが、その後も味方の体を張ったディフェンスに「ナイス」の声が響くなど、早大は悪い流れを引きずることなく全員で1点を追った。2分間の休憩を終え、4年生にとっては早大ホッケー部での最後の15分間が始まった。開始早々、相手にPCを獲得されピンチを迎えるが、これは古屋が弾く。そして残り7分、吉野が華麗なドリブルでディフエンスをかわし敵陣サークル内に切り込むと、PCを獲得。残り時間も少なく絶対に決めたい場面のシューターは、12番のFW堀山夏帆(教3=東京・早実)。これを見事に決め、ついに同点に追いついた。試合が振り出しに戻り、勝利を目指す両者の攻撃の勢いがさらに増す。終了間際に慶大がPCを獲得し、早大側には緊張が走ったがこれは決まらず。1―1の引き分けのまま、終了のホーンが鳴った。


見事にシュートを決め、喜ぶ堀山

 4年生の引退試合となった今年の早慶戦。14年連続の単独優勝を目指していた中での引き分けとなり、4年生は率直に悔しい気持ちも口にした。それでも1から4年生全員の動きが「今までで一番良かった」と振り返る。来季は経験者こそ少なくなるものの、「チームのこと考えられる子が多い」(古屋)、「最高のチームが出来上がる予感しかしない」(南家)と期待が寄せられるチームだ。今季成し得なかった関東リーグ4位以内、早慶戦単独優勝を果たすべく、早大女子ホッケー部はまた新たな一歩を踏み出す。

(記事 布村果暖、写真 山田流之介)

結果
TEAM1Q2Q3Q4QTOTAL
早大
慶大
コメント

安岡裕美子監督(平16人卒=山形・米沢商)

――結果をどう受け止めていますか

本当は単独で優勝したかったのですが、失点してから取り返せたというところは今年のチームの最後の成長した点だったかなと思うので良かったです。

――どんな展開を想定していましたか

先制できればというところだったのですが、秋リーグでは2失点しているので落ち着いて臨めるようにと考えていました。

――慶大の動きはどんな印象でしたか

秋リーグと変わらないペースでやってきたかなとは思いましたが、向こうも緊張していたのかなと、ちょっと硬い感じはしました。

――4年生の動きについて、まず古屋さんはいかがでしたか

失点したところはちょっと勿体なかったですが、後はしっかり冷静に指示して、前に出て止めていたので良かったと思います。

――南家さん、橋本さんはいかがですか

(南家は)たぶんちょっと気負ってしまった部分もあったとは思いますが、しっかり前につなげようというのと、周りを盛り上げようというのがすごく見られました。また、特に実結の動きは本当に良かったと思います。間のポジショニング、しっかり前につなげる部分がすごく良かったです。

――今季を振り返っていかがですか

前半はコロナの影響で全体の活動ができなかったのが大きかったですがそこから4年生主体にミーティングなど、初心者含めてやってこられたので最終的にここまで来られたかなと思います。

――来季に向けた意気込みをお願いします

4年生の経験者が抜けてしまうので、また新たな子が入ってくるのですが、初心者とのバランスを活かせるように冬の段階から頑張っていきたいと思います。

GK古屋萌杏主将(スポ4=埼玉・飯能)

――まず結果について率直なお気持ちは

例年であれば引き分けの同率優勝はすごく悔しい結果だと思うのですが、私個人としてはとても嬉しい結果でした。最初失点してしまったときに、もう負けてしまうのかなと思ったのですが、後輩がしっかり点を取ってくれて同率優勝できて良かったなと思います。

――試合全体を振り返っていかがですか

第1Qから早大のペースで、みんなが今まで一番いいプレーをしてくれたように感じていて、4年生だけでなく1から3年生の一人一人が声を出して早大らしい雰囲気をつくってくれたと感じます。どのクオーターでも、早大のペースでできたと思います。

――どんな展開を想定していたか

やはり第1Q目でまずは1点を取るというところで、23(メートルライン)からの打ち込みや、フィールドゴールよりPCを最初は狙っていました。先制点を取るという目標があったのですが、相手に先制を許してしまったのは想定外でした。

――前半を0ー0で終え、後半に向けてはどんなプランを立てましたか

第1、2Qは早大のペースでできたと思うのですが、やはり後半になると慶大も勢いを増してくると思っていたので、その雰囲気に飲まれないようにこちらがもっと大きな声で声掛けをして1点を取りに行こうと準備しました。

――第3Qの慶大に先制された場面を振り返っていかがですか

結構ポロッという感じで取られてしまって、自分も集中していたつもりだったのですが気がふっと抜けた瞬間に入れられちゃったのかなと思っています。シュートを打たれたときに止められたと思ったのですが、どこかかすって入ってしまったようで。やられたというよりは自分の集中が若干切れてしまっていた時間帯だったのかなと思います。

