東日本選手権フリーを滑る佐藤駿 佐藤駿は10月上旬の関東選手権では鍵山優真に90点近い大差で敗れたが、その結果を冷静に受け止めていた。「ショート・プログラム(SP)でかなりミスをして、フリーも最初のジャンプから立て直せなかった。でも、そこか…



東日本選手権フリーを滑る佐藤駿

 佐藤駿は10月上旬の関東選手権では鍵山優真に90点近い大差で敗れたが、その結果を冷静に受け止めていた。

「ショート・プログラム(SP)でかなりミスをして、フリーも最初のジャンプから立て直せなかった。でも、そこから上げていくだけだし、東日本(選手権)までには直そうと思ってやってきました」

 11月6、7両日の東日本選手権男子シングルでは、まだ「道半ば」という状態ながら、落ち着いた滑りをした。

 今季、佐藤は表現力の向上をとくに意識している。プログラムはSPの『パイレーツ・オブ・カリビアン』とフリーの『バトル・オブ・ザ・キングス』で、ともにブノワ・リショー氏の振り付け。技と技のつなぎなどが難しくなっているが、この大会でもその振り付けを丁寧に滑る姿勢を常に見せていた。

 SPは苦手意識を持っているという1番滑走だったが、「すごく集中して、落ち着いてできた」と話す。2本目の4回転ルッツこそ軸が動き、アンダーローテーション(4分の1回転以上、2分の1回転未満の回転不足)で転倒したが、4回転トーループ+3回転トーループをしっかり決め、フライング・キャメル・スピンもレベル4とすると、トリプルアクセルはきれいに降りて2.24点の加点をもらう出来だった。ステップシークエンスは、少しキレを欠く滑りでレベル2と取りこぼしたが、81.84点を獲得。ミスが続いた鍵山に10.12点差をつける首位発進をした。

「関東選手権の後はSPの曲かけ練習もたくさん行ない、ノーミスの演技ができるようになっていたので自信を持って臨めました。4回転ルッツでミスをして課題は残りましたが、トリプルアクセルで立て直せてよかった。これまでは6分間練習でルッツを跳ぶことはまったくなかったけれど、今回は跳べたので少し成長できたと思います」



SP演技の佐藤。4回転ルッツに課題が残った

 佐藤を指導する日下匡力(ただお)コーチは、SP前日から公式練習や6分間練習の組み立てを変えることを意識し、時間配分について指示を出していたという。「特に6分間練習で4回転ルッツにトライするために、他のジャンプをいかにコンパクトにするかを意識して組み立てました」と日下コーチは話す。その新たな試みに、佐藤は手応えを感じていた。

 翌日のフリーは、6分間練習できっちり決めていた4回転ルッツがオーバーターンになってしまったが、佐藤としては「ルッツの調子はよかった。オーバーターンになったけれど、かなりいい形で跳べた」と納得するものだった。しかし、次の4回転サルコウはアンダーローテーションで転倒。3本目の4回転トーループはしっかり着氷したが、その直後にスリップして転ぶ、思わぬ失敗になった。「自分でも降りることができたと思ったので安心してしまった」と振り返る。

 それでもその後の4回転トーループに2回転トーループを付けて立て直すと、後半のトリプルアクセル2本は連続ジャンプも含めてしっかり決めた。最後の3回転フリップからの3連続ジャンプは、1つ目のジャンプの着氷が乱れ、次のオイラーはダウングレード、3つ目のサルコウは2回転になった。「フリーも練習ではノーミスの演技ができていたが、本番は後半がきつかったので、もっと滑り込まなければいけない」と、佐藤は反省を口にした。

 フリーも1位の147.34点を獲得し、合計229.18点で優勝。だが、納得できる結果ではなかった。佐藤は先を見据えてこう話した。

「一番の収穫は、このプログラム(の出来)が関東選手権の時に比べてよくなっていると思えたこと。後半でトリプルアクセルを2本決められたので進歩したところだと思う。あとは前半をまとめていくだけです。(11月下旬の)NHK杯までに自分に合ったプログラムになるように、練習を頑張りたいです」

 関東選手権からの表現面での進歩については、「自分では実感があまりないが、去年までは『ジャンプ、ジャンプ』という意識だったが、今はジャンプ以外にも目がいくようになってきているので、そういった練習をさらに積み上げていきたいです」と話す。

 日下コーチは「東日本選手権までの課題として、ジャンプ以外に重点を置いてスピンをしっかりやってきたが、それが少し反映されている」と述べ、4回転ルッツなどのジャンプに関してこう続けた。

「練習では、単独の4回転ルッツの確率は上がっているから、プログラムの中でコースからの練習をしていけば、その(本番での)確率も上がるはず。トランジション(つなぎ)も含めて表現の向上も目指していますが、もう少し時間をかけて足のステップを使いながらジャンプを跳べるようになればいいと考えています。4回転を3種類入れると集中力も必要だけれど、これまではいい練習ができている。曲かけをもっと増やしてコースからのジャンプや、曲に合わせたスピンを重点的に練習していけたらいいと考えています」

 佐藤も日下コーチも実感しているのは、確実に成長しているということだ。229.08点という得点は、ジュニア・グランプリ・ファイナルで255.11点を出していることを考えれば少し物足りなさを感じるかもしれない。ただSPで2本、フリーで4本の4回転ジャンプのみならず、表現も意識する難しいプログラムに挑んでいる段階での結果だ。

 佐藤は東日本選手権で、一気にではなく、一歩一歩着実に成長していこうとする覚悟を見せていた。