秋の大一番である伝統の早慶戦が、今年はアウェーの慶大レンジにて行われた。男女ともに連覇の数字を伸ばしたい早大だったが、結果は男女で明暗が分かれるかたちに。男子は前半をリードして折り返すものの、後半に勢いを増す慶大に対して伸び悩み、敗北を喫…

 秋の大一番である伝統の早慶戦が、今年はアウェーの慶大レンジにて行われた。男女ともに連覇の数字を伸ばしたい早大だったが、結果は男女で明暗が分かれるかたちに。男子は前半をリードして折り返すものの、後半に勢いを増す慶大に対して伸び悩み、敗北を喫した。一方の女子は、序盤から大きく点差を広げ、慶大を全く寄せ付けることなく勝利。早慶戦6連覇を果たした。

 

 感染症の影響を受け、射場に大幅な人数制限がかけられ無声試合となるなど、例年とは異なる様相であった今回の一戦。だが早大の雰囲気は変わらず、チーム全体で盛り上げていこうという意識が見られた。男子は天候に恵まれ風もなく射ちやすい環境の中、3連覇を目指し臨んだ。序盤は早大がリードする展開。市川遼治(スポ4=群馬・高崎商大付)が「楽に射てるということだけに集中してできた」と安定した点数でチームを引っ張り、それに田邉正騎主将(教3=東京・早稲田)や浦田大輔(基理2=東京・早大学院)、中野勇斗(商2=東京・早大学院)らが続く。しかし徐々に点数を縮められ、前半は1点差で折り返す。このままなんとか逃げ切りたい早大であったが、後半第1エンドでついに逆転されてしまう。「仲間が当ててくれてるから、自分の一射一射に集中して次に臨もう」という遠藤宏之監督(平4政経卒=東京・早大学院)の言葉もあり、点数が出ない選手も切り替えてそれぞれの行射に臨む。だが、複数の選手が50点台後半を出すなど勢いを増す慶大に対し、早大は波に乗り切れない。最終的には合計51点差で苦汁をなめる結果となった。

 


浦田(写真左)と中野は市川に次ぐ点数でチームに貢献した

 

 午後からの試合となった女子も、終始明るい雰囲気の中試合を進めた。全日本学生王座決定戦(王座)で準優勝となったメンバーの中村美優主将(スポ3=北海道・旭川北)、矢原七海(スポ2=福岡・柏陵)、髙見愛佳(スポ1=東京・足立新田)全員を擁する早大は圧倒的に有利。その見込み通り、第1エンドから慶大を大きく引き離し、前半は144点差でリードする。中盤は強い日差しが暑くも感じられ、的の見え方に影響したり、風も時折強まったりするなど、男子よりも細かな対応力が必要とされた。だが早大の勢いは衰えない。「全然緊張せず、すごく楽しんで臨めた」と前後半を通して絶好調であった中村主将の活躍もあり、後半終了時には280点もの大差をつけて慶大をひとひねり。余裕の白星で、連覇の数字を6に伸ばした。

 


658点を記録し、好調をうかがわせた中村主将

 

 今年度はリーグ戦がなくなったため、数少ないエイト戦の一つとなり、かつその最後の機会であった。結果としては男女で明暗が分かれたが、「ベストメンバーを集められなかったことで(中略)少し点数を欠いてしまった」(中村主将)と女子も勝ち方に満足はしていない。個々の力の向上が必須であることを実感し、男女とも関東学生リーグ戦(リーグ戦)での戦い方を今一度考え直す場となった。だが、男子の悔しい敗戦も、女子の目標点数に届かなかった事実も、今後飛躍するための好機となったことは間違いない。ここから厳しい冬も乗り越え、春にはきっとリーグ戦で勝利の花を咲かせてくれることだろう。

 

(記事、写真 朝岡里奈)

結果

▽男子

●早大3625-3676慶大


▽女子

〇早大2439-2159慶大

コメント

遠藤宏之監督(平4政経卒=東京・早大学院)

