木々が色づく所沢グラウンドで、第9回早大競技会が開催された。同日に行われた他の競技会では強風が選手たちを苦しめたが、所沢は「涼しくて風もなかったので走りやすかった」(山口賢助、文3=鹿児島・鶴丸)と選手が口にしたように好条件が整っていた。…

 木々が色づく所沢グラウンドで、第9回早大競技会が開催された。同日に行われた他の競技会では強風が選手たちを苦しめたが、所沢は「涼しくて風もなかったので走りやすかった」(山口賢助、文3=鹿児島・鶴丸)と選手が口にしたように好条件が整っていた。それを裏付けるかのように、レースでも好記録が続出。井川龍人(スポ2=熊本・九州学院)が28分12秒13を、宍倉健浩(スポ4=東京・早実)も28分16秒95を叩き出し、1万メートルの持ちタイムで部内1、2番手に躍り出た。

 1組目には初の1万メートルに挑んだ佐藤航希(スポ1=宮崎日大)や、11月4日の第8回早大競技会の5000メートルで自己ベストをマークした河合陽平(スポ3=愛知・時習館)らが出場。2人は序盤から先頭付近につけ、「勝ち切ることを意識した」という佐藤が、自信を持つラスト勝負で逃げ切って見事1着。河合も4着に入り、5000メートルに続き自己ベスト更新を果たした。


初の1万メートルで勝ち切った佐藤航

 2組目に登場した半澤黎斗(スポ3=福島・学法石川)も20秒以上自己記録を伸ばした。ここ数日は実習の影響で練習できていなかったこともあり、前半は「きつかった」と振り返るが、序盤から集団前方につけ1周70秒前後で刻んだ。6000メートル手前で一時先頭に立つが、後続を思うように離せず体力を消耗してしまう。これが響き、想定していた残り4周でのロングスパートへの切り替えがはまらず。それでもラスト1周は他と一線を画すスパートで、28分台に迫る29分04秒24をマークした。


積極的にレースを展開した半澤

 最終組には井川、宍倉、山口、鈴木創士(スポ2=静岡・浜松日体)らが出場した。5000メートルまでは、日本選手権出場を控える太田直希(スポ3=静岡・浜松日体)と中谷雄飛(スポ3=長野・佐久長聖)が、1周68秒のハイペースで集団を引く。全日本大学駅伝対校選手権(全日本)のアンカー区間で好走を見せた山口は、序盤からペーサー2人のすぐ後ろにつける積極的な走りを見せた。太田と中谷が抜けてからは、一度井川が仕掛けるが山口もこれに反応。「思い切って(井川の)前に出た」と上級生の意地で食い下がり、ともにレースを引っ張った。


山口も積極的な走りで自己記録を大幅に更新

 6000メートル過ぎには集団に動きが見られ、早大勢としては山口、井川に続き宍倉までが第一集団に。8000メートル手前、夏合宿以降自ら志願した距離走で力を蓄えてきた井川が、「(集団のペースが)すごく楽だったので、行かないともったいない」と、再び先頭に立つ。ラスト2周でペースアップした集団から宍倉が遅れたが、「徐々にペースを上げて追いついていこう」という冷静な判断の下、少しずつ追い上げる。最後は井川が持ち味のダイナミックなスパートを発揮して先着。宍倉も最後の一周で2位に浮上し、自身の想定を上回るタイムでゴールした。スプリント力が一番の課題だと話す山口も28分20秒台の好記録でフィニッシュし、中盤まではかなりの余裕をもって走れたことで「自信がついた」と手応えを口にした。


終盤先頭に立つ井川と、それを追う宍倉

 井川、宍倉の飛躍により、1万メートルの学内上位4人が、日本選手権参加A標準である28分20秒00を上回ったことになる。これは驚異的な人数であり、早大が日本のトップレベルの選手を複数擁しているという証だ。4人以外でも好記録が続出しており、チーム全体の走力が向上していることは間違いない。東京箱根間往復大学駅伝競走に向けて、20キロという距離にどれだけ対応していけるか。激戦必至のメンバー争いと合わせて、目が離せない。

(記事 布村果暖、写真 横澤輝、朝岡里奈)

結果

▽1万メートル

1組

佐藤航希(スポ1=宮崎日大)29分42秒98(1着)自己新記録

河合陽平(スポ3=愛知・時習館)29分49秒00(4着)自己新記録

黒田賢(スポ4=東京・早実)30分11秒15(10着)自己新記録

佐藤皓星(人3=千葉・幕張総合)30分28秒95(14着)自己新記録

濱本寛人(スポ1=熊本・宇土)31分09秒52(19着)自己新記録

井上開登(法2=東京・早実)31分21秒79(22着)

