対談の最終回には早川隆久主将(スポ4=千葉・木更津総合)が登場する。早川は今季ここまで5試合に登板して4勝0敗、防御率0.25と圧倒的な成績を残し、悲願の優勝へ向けて進む早大を引っ張っている。そんな左腕に、これまで主将として過ごしてきた中…

 対談の最終回には早川隆久主将(スポ4=千葉・木更津総合)が登場する。早川は今季ここまで5試合に登板して4勝0敗、防御率0.25と圧倒的な成績を残し、悲願の優勝へ向けて進む早大を引っ張っている。そんな左腕に、これまで主将として過ごしてきた中で見い出した『主将の役割』や、最後の早慶戦に懸ける意気込みなどを含め、今の胸中を伺った。

※この取材は10月30日に行われたものです。

「戦っていて負ける雰囲気というのがない」


笑顔で取材に応じる早川

――今季これまでの戦いを振り返ってみていかがですか

 粘り強い戦いというのはできていると思うので、もう1段階ギアを上げて、早慶戦は2タテして優勝できればなと思います。

――粘り強さというのは「負けない」ところからきているのでしょうか

 そうですね。ビハインドの場面でも追いついて、勝ち点0という試合がなかったので。0.5ポイントを獲得できたので、そういう面では良かったかなと思います。

――これまでの戦いに点数をつけるとすれば

 勝ち切れた試合というのも何試合かはあったと思うので、そういう面では75点くらいかなとは思います。

――ここまでのチームの雰囲気はいかがですか

 戦っていて負ける雰囲気というのがないので、チームとしては頼もしいですし、「優勝できるな」というのも体感できています。

――今季のベストゲームはどの試合でしょう

 今季のベストゲームか。チーム的に良かったかなと思うのは法政2回戦(△6-6)かなと思っていて。やっぱり2点ビハインドを追いついて同点で終われたというのは大きかったと思うので、優勝に近づく一歩でもあったかなと思います。

――その試合は早川投手の好救援(8回一死満塁のピンチで登板し、1回2/3を無失点)から流れが変わった印象があります

 流れを引き寄せることができたとは思うので、そういう面では好救援ができたのかなと思います。

――ご自身のこれまでの投球に関してはいかがですか

 特に変えることもなくずーっと進んできたので、明大1回戦のあの1失点は無駄な点だったなと感じています。そういう甘さというのは早慶戦で出ないようにしていければなと思います。

――その甘さというのは9回2死から出した四球のことを指していますか

 そうですね。前回の立大戦も自分の四球から自分でピンチを作って、(その後抑えたことによって)自作自演みたいなかたちになりましたけど、そういう甘さがあるので、そこをつぶしていければなと思います。

――「特に変えていない」という話もありましたが、今季特に有効的に使えている球種などはありますか

 やっぱり真っすぐにみんな意識がいっているので、少しだけ動くカットボール、ツーシーム、チェンジアップだったりというのが自分の中でハマっているのかなと感じています。

――ちなみに配球の組み立ては三振をゴールに行っているのでしょうか

 いや、打ち取ろうと思って配球をしていくうちに、相手のファールが重なっていくなかで、三振が取れるカウントになったら三振を取りに行くということはありますけど、最初から三振を取りに行くのはピンチの時しかないですね。それ以外は打たせて取るピッチングをしています。

――東大1回戦の7回に投げていた落ちるボールの正体を教えて下さい

 あれはチェンジアップなんですけど、チェンジアップも2種類あって。カウント取りのチェンジアップと、落とし気味のチェンジアップがあるので、それをうまく使い分けています。(後者は)他のバッターからはフォークっぽいとは言われるのですが、そっちのチェンジアップを(東大1回戦で)多めに使いました。

――私も落ち方を見て、以前「練習している」と伺ったフォークを投げているのかなと思いました

 そうですね。フォークは今シーズンどころか、もう…。なんて言うんですかね(笑)。たまにツーシームがフォーク気味に落ちることもあるのですが、それをフォークという認識で打者が振ることもあるので、まあツーシーム、チェンジアップがフォーク気味に落ちてくれているという感じの認識がいいのかなと。

――チームの打線の調子はいかがですか

 なかなか点を取るのに苦しんでいる状況が後半は続いているのかなと思いますけど、しっかり1年生たちがフレッシュマンらしく思い切りよく振れてきているからこそ、思わぬ点じゃないですけど、そういう点も取れています。自分にとってはすごく勇気づくというか、頑張る材料となっています。

