西宮から和歌山に会場が変更となった全日本学生選手権(全日本インカレ)。各大学が総合優勝を目指し、しのぎを削る決戦は序盤から試合が動いた。初日は両クラスも1レースのみの開催だったが、スナイプ級の早大勢が1位から3位を独占するワンツースリーフ…

 西宮から和歌山に会場が変更となった全日本学生選手権(全日本インカレ)。各大学が総合優勝を目指し、しのぎを削る決戦は序盤から試合が動いた。初日は両クラスも1レースのみの開催だったが、スナイプ級の早大勢が1位から3位を独占するワンツースリーフィニッシュを決め、一気に総合トップに立つ。すると、470級でも最大50点あった1位の慶大との差を徐々に詰め、最後のレースで逆転に成功した。その結果、2年ぶりの王座奪還。それと同時に、6年ぶりの完全優勝でこの大会を締めくくった。

 不安定な風の中で開催された1日目。風が吹いたり止んだりを繰り返す難しいコンデションで行われた470級のレースは72艇中56艇がゴールにたどり着くことができない波乱の展開となった。だが、470チームは小泉凱皇(スポ3=山口・光)・金子俊輔(商2=埼玉・早大本庄)は惜しくもフィニッシュできなかったものの、西村宗至朗(社3=大阪・清風)・新井健伸(商3=東京・筑波大付)組が1位、倉橋直暉(スポ2=福岡・中村学園三陽)・松本健汰(政経3=東京・早大学院)組も3位となり、チーム全体として大きく崩れることはなかった。一方、スナイプチームは1上(※1)時点で3艇がトップ3に入る快走。最終的には尾道佳諭(スポ3=山口・光)・海老塚啓太(政経4=神奈川・鎌倉学園)がトップでレースを終えると、松尾虎太郎主将(スポ4=山口・光)・鶴岡由梨奈(社2=東京・立教女学院)が2位、蜂須賀晋之介(スポ3=茨城・霞ヶ浦)・芝崎鉄平(スポ3=東京・都立三鷹)が3位でフィニッシュ。一気に他大との差を広げ、最高のスタートダッシュを決めた。


レースに向かう蜂須賀・芝崎組(左)と谷川・海老塚組(右奥)

 2日目になっても早大は安定感のある走りを見せる。この日は4レースが行われたが、スナイプ級では3艇すべてがそれぞれのレースで1位を獲得する盤石なレース運びを披露。470級でも3レース目以外は倉橋・松本組が上位10艇の中に入り、完全優勝の可能性を残して3日目に進んだ。最終日となった3日目は470チームの追い上げが光る1日となった。この日の最初のレースである6レース目の1上(※1)時点では逆転は難しい状況だったが、そこから巻き返しを図り、470チームは1位の慶大との差を20点近く縮める好走を見せる。最後のレースとなった7レース目では小泉・金子組が首位。西村・新井組も4位に食い込み、一時は50点あった慶大との差を最終レースで逆転する劇的な結末となった。結果的には、早大は470級、スナイプ級、総合で優勝。早大としては日本一の座を2年ぶりに取り戻し、2014年以来となる完全優勝で有終の美を飾った。


校歌を斉唱するヨット部一同

 2年ぶりの王座奪回、そして6年ぶりの完全優勝を果たし、歓喜の渦に包まれた早大ヨット部。今回の勝因はチーム全体として、大きく崩したレースがなかったことだろう。各チームで安定した走りができたからこそ、総合優勝、そして最後の逆転劇は生まれたといっても過言ではないはずだ。これで4年生は11月末の全日本個人選手権(全日本個選)を残すのみとなり、部は新体制へと移行する。来年度のチームは今回、470級で出場した全ての選手が残り、スナイプチームも実力者を擁している。今後は今年の優勝を経験したメンバーを中心に、まずは2年連続の総合優勝。そしてさらなる連覇への期待は増すばかりだ。

(記事 足立優大、写真 早稲田大学ヨット部提供)


470級、スナイプ級、総合合わせて3つのトロフィーを獲得した!