白井航平(文構2=愛知・豊橋東)31分27秒01(23着)自己新記録

牧瀬雄祐(人1=京都・西京)32分04秒70(25着)自己新記録

2組

半澤黎斗(スポ3=福島・学法石川)29分04秒24(4着)自己新記録

柳本匡哉(スポ1=愛知・豊川)29分17秒37(10着)自己新記録

安田博登(スポ3=千葉・市船橋)30分53秒63(32着)

3組

井川龍人(スポ2=熊本・九州学院)28分12秒13(1着)自己新記録

宍倉健浩(スポ4=東京・早実)28分16秒95(2着)自己新記録

山口賢助(文3=鹿児島・鶴丸)28分20秒40(5着)自己新記録

鈴木創士(スポ2=静岡・浜松日体)28分40秒24(11着)自己新記録

菖蒲敦司(スポ1=山口・西京)29分07秒07(17着)

北村光(スポ1=群馬・樹徳)30分03秒16(20着)

太田直希(スポ3=静岡・浜松日体)途中棄権

中谷雄飛(スポ3=長野・佐久長聖)途中棄権

コメント

宍倉健浩(スポ4=東京・早実)

――レースプランを教えてください

5キロを14分10秒で通過して、残り5キロは周りとの勝負というつもりでした。自分がどこまで400メートルを68秒前後のペースで粘れるかということを考えて走っていました。

――タイムや順位など目標は

9月の段階で、この記録会で最低限28分30秒を出すというところを目標にしていました。ラストあそこまでペースが上がるとは正直思っていなかったです。

――教育実習が終わって調子は戻りましたか

教育実習中の3週間は自分のためだけの練習、周りに合わせること無く自分が今必要なことを考えて練習出来たので、実習前よりもむしろ状態は良くて5000メートルでも自己ベストを出せました。実習自体の疲労も今は抜けたので、それで今日いいタイムが出たのかなと思います。

――自分のための練習とはどのようなことでしたか

自分の中で、400メートルを68秒というペースが大事になってくると考えていました。なので68秒をいかに力まず楽に走るかということであったり、厚底の靴を履くので、上手くカーボンの反発をもらえるような走りということを考えながらジョグであったり練習をしていました。

――井川選手がスパートをかけた際、一度前と間が空きました

特に考えずに後ろについていたので、いかれたときは少し出遅れたのですが、そこで一気にペースを上げてしまうと足が固まってしまうと考えたので、いかれたらいかれたで一旦冷静になって、徐々にペースを上げて追いついていこうと考えていました。ですがやはり最後は追いつけなくて。なので、あの場面は失敗したなという感じです。

――タイムをどのように受け止めていますか

現段階では合格点を出していいかなと思っています。自分は練習をしっかりと再開出来たのが9月に入るか入らないかという時期だったので、まだまだこれから1ヶ月箱根に向けて状態は上げられますし、まだまだ伸ばせる部分は色々あるので、現段階では合格ですが箱根ではもう一段階レベルアップした状態でスタート地点に立ちたいです。

――自己ベストが出ている選手が多いですが、4年生として今のチーム状況をどう捉えていますか

競技自体のレベルは上がってきていて、いい感じで競争力も出てきていると思います。あとはチーム全員が箱根で3位を狙うという気持ちを持つことが大事なのではないかと思います。

――強化していきたい部分は

目先の箱根に関しては、もう一段階体力的な部分を強化していきたいということがあります。今までは5000メートル、1万メートルを考えて練習をしてきたので、ここから1ヶ月はしっかりと体力の面で、20キロに対応できるような走りが出来るようにしていきたいということが1つです。もう1つは、今年のレースは絶対にハイペースで進むと思うので、そこに対応する走りです。突っ込んで入って、そのまま押し切るというタフなレースが出来るようにしたいと思っています。

半澤黎斗(スポ3=福島・学法石川)

――調子はいかがでしたか

この1週間授業や実習が入っていて練習ができていなかったので、本当は3組目に行ってタイムを狙いたかったのですが、1つ組を下げて1番手でしっかり走り切るようにプランを立てていました。