――全体の成績を振り返ってどのように評価しますか

男子については、勝てなかった。前半はわずか1点ながらもリードしていたのに、後半相手に上回られた。決してこっちが崩れたというわけではなく、相手が非常に良かったという形ではありましたけれども、やっぱり差を感じました。課題ですよね。良い意味で、我々はもっとやれるはずという伸びしろというのを感じたし、そこまで絶対いかなきゃいけない。特に4年生の市川君は来年にはいないわけで、それを考えて1から3年を踏まえるともっと点差がついていますので、もうひと頑張り地力を上げなきゃいけないですね。女子については、競技、点数という意味では良い内容だった、快勝だったと思います。その上で監督としての欲を言えば、上3人がスポーツ推薦のメンバーで固めていて、4番目以下はそうではなく一般で入ってきてアーチェリーを始めた、続けた子たちでした。そこの層のもう一伸び、実はそういった競技経歴、属性で慶応の選手たちと比べると、例えばフォームだとかちょっとした立ち振る舞いみたいなものが僕目線で見ていると相手の方が技術的に高いレベルなんですよ。はじめから高いレベルで完成した選手たちの頑張りだけではなくて、すべてのレベルの選手がもっと伸びていくように、育成だとか技術的なクオリティだとかを我々がもっと改善しなければいけないなと。女子が非常に高いレベルにいるのは事実です。今年王座で準優勝しているわけですし、来年も相応の実力者が入ってくることが予定されています。でも、誰か一人でももしけがをしたら。4番手以下の子たちのレベルアップ、さらには全体の技術的な育成や指導というところをやっていかなきゃいけないなという感じです。 

――今のチームの雰囲気は、監督から見てどのように感じていますか

雰囲気は非常に良い状態だと思います。男子も女子も王座で結果を出していますし、そういう成功体験だとか「やれるんだ」という強い気持ちを持てている状態だと思います。けれども、女子は3年生以下で結果を出して今に至っていますが、男子については4年生の力もあっての結果であって、そのところを冷静に、シビアに見なければいけない。雰囲気は良い。けれども一歩間違えると、油断という言葉に繋がるんですかね。緩まない、手綱を締めていく必要があると思います。男子はそれでも、例えばフォームの改善であるとかトレーニングであるとか、3年生以下で意識を改革する言葉や行動が見えていますので、そういうことも少し織り込んで評価すれば、監督としては楽しみです。彼らなりに頑張ろうとしている良いチームだと思います。あまり正面から言っちゃうと彼ら緩んじゃうんですけど(笑)。油断はしてほしくないが、だめだとは思っていない。ここまで真摯に競技やチームに対しての行動があるのかと感心するような、チームの核になってほしいという子もいますので、期待値込みで楽しみに思っています。

市川遼治(スポ4=群馬・高崎商大付)

――今日の結果を振り返っていかがですか

インカレ(全日本学生個人選手権)、王座が終わってから引退した4年生らしい練習量になり、体力も落ちている中で前ほどそんなに安定した点数が出ていなかったので、そういった点では久々の試合の中ではまあまあの出来かなと思っています。

――要因となったのは

全日(全日本選手権)前は調整が利かず予選敗退してしまって、この早慶戦が最後の試合だなと思っていたので、早慶戦はしっかり調整しようと思って、頑張って練習量も増やしました。一番良かった点としては、下手にプライドを持たないというか、現状の自分に合わせた弓の調整等をして、楽に射てるということだけに集中してやっていけたことです。最後まで自分らしく射てた良い要因だったのではないかなと思います。

――全日本選手権の時は肩の痛みがありましたが、その後大丈夫でしたか

この練習量じゃ痛くなっちゃうなと思ったので、弓の重さも引く重さも両方軽くしました。引退した4年生らしい軽さの弓が出来上がったかなと(笑)。

――早慶戦には4年連続で出場されましたが、何か思い入れはありましたか

もちろん早慶戦は非常に特別で、単なる定期戦ではなくて伝統のある試合だったので、勝ちに行くべき試合として毎年毎年臨んでいます。ただ今年に関しては、(大学において)最後だからというよりかは、リーグ戦等が中止になってエイト戦ができる機会がなくなった中での試合ということで、最後のエイト戦が早慶戦というかたちになりました。自分としては最後に楽しく終われたので、満足しています。

――引退されてからも新しいチームにいることで、チームの印象や雰囲気の変化は感じますか

全体で集まって練習するときに僕はあまり行けていないので、全体の雰囲気はあまりつかめていないのですが、平日の所沢キャンパスでの練習では、個人個人で見ると、3年生が幹部になって「自分が何とかしよう」という思いからか、1年生や2年生と比べるとやはり一人一人が成長しているなとは思いますね。

