前半に関して言えば、攻勢に試合を進める時間を作ることができた。その間には、いくつかのチャンスも作り出している。 だが、…
前半に関して言えば、攻勢に試合を進める時間を作ることができた。その間には、いくつかのチャンスも作り出している。
だが、勝利への淡い期待が生まれたのも束の間、後半の日本は、あまりに脆かった。
満足に敵陣に入ることさえできず、防戦を強いられ、わずか6分間で立て続けに2失点。その後も反撃の糸口すら見つけられないまま、メキシコに0-2で敗れた。
大差をつけられたわけではないとはいえ、前半は勝てそうな内容だった分、ある意味でショックが大きい結果だった。
原口元気が、2年前のワールドカップでベルギーに2-3と逆転負けした試合を引き合いに、「フラッシュバックした。正直、またかという感じ」と言うのもうなずける。
とはいえ、相手は日本より明らかに実力上位のメキシコだ。吉田麻也の言葉を借りれば、「ポット2に入る可能性が高いチーム」である。
ポット2とは、いわば第2シードのこと。ワールドカップの組み合わせ抽選では、グループごとに実力の偏りがないよう、まずは出場全32カ国を実力順に4つのポットに分け、各ポットから1カ国ずつで、ひとつのグループが構成されるように抽選が行なわれる。その上から2番目のポットが、吉田の言う「ポット2」だ。
つまりは、順当ならベスト16に進める力を持っており、さらにはベスト8以上を狙おうかという位置にいることを表している。
一方の日本は、前回の2018年ロシア大会で言えば、ポット4。その差は大きく、日本が勝てば番狂わせ。今回の敗戦は、実力どおりの妥当な結果だったと言っていい。
それを考えると、少々ショッキングな敗戦も、過度に悲観する試合ではなかったのではないだろうか。
試合序盤、メキシコは高い位置からプレッシャーをかけてきた。日本はこれに苦しみ、なかなか前にボールを運ぶことができなかった。
だが、前半10分を過ぎたあたりから、日本はメキシコのプレスをはがせるようになった。

劣勢のなかでもチャンスを生み出していた伊東純也
特に15分の鈴木武蔵のシュートにつながったシーンや、28分に伊東純也がクロスを入れたシーンなどは、柴崎岳と遠藤航のダブルボランチが、ときに縦に、ときに横に互いのポジションを取りながら、タイミングのいい縦パスを出すことで生まれたチャンスだった。
結果的に、そこでのチャンスを生かせず、日本は強烈なしっぺ返しを食うことにはなった。だが、前半の戦い方は決して悪くなかった。そこでのチャンスで得点できていれば、試合は異なる展開を見せていたに違いない。
もちろん、「後半が本当のメキシコのレベル」(吉田)だろう。
だが、番狂わせを狙う日本にとっては、いかに相手のスキや油断をつくかが勝負であり、"本当のメキシコ"が相手になれば、勝ち目が薄くなることは承知のうえである。
吉田は、日本がベスト8に進出するためには「ポット2に確実に勝って、ポット1にどれだけ戦えるかがカギになる」としたうえで、「わかっていたことだが、ここらへん(ポット2のチーム)に確実に勝つ力は、自分たちにはまだまだないと感じた」と話しているとおりだ。
そもそもポット2に確実に勝てる力があるくらいなら、日本がポット2に入れることになってしまう。
2年後のワールドカップでベスト8を目指すとは言っても、本番までにベスト8が当たり前の実力を身につけるのは難しく、一発勝負で"ワンチャン"を狙う。残念ながら、それが現状における日本のベスト8進出計画だ。
だとすれば、この試合の内容が持つ意味も変わってくる。
日本はノーゴールで敗れはしたが、守備に追われっぱなしのなかで、たまたま作れたチャンスを悔やんでいるわけではない。テンポのいいパスワークから狙いとする形を何度か作り、メキシコゴールを脅かした。それらは、わずかながらでも"ワンチャン"の可能性を高める要素に他ならない。
もちろん、原口が言うように、「僕らがイケると思ったときに、メキシコは修正してきたが、僕らは苦しい時間になって修正力を出せなかった」のは確かである。しかし、"本当のメキシコ"には歯が立たなかったからといって、前半の戦いまで評価を下げる必要はない。それはそれで、現状での両者の実力差を認めたうえでの、確かな収穫である。
加えて、10月の2試合も含めた一連の強化試合で、新たな戦力が台頭してきたことも収穫と言っていいだろう。
世代のサイクルで言えば、2年後のワールドカップでは、いわゆるリオ世代がチームの主力になることを期待されている。そんななか、遠藤を筆頭に、鈴木、鎌田大地ら、まさにリオ世代の選手たちが所属クラブでの活躍をベースに、日本代表でも従来の序列を確実に崩し始めた。
彼らにしても、まだまだ絶対的な地位を築いているわけではないが、それでも1年前の日本代表と比べれば、かなりポジティブな変化である。
ポット4の国らしく力不足は認めたうえで、この敗戦をもう少し前向きに捉えたい。