※1 1周目の風上に設置されたマークを指す。

結果

▽470級

早大(小泉・金子/上園田明真海(スポ3=大分・別府翔青)組、西村・新井組、倉橋・松本組) 381点(1位)

▽スナイプ級

早大(松尾虎・鶴岡/川合大貴(商3=埼玉・早大本庄)組、蜂須賀・芝崎組、尾道/谷川隆治(商4=千葉・稲毛)・海老塚組) 172点(1位)

▽総合

早大 553点(1位)

コメント

関口功志監督(平18人卒=愛知・半田)

――優勝おめでとうございます。今のお気持ちを聞かせてください

率直に嬉しいです。今年はコロナによる自粛期間があり、思うような活動ができない中で学生が一生懸命知恵を絞って、行ってきた活動によってこういった成果が出たということを心から嬉しく思っています。

――1日目はスナイプ級で大きく他大学を突き放す結果となりましたが、試合前にはどういった話をされていましたか

試合前に3日間、事前の調整期間がある中でこの和歌山の海面の傾向、風の入り方、波の立ち方を確認しながらレース中に注意すべきポイントをチーム全員で共有していました。まさに本番でもそれが効いて、みんなが理解して実践できたことがあの結果につながったと思います。具体的には外側の風を取りにいって、それをキープすることであったり、内側に入らず最後のマークへのアプローチの仕方だったりを確認していて、それがシンプルにハマったなという印象を持っています。

――2日目はチーム全体として大きく崩れることなく走ることができていたと思うのですが、この点はどう捉えていましたか

個別で見ていくと、いいレースと悪いレースの繰り返しで、平均的に崩さなかったという形だと思っています。いいレース、悪いレースが出てくるのはどうしても全日本インカレ、特に和歌山は不安定なコンディションの中での戦いだったので、そこは織り込み済みでした。なので、各レースの結果に一喜一憂することなく、粛々と自分たちのやるべきことを徹底していくことに尽きるかなと思っています。あとは確認すべきポイント、注意すべきポイントは明確になっていたので、それを実践していくことを徹底させました。ですので、点数の差こそ違いますが、注意すべきことは一緒で何も変わらず、2日目も初日と同じつもりでいこうという話をして送り出していました。

――最終日の今日は470級で後半に追い上げるレースを見せ、6年ぶりの完全優勝を果たしました。振り返っていかがですか

まず、スナイプ級はスタートで他の大学がブラックフラッグにかかって、かなり楽な展開になったので、早稲田が同じようにフラッグを取らないことを注意して、安全第一でレース展開をしました。実際ぼちぼちの順位で帰ってこれて、これでほぼスナイプと総合優勝は決まりました。470は慶応に対してビハインドがあったのですが、今日の第6レースは慶応から大きく遅れる展開の中でレース中盤に逆転することができて、点差を詰めることができました。それは風が大きく変わったという幸運な面もあったのですが、事前の練習で今日のレース海面と同じ場所、同じ方向でしっかり傾向を把握できていたことが生きました。あとはこういったことが起こるということはずっと言ってきていたので、最後まで集中力を切らさず、フィニッシュラインを切るまで1艇でも順位を上げる姿勢を持って、自分にできることを徹底したことに尽きると思います。

――自粛期間もあり難しい状況での1年だったと思うのですが、この1年はどのようなシーズンだと振り返られますか

最後まで成長が続けられたシーズンだったかなと思っています。練習が限られる中で成長曲線としては夏の間に伸びきることができず、本来は調整や仕上げの時期である秋になっても大きい課題が残っている状態でした。ただ、470チームは最後1ヶ月でかなりボートスピードのアップが実践できて、自信を持って完全優勝を狙えるレベルで全日本インカレに臨めたということはすごく大きかったかなと思っています。なので、練習できなかった分、最後まで成長し続けられたと感じています。また、スタートした時は大差で3位の時点から始まって、完全優勝が狙えるとは誰も思っていなかったと思いますが、最後まで成長を止めなかったことに尽きるかなと思っています。