田邉正騎主将(教3=東京・早稲田)

――チームとしての今日の目標点数は

6人で3690点、アベレージにすると615点と考えていました。

――結果は3625点となりましたが、評価はいかがですか

3690点が達成できるかは少し怪しいところがあって、なるべく高い目標をということで覚悟はしていたんですけれど、出せない数字ではないと思っていたので、少し満足のいかない結果にはなりました。

――その要因は

全体的にバランスが取れなかったところで、当たっている人当たっていない人というのがあったのかなとは思います。自分たち第60代の目標として、チームの底上げも考えていたんですけれども、そこがうまく作用していなかったのかなと反省しています。

――個人として試合を振り返っていかがですか

緊張は少ししたんですけれど、とにかく自分らしくということを考えて、結果的に前半は良いかたちになりました。後半では少し伸び悩んでしまったので、そこが自分の課題点としてまだまだ残るのかなと思います。

――後半伸び悩んだというのは

自分の中でもよく分からないんですけれども、そこをしっかりと突き詰めていくことで、さらに得点力のある選手になれるのかなと思います。

――チームとして、前半はリードするかたちとなりましたが

優勢だったというのは全員分かっていたとは思うんですけれど、その流れをなかなか持っていくことができず、少し足踏みしてしまう状態になっていたのかなと思うので、そこをいかにスムーズに加速できるのかというところが今後の課題になると思います。

――チームの雰囲気は良かったように感じました

全体的に余裕を持つようにということと、アイコンタクトを取るということを目標に掲げていました。それらがうまく作用したのではないかなと思います。

――アイコンタクトというのは

射っている最中も、円陣などの休憩中もですね。全員で補い合えるように、緊張していたり余裕がなかったりする選手に対しても、いろんな人が話しかけられるようにということでアイコンタクトを重要視していました。

――早慶戦に対して特別な意識はありましたか

やっぱり伝統のある戦いということで、しっかり勝利を掴みに行こうと思っていたんですけれども、まだまだ練習不足な面もあったのかなと。チームとしての課題が残る一方で、弾みとなる重要な一敗でもあると思うので、ここからさらに飛躍できるように頑張っていけたらなと思います。

――最後に、リーグ戦に向けて一言お願いします

リーグ戦はショートハーフになります。形は違えど、期間を設けてしっかり各々の目標を解決した上で、万全の状態で臨んでいけたらなと思います。

中野勇斗(商2=東京・早大学院)

――今日に向けてどのように調整をしてきましたか

70メートルになったので、苦手だったというのもあってただひたすら70メートルを射っていました。あと、平日はいっぱい点取りをして、高得点に慣れるという趣旨で練習していました。

――いつ頃から70メートルの練習をされていたのですか

2週間前くらい、早立戦が終わってからですね。

――今日のご自身の出来を振り返っていかがですか

最初は緊張していた部分もあって体が硬かったんですが、徐々に慣れてきて、良くも悪くも自分らしい点数が出たなという感じです。最近練習では調子よく射てていた部分もあったので、もうちょっと点数が欲しかったなというのが正直な感想です。

――チームの結果としてはいかがですか

僕とか浦田(大輔、基理2=東京・早大学院)とかがもうちょっと点数を出していれば勝てたような状況だったので、そこは責任を感じていますし、これからのリーグ戦とかはチームを引っ張る存在になれたらいいなと思っています。今日は市川先輩が点数的にもすごく引っ張ってくれたので、市川先輩の代わりのような存在になれるように、とにかく点数を求めてもっともっと練習していきたいなと思います。

――今日でアウトドアの試合は終わりとなり、これからはインドアに移行します。インドアに向けて意気込みをお願いします

去年はインカレインドア(全日本学生室内個人選手権)に出れたんですが予選落ちしちゃったので、2日目の決勝に残るというのを目標に。インカレインドアに出れただけで満足せずに、得意競技でもあるのでそれなりの結果を残せるように頑張りたいなと思います。

中村美優主将(スポ3=北海道・旭川北)