――カウンターで攻め込まれる場面もありました

秋リーグでもそのような展開があったのである程度想定はしていましたが、意外と自分の中でカウンターを食らっているときは落ち着いていたかなと。「来る来る」という焦りではなくて、「来い」くらいの強い気持ちで、自分が前に出て何でもいいから止めようと、結構強気に構えられました。

――ナイスセーブも沢山見られました

主将という立場があったので、自分が緊張したり不安がっていたらみんなも不安になってしまうので、とにかく自分が一番強気で、チームのみんなを引っ張ろうと思っていました。試合に入ってからも内心はすごく緊張していましたが、それを周りに悟られないように気持ちを固めてつくっていたので、試合中は落ち着いてプレーできたのかなと思います。

――早大ホッケー部での4年間を振り返って

自分はキーパーをずっとしていたので大学からフィールドプレーヤーをするとは全然考えていなかったのですが、4年間を通して自分がその場その場でチームに何を求められているのかを常に考えていて、フィールドとキーパーでポジションは違うのですが、ずっと自分の中にはとにかくみんなに笑顔になってほしいなというのがすごくあって、みんなの笑顔のために頑張ろうとずっと思っていました。最後の1年間はキーパーになれたのですが、最初は正直感覚も、2年間やっていなかったのですごく不安がいっぱいだったのですが、本当に、未来(南家未来、教4=京都・立命館)と実結(橋本実結、社4=東京・早実)に支えられて、ここまでやってこられたと思います。

――後輩へのメッセージをお願いします

自分は今日チームを支えるという目標を立てていたのですが、正直支えるより支えられたなとすごく思っていて。みんな今日のプレーが今までで一番良かったと思っていて、自分の思っていた以上にみんなすごく成長しているんだなと感じました。来年は経験者がさらに減ってしまうとは思いますが、今の3年生なら絶対いいチームを築けると思いますし、みんなで力を合わせて頑張っていってほしいなと思います。

MF南家未来副将(教4=京都・立命館)

――率直に結果についてはいかがですか

先輩たちがずっと勝ってきて、伝統とか歴史もあるので、それをつなごうと思っていたのですが、引き分けというかたちに終わってしまって。今まで築き上げてきたものを続けられなかった申し訳なさと悔しさが残る結果になったかなと思います。

――試合の展開を振り返ってみていかがですか

私は雰囲気づくりに力を入れようと思っていました。慶応は人数も多くて勢いのあるチームで、私たちは逆に第1Qが弱いチームだったので、最初から勢いに圧倒されないように、勢いをつけるような声かけだったり、雰囲気づくりというのをやっていました。最初からショートコーナーを取ったりだとか、アップの時点で圧倒的に相手よりも声が出ていて、雰囲気ができていましたし、相手に全然勢い負けしていなくて、むしろ勢いで押していたのかなと思います。

――今日の試合の立ち上がりを振り返ってみていかがですか

立ち上がりの部分で引かなかったことと、コートに立っている11人を含め、ベンチにいる人を含めた全員が声を出していたというところで、最初の段階で相手が怯んでいたり、焦っているのを見て「あ、これは早稲田に流れが来るな」というふうには感じました。

――これが最後の試合、かつ早慶戦ということで、他の試合にはない緊張感などはありましたか

すごく緊張すると思っていたのですが、意外とそうでもなくて。「やるしかない」というか、逆に開き直りの境地に入っていたというのが正直なところです。やってきたことをやりきるしかないし、私は多分相手に分析されてるけど、それでもできることをやるしかないという気持ちでした。「やってやるぞ」という気持ちの方が大きかったです。

――前半は0-0で終わりましたが、後半に向けて修正した点などはありますか

私たちは前半打ち込みが多くて、相手もその対応とか、「打ち込みがくるよ」というような声掛けも増えていました。バレてきているなとか、(打ち込みがくるという)声掛けが増えてきているなとかは感じていたので、「打ち込みばかりに頼るのではなくて、ポイントを取って徐々にじわじわ攻めていこう」というような声かけはしました。

――相手のディフェンスやマークなどにやりにくさを感じることはありましたか

1対1の場面があまりなくて、1対2をつくられたり1対3をつくられたり、ペアで守る意識が強いチームだなと感じました。一個一個の当たりも強くて、少しでも弱く持ってしまったらはじかれたりだとか、一歩後ろに下がってしまったらそのまま相手が突っ込んでくるというようなディフェンスをしてくるので、どれだけ前に仕掛けられるかというのが大事になってくるのかなと感じました。

