75点。これはGK鈴木佐和子主将(スポ4=浦和レッズレディースユース)、そして福田あや監督(平20卒)が現在のチームの出来を点数で表したものだ。両者とも現在のチーム構築に一定の手ごたえを感じながらも、同時に目標達成のためにはさらなる成長が…

 75点。これはGK鈴木佐和子主将(スポ4=浦和レッズレディースユース)、そして福田あや監督(平20卒)が現在のチームの出来を点数で表したものだ。両者とも現在のチーム構築に一定の手ごたえを感じながらも、同時に目標達成のためにはさらなる成長が必要と語る。5年ぶりの優勝を果たした関東大学女子リーグ(関カレ)を振り返り、来週に迫った全日本女子選手権(皇后杯)で目標の「なでしこ1部リーグ所属チーム撃破」を達成するため、現在のア女に足りない25点を探る。

 5年ぶりに関カレを制した早大だが、全てが順風満帆に進んでいたわけではない。1戦目こそ勝利を挙げたものの、2戦目で筑波大に白星を献上。直後にリーグは一時中断し皇后杯関東予選に臨んだが、4試合で3得点という得点力不足に悩まされ決勝で敗戦。「1点の重みを痛感」(鈴木)し、大会4連覇を逃す形となった。しかしその後は目覚ましい成長を遂げる。再開後初戦の日体大戦を5得点で快勝すると、その後の6試合のうち5試合で複数得点を挙げ勝利。課題であった得点力不足を見事に解消した。また、守備もさらに安定感を増し、再開後の7試合中6失点でクリーンシートを達成。結果、4年連続2位と苦渋を味わい続けた関カレで、5年ぶりとなる優勝を果たした。


喜び合う選手たち

 「細かい部分で突き詰められる部分がある」(鈴木)、「(具体的に25点分のばしたい部分は、という問いに対して)些細な詰めの部分です」(福田監督)と主将、監督が語るように、現在の早大には明確な課題があるわけではない。1本1本のパスや細かなポジショニング、90分を通した集中などの細かな部分での成長が求められる、いわば成熟期だ。その中でさらなる飛躍のために、2つの修正点が考えられる。1つ目の修正点として、“オプションとなる戦術の充実”を挙げたい。皇后杯関東予選から現在まで4-4-2を採用。チームの成熟度は試合ごとに増しているが、勝ち上がるにつれてスカウティングが進み、対策は厳しくなるだろう。また、皇后杯で戦う相手は強豪ばかり。試合中の修正力も大学レベルをはるかに上回る。そこで3トップや5バックなどの大胆な戦術変更が有効になるかもしれない。試合の流れを読むことに長ける監督の手腕にも期待がかかる。

 2つ目の修正点として、“大人”のチームになることを挙げたい。今シーズンア女が勝利を逃した3戦のうち、2試合は群馬FCホワイトスターと対戦したもの(1分1敗)だが、2試合とも圧倒的な力の差があったわけではなかった。そこで勝敗を分けたのは、“大人”と大学生の差。「大人と大学生の違いを見ることができた」とDF後藤若葉(スポ1=日テレ・東京ヴェルディメニーナ)も試合後にコメントしているが、早大の嫌がる戦術を継続する“いやらしさ”や、審判の判定基準をいち早く理解する“適応力”などが、群馬に優勝・勝ち点をもたらした要因といえるだろう。皇后杯で戦う大人相手に勝利をつかむには、大学生らしい勢い・若さとともに、相手のペースに合わせることなく自分たちのペースで試合を進めること、相手チームだけでなく、審判に対しても試合の中でアジャストすること、相手ベンチや選手の文句やラフプレーに対しても冷静に対応することなど、いかに大人なチームになれるかがカギを握る。だが、それらは一朝一夕で身に着くものではなく、実戦の中で吸収する部分が大きい。だからこそ、これまで以上に試合の中で吸収し、成長することが求められる。


残り2か月、さらなる成長が必要だ

 関東2位で皇后杯へと臨む早大の1回戦の相手は岡山湯郷Belleに決まった。2019年からプレナスチャレンジリーグWestに所属するチームで、過去にトップリーグレギュラーシリーズ優勝や皇后杯準優勝の経験を持つ古豪である。今シーズンは2勝2分6敗の5位でリーグを終えているが、侮れない相手だ。そして、1回戦を勝ち上がれば2回戦ではなでしこリーグ2部に所属するASハリマアルビオンと対戦することになる。2016年に現体制で始動した歴史の浅いチームではあるが、8勝2分8敗の6位でリーグを終了。優勝チームのスフィーダ世田谷に勝利するなど、確かな実力を持った相手だ。そして、早大が前年敗れた日体大FIELDS横浜に今季2勝しているチームでもある。厳しい試合が予想されるが、粘り強く戦い勝利を収めたい。

 3回戦では日テレ・東京ヴェルディベレーザとの対戦が予想される。今シーズンこそけが人の影響もありなでしこリーグ1部で3位に沈んだが、2019、2018シーズンは2年連続で3冠を達成。そして皇后杯3連覇中の、日本女子サッカー界のトップに君臨するチームだ。リーグ優勝を逃し、リーグカップも中止となったため、タイトルを獲得する最後のチャンスとなる皇后杯に対する思いは強いだろう。しかし、勝利に対する思いが強いのは早大も同じだ。「皇后杯でのなでしこ1部リーグ所属チーム撃破」という目標は「前回王者撃破」というさらに厳しい目標へと変わったが、2017年には大会2連覇中のINAC神戸を撃破するジャイアントキリングを起こした早大が、再びジャイアントキリングを起こす姿に期待がかかる。

 主将の鈴木を中心とした現体制での活動も残り2か月。ここから先は負けたら終わりの一発勝負が続く。戦いの中で成長を続け、チーム一丸となって戦うア女の姿から目が離せない。そして、2020年1月6日。味の素フィールド西が丘にて喜びを爆発させるア女の姿が見たい。

(記事 稲葉侑也 写真 山崎航平、橋口遼太郎)

コメント

福田あや監督(平20卒)

――チームの現在の出来について

本当に難しい状況の中で選手たちが時間を大事にして積みあがったものというのは確実にあると思うので、そういう意味での成果で考えるとよく積みあがっていると思います。ただチームとしてインカレ優勝、皇后杯でなでしこ一部撃破という目標に関して考えるとまだ伸びしろがあると思うので、75点くらいですね。

――具体的に25点分のばしたい部分は

些細な詰めの部分です。ちょっとした部分 個々人一人一人のレベルアップという部分、チームとして勝ち切る、守り抜く、そのためには何をするかという意味でもう一つ積み上げないと目標は達成できないと思います。

――9月の筑波戦(●0-1)ではチームとしての底上げがうまくいっていない印象を受けました

チームの作りの部分ではあの敗戦がギアを上げるきっかけにもなったし、その部分はすごくよかったと思います。守備の構築からチーム作りを始めて、そのあとに得点を奪わなければ勝てないという悔しさがあって攻撃を積み上げて、それがだんだんとゲームを通じて積み上げられていると思います。最近はそれをいろいろなメンバーに底上げ、チームのオプションという風になっていると思います。

――メンバーに関しては何割程度固まっていますか

7,8割くらいだと思います。誰もが安泰じゃないし、誰もがチャンスあるし、全員がやれることがあるし、一人ひとりが伸びしろを持っていると思うので、どのような化学反応を起こせるかっていうのは楽しみにしています。