――4年生に対する思いをお聞かせください

4年生はコロナで今まで通りの活動ができない中で、その中でもどうすればチームにとっていい選択ができるかをすごく考えてくれて、実際にそれが花を開いたと思っています。代としては松尾虎太郎という素晴らしい選手がいる一方、上下の代と比べると選手としての能力が高いわけではなく、かつ同期内でのトラブルや松尾虎が部にいないことが多かった中で、4年生になってからの最後の1年は全員がチームの勝利のためにベストを尽くしてくれたし、そのことが下級生にも伝わって下級生も生かしながら戦えるチームになったかなと思います。

――今月末に全日本学生個人選手権(全日本個戦)が控えていますが、今後の意気込みをお願いします。

全日本個戦は正直なところまだ何も考えていないのですが、基本的には下級生の成長の機会にしたいということを思っています。一応4年生も出場はしますし、松尾虎は今まで例のない大会3連覇に挑戦するのですが、部としての最大の目標はこの全日本インカレなので、それが終わった今は来年の全日本インカレに向けた下級生の成長のための機会として生かすということを考えています。なので、成績がどうこうというよりは多くの学びを得られるレースになることを願っています。

スナイプ級クルー海老塚啓太(政経4=神奈川・鎌倉学園)

――優勝おめでとうございます。今のお気持ちを教えてください

すごく安直なコメントなんですけど、とにかく嬉しいです。

――スナイプチームとしては最初のレースでワンツースリーフィニッシュを決めました。この時の心境をお聞かせください

その前の秋インカレでもワンツースリーは取っていたので、今回の大会でもどこかで取ってやろうという気持ちは持っていました。ですが、まさか1レース目で取れるとは思っていなくて、チームにとって大きな弾みになったし、すごく嬉しかったですね。

――2日目はチーム全体として大きく崩さない走りができていたと思いますが、ご自身としてはどう感じていましたか

長いレースの中で自分たちが苦しい時はどこかしらであるのですが、そんな時でも470のレースで赤いスピンが前に3つ並んでいたりするとすごく安心できますし、逆に470が後ろに走っている時は自分たちが頑張ろうという気持ちになって、お互いを助け合いながらチームとして戦えたなと実感しています。

――最終日の今日はスナイプで安定した走りを見せ、470でも終盤の追い上げで完全優勝を成し遂げましたが、この点を振り返っていかがですか

スナイプは日大がBFDとなり、点差が開いたので、とにかく安全に走ろうということを意識してスタートし、リスクを負い過ぎない走りができていたので、狙い通りの順位を取ることができました。470は僕たちはフィニッシュした後に見たのですが、3艇目が遅れていてどうなるのだろうと思って見ていました。そのあと2上ですごい追い上げを見せてくれて、慶大に勝てるかもしれないと聞いた時本当に嬉しくて、違うチームではなりますが、両チームで完全優勝することができて本当によかったです。

――今回、3日間を通して一緒に乗るスキッパーが代わる中でレースを行なっていたと思いますが、そこはどう考えていましたか

正直、谷川とこの1年間乗ってきて、それが急に尾道と乗ることになって不安はあったのですが、レースに挑むにあたってクルーがやるべきことは変わらないと思っていて、それを自分で発揮して艇の走りに貢献できたという実感はあるので、その点は結果的には気にならなかったです。

――先程も述べましたが、6年ぶりの完全優勝となりました。最上級生としてこの結果はどう捉えていますか

このヨット部に入って、4年間楽しいことばかりではなく、苦しいことや辛いことの方が多くて、本当にやめたいと思った時もあったのですが、最後の最後に努力が報われて完全優勝することができて本当に嬉しいです!