――タイムや順位など具体的に目標はありましたか

5000メートルを過ぎるまでは結構きつかったのですが、後半はタイムを狙えることが分かっていたので先頭に出てレースを進めました。その中で最後勝ち切れなかったり、あと数秒で28分台が出るところを出し切れなかったりというのは、弱いところだなと思いました。

――ラストスパートで追い上げた場面もありましたが振り返っていかがでしたか

本当はラスト1キロと600メートルでギアを上げていきたかったのですが、途中余計な力を使ってしまったのもあってなかなかうまく切り替えられなかったです。最後目の前の選手を抜くというのはチームとして監督からいつも言われていることなので、最低限やったかなというところです。

――余計な力を使ったというのは具体的にどのような辺りですか

先頭に出て引っ張ったところをもう少しパッと切り替えられれば後ろの集団を離せたと思うのですが、少しだらだらいってしまったのでそこですね。

――箱根駅伝の集中練習に向けて意気込みは

3年目なので自分の練習もチームの雰囲気、3位以内を目指すためのチーム作りを一緒にしていくのを意識していくのと、平地だけでなく6区も想定した準備があるので、そこも同時進行で進めていければいいかなと思います。

山口賢助(文3=鹿児島・鶴丸)

――調子はいかがでしたか

自分の感覚としては前の記録会の方が体の感じは良かったのですが、コンディションがかなり良く、涼しくて風もなかったので走りやすかったおかげかなと思います。

――タイムや順位の目標は設定していましたか

速い選手がたくさん集まる中だったのですが、しっかり組でトップを狙うという気持ちを持って走っていました。中谷と太田が5000メートルを14分10秒で引っ張ってくれるとのことだったので、そのままうまく流れに乗って28分30(秒)が切れればいいかなと思っていたんですけど、それよりも10秒くらい速く走れて良かったです。

――序盤からペースメーカーの後ろに位置取る積極的な走りでしたが、そこについてはいかがでしたか

後ろでついて走るよりは先頭に近いくらいのフロントの位置での走りが自分には合ってるという感覚がありました。今日もいつも通り前の方でレースを進めようと思って走りました。

――中盤で井川選手の仕掛けに応じることもありましたが、その時の心境はいかがでしたか

井川が一回前に出てくれた時は自分もかなり余裕があり、井川は後輩なので引っ張らせるわけにも行かなかったので思い切って前に出ました。

――最後はスパート合戦となりましたが

僕は本当にラストのスプリント力、短距離のスピードを一番の課題としていて、9000メートル過ぎくらいまでは結構余力があって、スパートをかけられるくらいだったんですけど、本当に最後の最後でのスピードがまだ自分には足りていなかったので、あそこは負ける形になってしまいました。そこが自分のウィークポイントなので、今後もっと改善していかないといけないですね。

――改めてレース全体を振り返って、どんな収穫や課題が見つかりましたか

中盤では本当に誰にも負けないくらいの余裕度を持って走れたと思うので、20キロとか箱根の長い距離になったら対等なだけではなく自分も勝ち切れるくらいの自信がついたレースになりました。課題はラスト400メートルで負けてしまったことですね。

――今後は箱根駅伝をはじめ長い距離が中心となり、その前には集中練習も控えています。これからの意気込みをお願いします

まず集中練習については、太田と中谷が12月の日本選手権で抜ける部分があるので、自分が上級生としてチームのメンバーを引っ張って行きたいです。今年の箱根で優勝できるメンバーが揃っていることが今日のレースで確信できたので優勝だけ目指して、自分としてはどこを任されるか分からないんですけど、しっかり区間賞を獲って優勝に貢献したいと思ってます。

井川龍人(スポ2=熊本・九州学院)

――レースの目標は

28分15秒くらいを目指して走っていました。

――最近の調子はいかがですか

全日本(全日本大学駅伝対校選手権)の後から上がってはきていたので、いけるかなと。練習からも手応えはありました。

――タイムについてどう評価しますか

目標にしていた(28分)20秒を切ることができてよかったと思います。

――8000メートル手前でペースアップして先頭に立ちましたが、狙いは

(集団のペースが)すごく楽だったので、行かないともったいないなと思ったので(前に)出ました。

――練習ではどんな点を強化していたのでしょうか

距離に慣れるために一日30キロ以上は走るようにしています。夏合宿が終わったあたりから少しずつ、駅伝シーズンを見据えてやってきました。

――これから箱根に向けてどう調子を上げていきたいですか

まず30キロ以上走るのを継続していって、できれば一日で35キロ近く走れるようにしたいです。またポイント練習などで時差スタートすることによって駅伝を意識して最初突っ込んで走れるようにしたいなと思います。昨年は22キロくらいだったのでそれと比べても全然増えています。