――第3Qで相手に先制を許すかたちになりましたが、精神面に影響はありましたか

早稲田が結構押しているというのもありましたし、そんなに悪い失点ではなかったのかなというふうに思っていて。みんな粘って粘って、ディフェンスも最後手を出して、それでも仕方なく入ってしまったというような失点でしたし、絶対に取り返せるという自信があったので、私自身はあまり落ち込まずに切り替えていました。

――早大ホッケー部での四年間を振り返ってみていかがですか

本当にたくさん苦しいことや悩むことがありましたし、「この道でよかったのかな」と考えてしまうこともあったのですが、実際に四年間、今日の試合を終えてみたら、今までで1番いい試合だったと思いますし、早稲田のホッケー部を選んで本当に良かったなと心から思える4年間だったなと思います。

――後輩へのメッセージをお願いします

今の3年生は4年生になって最上級生として引っ張っていくと思うのですが、チームづくりの楽しさや難しさを感じながら、自分たちの思うようなチームをつくりあげて欲しいと思います。下の子たちがそれを支えて、ついていってあげることで、最高のチームが出来上がる予感しかしないので、その最高のチームでいい成績が残せるように、ずっと応援しています。

DF橋本実結(社4=東京・早実)

――率直に結果についてはいかがですか

14連覇を目標にやっていたので、悔しい気持ちはあったのですが、こないだのリーグ戦で負けた相手に今回は同点だったという部分で言えば、チームとしては成長したのかなと感じます。

――相手の動きは前回と比べて何か変化はありましたか

相手に違いがあるというよりかは、自分たちが研究や相手の選手がどういう選手かのリストを作ったり、何回かミーティングもしていたので、戦略を練っていたという点では(相手の動きについて)感じることも変わってきたのかなと思います。相手よりも、自分たちが強くなったからこそ「勝てる」というふうに思えたのかなと思います。

――今日の試合でのディフェンス陣全体の動きはいかがでしたか

最初はサークル内に入ることも多かったとは思うのですが、その中でも落ち着いてディフェンスがしっかりマークを見てくれたりしていて、全員でサークルの危機から脱出しようというのがすごく見えていたので、今までの中で一番ディフェンスとしてまとまりがある試合になったのかなと思います。

――監督が「橋本選手の動きが特に良かった」とおっしゃっていたのですが、ご自身のプレーを振り返ってみていかがですか

本当ですか!(笑)最後の試合だったからこそ「勝ちたい」という思いを持ってやっていたので、自然と体が動いて。「ここ取りどころだ」とか「ここはビデオで見ていたところで絶対に打ち込んでくる」とか「ここで仕掛けてくるな」とかが分かりましたし、チームの支えになれるように一生懸命やってきて、いいプレーができたのかなと思います。

――これが大学最後の試合となりましたが

やっと今、少しずつ実感が湧いてきたという感じです。勝ち切ることができなかったので悔しいんですけど、最後の試合としていい動きもできましたし、後輩にすごく助けてもらったこともあって、チーム全体として全員が頑張っていたことを感じられたので、最後の試合として一番印象に残ったし、心に残った試合なのかなと思います。

――最後の試合を終えた今のお気持ちはいかがでしょうか

複雑ですね(笑)。監督に褒められたのを踏まえると、今自分ができる最高のプレーだったのかなとは思うので、今回の結果としては悔しいのですが、自分の中では出し切れたのかなと思います。そういう面では自分に対して「お疲れ様」という言葉を掛けたいですし、やり切ったと思ってもいいのかなと思っています。

――早大ホッケー部で過ごした四年間を振り返ってみていかがですか

決して楽ではなかったと思いますし、自分は高校までテニスをやっていて、プレー全部(自分1人で)できて当たり前だったのですが、そういうところもなくて。ゼロから始めたホッケーで、先輩方にもついていけなかったし、同期にもたくさん迷惑を掛けたと思うのですが、この四年間を通してチームで戦うことの楽しさだったり、チームでどうやって勝っていくかというのを考える大切さとかを学ぶことができて、いい四年間を過ごせたのかなと思います。

――最後に、後輩へのメッセージをお願いします

結果の面で言えば、関東リーグは5位で終わってしまってインカレにも出場することができなかったし、早慶戦も同点で終わってしまって悔しい部分があるので、関東リーグ4位を取り返してほしいし、早慶戦で完全優勝をしてほしいなと思います。あと、試合に入る前に「4年生のために頑張ります」って言ってくれて、ボールも最後まで追いかけてくれたし、たくさん助けてもらった面も多いので、次に向けて向上心を持って取り組んでいってほしいし、それが結果として表れたらいいなと思っているので、頑張ってほしいなと思います。率直に応援しています。