――チームの結果を振り返っていかがですか

チームの目標としては、ベストメンバーがそろわない中ではありましたが2480点を目標にしていたので、少し届かない結果にはなったかなと思います。

――その要因としては何が考えられるでしょうか

やっぱりベストメンバーを集められなかったことで、私自身は点数は悪くなかったと感じていますが、全体を下から支える高木とかがいなかったのでそのあたりで少し点数を欠いてしまったのと、射場が風が吹いたりまぶしくてとても射ちにくい環境だったので、みんな少し苦戦しながら臨んだのかなと思います。

――その中で個人の結果としては658点でした

よかったです。全然緊張せず、すごく楽しんで臨めたかなと思います。結果に満足はしています。午前の男子で市川先輩が1位で、その点数を抜こうと思って臨んだので、抜けてよかったです(笑)。

――個人的な目標は設定していましたか

そうですね、チームの2480点を達成するために私は640点は最低でも射とうと思っていたんですが、それが思ったよりも順調にいけてよかったかなと思います。

――風、まぶしさについて中村さん自身は感じましたか

風はすごく強いわけではなかったので、たしかに気になる時もあったんですが選んで射てたかなと思います。

――早慶戦でしたが、伝統ある一戦に何か特別な思いは感じていましたか

そうですね、伝統の早慶戦だからこそ絶対に負けちゃいけない一戦だと円陣でもみんなに言って臨みましたし、今年のエイト戦の射ち終わりでもあったので、最後にみんなで楽しんで終わろうというのは意識していました。

――たしかにとても良い雰囲気でした

そうですね。(人数は)少なかったですが楽しかったです。

――今回は無声での試合となりました

無声での試合を私自身も大学に入って2、3回しかしたことがなかったので、アウェー戦でしたし戸惑いもありましたが、後輩が前日からすごく準備してくれたり協力的に動いてくれたので私としては困らずに、みんな頼もしいなと思っていました。

――最後に、チームとしてここから強化していきたい点はありますか

今日は雰囲気も点数も負けていたとは思っていなくて、特に早稲田の女子は雰囲気がいいチームだと思っているので、技術も少し差はあれど悪くないかなと思っています。でもやっぱり風を読む力と対応力だったり、一定の時間の中でも早く射つという、様々な環境に適応するための能力を冬で個人の時間に入る中で磨いて、最後のリーグ戦や王座に向かえたらいいかなと思います。

矢原七海(スポ2=福岡・柏陵)

――チームの結果を振り返っていかがですか

280点くらい差がついていたらしいので、その面は良かったと思います。やっぱり人数も少なかったし、いろんな不安があったんですが、すごく早稲田らしい試合ができたんじゃないかと思います。いい雰囲気の中でできました。

――今日の個人としての目標は何でしたか

全日からフォームを新しく変えている最中で、そのフォームをなるべく試合で出そうというのが目標でした。なので点数というよりかはフォームに重きを置いて試合に臨みました。

――どのような部分を変えられたのですか

弓を持つ方の手を深く入れたり、最後矢を離す時の押し方を今変えています。

――たしかに、射つ前に弓を何度も持ち直している様子が見られました

そうですね、最初はいつもと違うので何度も持ち直してしまうのが多いかなと思います。そこで少しリズムが崩れたり、最後まで(射線に)残ってしまうというのがあったんですが、今回の試合はそれが目標だったので、焦らず射てて、目標としていたフォームも7割くらいはできたんじゃないかなと思います。

――点数も悪くなかったのでは

前半は320点でけっこう良くてびっくりしました。最近の平日の練習でも290点から300点くらいしか射てていなかったので点数よりもフォームを意識して臨んだんですが、前半でけっこう点数が出たので、嬉しかったです。でも後半の入りで、みんな同じ状況なんですが夕日がまぶしかったりして、そこでちゃんと射てなかったというのがありました。でもそのエンドも自分の中でちゃんと無駄にせず、失敗の仕方が分かったエンドにはなったので良かったかなと思います。切り替えられました。

――では今回の試合は収穫の大きい試合でしたか

そうですね。フォームの面ですごく収穫が大きかったです。

――風の影響は感じましたか

監督もおっしゃってたように息継ぎのする風だったので、ない時もあって、そこをちゃんと見極められたかなと思います。

――最後に、インドアシーズンの目標をお願いします

インドアはインカレはもちろんですが、全日本選手権は出たことがないので、今年は絶対に行きたいなと思います。でも冬にフォームの質などを高める時期だと思っているので、フォーム調整と点数のバランスをしっかり取りながら頑張っていきたいと思います。