――どのような経緯で増やすことになったのでしょうか

自分で決めました。独自の練習というかたちです。あとは1年の栁本(匡哉・スポ1=愛知・豊川)も一緒にやっているので、自分が休もうかなと思っても(栁本が)走ってしまうので負けられないなと思って走りますね。

佐藤航希(スポ1=宮崎日大)

――初の1万メートルでしたが、目標は

初めての1万メートルでしたし、そこまでタイムを狙える組ではないと思っていたので、レースの流れや最後に勝ち切るということを意識して走っていました。

――実際にその狙い通りのレースになりましたが、スパートのタイミングなどは事前のプラン通りでしたか

タイミングは流れ次第だと思っていました。5000メートル過ぎてからいくプランも、残り1キロ切ってからいくプランもあった中で、結果的に1番自分が自信を持っているラスト勝負になったので、最後勝ち切れて良かったと思います。

――きょうの走りについてどう評価しますか

終始ペースの上げ下げがあったのですが、集団の後方で様子を見ながら走りました。途中足をひねるアクシデントがあったのですが、駒野さん(駒野亮太長距離コーチ・平20教卒=東京・早実)に声を掛けていただいて、それもトラックレースではよくあることだというように冷静に捉えて走ることができました。

――好タイムを持つ選手が多くいますが、その中で今後箱根に向けてどのような意気込みで取り組んでいきますか

大学入学以降同期や先輩方の活躍に自分も刺激を受けてきたので、もし集中練習に参加できるようであれば先輩方の背中を追いかけて練習をこなしていきたいと思います。課題を一つ一つクリアしていくことが箱根に向けてやるべきことなのかなと思います。

菖蒲敦司(スポ1=山口・西京)

――調子はいかがでしたか

先輩方が好タイムを出していたのですが、それと同じくらいの練習ができていたので、結構調子がいい状態で臨めたと思います。

――具体的にどれくらいのタイムを想定していましたか

目標タイムは設けず、思い切り行こうということだけを考えていました。全日本では思い切り走れずに後悔した部分があったので、突っ込んでそのまま押し続けるということだけを意識していて、5キロ14分10秒で突っ込むということだったので、できるだけそれを維持していこうと考えていました。

――中盤で集団から離れましたが、その点について振り返って

積極的に行った分どこかでボロが出るということは分かっていて、そこからどれだけ粘れるかが勝負だと思っていました。

――終盤の粘りについてはどう評価しますか

最低でも28分台という思いでいたので、それができなかったのは練習不足かなと思います。

――強い選手がそろっていますが、箱根出走に向けて特に強化していきたい点は

強い選手だらけで選考に引っかかるかどうかわからないのですが、彼らと同じような練習ができればそれなりに結果が付いてくると思うので、練習の段階から競争と思って頑張っていきたいと思います。

栁本匡哉(スポ1=愛知・豊川)

――今日の調子はいかがでしたか

良かったと思います。

――レースの目標はどういったものでしたか

タイムはそこまで気にしていなくて、初めての1万(メートル)で先頭だったので、できる限り先頭集団に食らいついて、先頭集団で終わることが自分の中の目標でした。ちょっと離れてしまったんですが、合格ラインではあると思います。

――レースプランはどのようなものだったのでしょうか

全体で前半の5000メートルは突っ込んで、後半の5000メートルは我慢するというプランでこのレースに挑んでいるので、そのプランで自分もいって、後半の5000メートルでどれだけ粘れるかは自分でチャレンジしていた部分です。

――後半の5000メートル振り返っていかがでしたか

そこまで大きくペースが落ちることもなく、同じペースでずっと行けたので最低限粘れたと思います。

――7000メートルくらいで集団がバラけましたが、前の集団についていたのは何か意識されていましたか

7000メートルくらいでは自分の中で余力があったのでついていたのですが、そのあと上がった時に、つけなかったのが自分の中の体力不足なのかなと思います。

――初めての1万メートルでしたが今日のご自身のタイムを振り返っていかがですか

(29分)20秒をきりたいと思っていたのでそれを達成できたのは良かったと思います。

――集中練習が始まりますが意気込みをお聞かせください

とりあえずけがすることなくしっかり練習を積んで、今自分は箱根のメンバーのボーダーラインにいるのでまずはメンバー入りして本戦走れるように準備していきたいと思います。