――同期の仲間に伝えたいことはありますか

最初、僕たちの同期は多かったのですが、どんどん辞めていって最終的に6人となってしまい、その中で最上級生となって少ない人数での関係に苦労することはあったのですが、それでも各自同期がそれぞれの持ち場で頑張っていてくれて、主将の松尾虎やマネジャーの外山、470チームリーダーの佐香、ペアの谷川、スナイプクルーの仲には本当に感謝しかないですね。

スナイプ級クルー海老塚啓太(政経4=神奈川・鎌倉学園)

――優勝おめでとうございます。今のお気持ちを教えてください

すごく安直なコメントなんですけど、とにかく嬉しいです。

――スナイプチームとしては最初のレースでワンツースリーフィニッシュを決めました。この時の心境をお聞かせください

その前の秋インカレでもワンツースリーは取っていたので、今回の大会でもどこかで取ってやろうという気持ちは持っていました。ですが、まさか1レース目で取れるとは思っていなくて、チームにとって大きな弾みになったし、すごく嬉しかったですね。

――2日目はチーム全体として大きく崩さない走りができていたと思いますが、ご自身としてはどう感じていましたか

長いレースの中で自分たちが苦しい時はどこかしらであるのですが、そんな時でも470のレースで赤いスピンが前に3つ並んでいたりするとすごく安心できますし、逆に470が後ろに走っている時は自分たちが頑張ろうという気持ちになって、お互いを助け合いながらチームとして戦えたなと実感しています。

――最終日の今日はスナイプで安定した走りを見せ、470でも終盤の追い上げで完全優勝を成し遂げましたが、この点を振り返っていかがですか

スナイプは日大がBFDとなり、点差が開いたので、とにかく安全に走ろうということを意識してスタートし、リスクを負い過ぎない走りができていたので、狙い通りの順位を取ることができました。470は僕たちはフィニッシュした後に見たのですが、3艇目が遅れていてどうなるのだろうと思って見ていました。そのあと2上ですごい追い上げを見せてくれて、慶大に勝てるかもしれないと聞いた時本当に嬉しくて、違うチームではなりますが、両チームで完全優勝することができて本当によかったです。

――今回、3日間を通して一緒に乗るスキッパーが代わる中でレースを行なっていたと思いますが、そこはどう考えていましたか

正直、谷川とこの1年間乗ってきて、それが急に尾道と乗ることになって不安はあったのですが、レースに挑むにあたってクルーがやるべきことは変わらないと思っていて、それを自分で発揮して艇の走りに貢献できたという実感はあるので、その点は結果的には気にならなかったです。

――先程も述べましたが、6年ぶりの完全優勝となりました。最上級生としてこの結果はどう捉えていますか

このヨット部に入って、4年間楽しいことばかりではなく、苦しいことや辛いことの方が多くて、本当にやめたいと思った時もあったのですが、最後の最後に努力が報われて完全優勝することができて本当に嬉しいです!

――同期の仲間に伝えたいことはありますか

最初、僕たちの同期は多かったのですが、どんどん辞めていって最終的に6人となってしまい、その中で最上級生となって少ない人数での関係に苦労することはあったのですが、それでも各自同期がそれぞれの持ち場で頑張っていてくれて、主将の松尾虎やマネジャーの外山、470チームリーダーの佐香、ペアの谷川、スナイプクルーの仲には本当に感謝しかないですね。

470級スキッパー佐香将太(スポ4=岩手・宮古)

――今のお気持ちを聞かせてください

総合優勝を目標にして1年間活動してきたので、それは素直によかったです。さらには470でも最後にクラス優勝することができてヨット部人生の中で一番嬉しいです。

――470級では初日、16艇だけがゴールにたどり着いたレースで早大勢は3艇中2艇が走りきることができました。この時の心境を教えてください

このレースでは1位になったのはうちの西村で、逆にBFDになったのもうちの小泉だったのですが、これは仕方なかったと感じています。その中でも西村が2、3分ゴール前でストップして時間を稼いで小泉を助けようとしていて、結果的には助からなかったのですが、こういったインカレならではチームプレーが見れたのはよかったです。