――今お話にもありましたが、早川選手から見た熊田任洋選手(スポ1=愛知・東邦)や野村健太選手(スポ1=山梨学院)のすごさはどこにあるのでしょうか

 自分が1年生だった時と比べると、物怖じを全然しないなと。試合慣れをしているというか、思い切りよさというのが見えているので、そういう面では1年生2人の存在はチームにとっても大きいのかなと思います。

――大舞台での経験があるからこそですかね

 そうですね。野村もあまり怖がらずに淡々と野球をやっている感じがしますし、熊田もエラーをしても引きずって「すみません…」という感じではなく「次は捕るのでお願いします」と強気で言ってきたりするので、そういう面では頼もしい1年生だなと感じています。< p>

――早川選手ご自身の打撃に関して言えば、法大1回戦後のインタビューで「鳥谷敬選手(平16人卒=現千葉ロッテマリーンズ)のフォームを取り入れた」とおっしゃっていましたが、追い込まれてからは以前までの打撃フォームに戻している印象があります。そのあたりはいかがですか

 そうですね。三振したくないのと、自分は足の速い選手だと自分の中でも認識しているので、転がせば何かしら起きるみたいな感じでノーステップに 変えることもあるのですが、ここ最近は迷走し始めて(笑)。巨人の丸選手(佳浩)のものまねをしたり、ロッテのマーティン選手のまねをしてみたり、色々と試してはいるのですが、ちょっとどれもまだ…。鳥谷さん(の打ち方)が東大(1回戦)の時にタイミングの取り方がわからなくなったというか、差される感じがあったので、変えようと思ったのですが、今(様々なフォームを)試していて迷走している状態です。

――しかし、その東大1回戦では適時打を放つなど、ここまで打率も3割を超えています(.308)。打撃の調子は良さそうにも思えるのですが、そうでもないですか

 そうでもなくて(笑)。あの場面で、東大の投手のクイックに鳥谷さんの打ち方をして差し込まれて。『これじゃ打てない』と思って、ノーステップ気味に変えたんですけど、そこから自分のフォームを忘れたというか。そしたら迷走していった感じですね。

――ちなみに『打撃が好き!やりたい!』というタイプではないですか

 別にそういうタイプではないです(笑)。打席に立つのであれば野手の1人として頑張ろうというのはありますけど、無いなら無いで投球に専念できるので、それもありかなと。

――今シーズンは従来のリーグ戦の形式とは違い2戦きっかりで終わってしまいます。その部分で難しさなどはありますか

 1戦目、自分がしっかりとゲームメイクして、その後中継ぎに回すという試合が東大戦の1試合だけですがありました。(早川が1戦目にロングイニング投げることで)2戦目にある程度投手をつぎ込めるかなと思ってはいるのですが、逆に自分が前日完投や完封をしたことによってちょっと中継ぎの試合感覚ではないですけど、投げたい感覚が狂ってしまうかなというのはありますね。(昨年までのように)1、3戦目とか、月曜日(に試合)がある状態であれば、自分が土曜日に完封するということもほとんどなかったと思うので、そういう面では中継ぎの選手は難しいのかなと思います。

――逆に早川選手が完投や完封を挙げているのは、2戦で終わるということも影響しているのですね

 そうですね。2戦で終わるというのも含めて、やっぱり1戦目しっかり勝ち切って、2戦目に全員で投手をつなげて、代打を使いながらも点を取れればなということで2戦目を戦っているのですが、やっぱりどうしても(中継ぎの選手は)難しいのかなと思います。

『負けの三大要素』とは

――実はこの取材の前に、何人かの選手に早川選手についてお話を伺いました。何か聞いていますか

 いや、まったく聞いてはないですけど…。(この対談前に実施した)アンケートの中に「早川の印象は?」みたいな欄があったのは知っています。みんなふざけて書こうと思ったけど、「主将としての印象」とあったのでふざけられない、まじめなことを書いた、と言っていたのは何名かいました(笑)。

――そのアンケートの回答を踏まえて各選手にお話を伺ったのですが、岩本久重選手(スポ3=大阪桐蔭)が「早川さんはコントロールが抜群」とおっしゃっていました

 コントロールがいいのかと言われるとわからないのですが(相手打者が甘いボールを)ミスショットをしてくれているのは多いので。それが今後捉えられるようになってくるとコントロールが良くないというか、甘いボールが行きやすいピッチャーという認識になると思います。今は(相手打者の)ミスショットというかたちになっていて、それでカウントを整えられていますけど、今後捉えられてくるとコントロールがいいというよりもアバウトに投げているのかなという印象が強くなってくるのかなと思います。

――それでも、三振を取ったボールなどはよく制球されているように感じます

 考え方次第かなというのもあって。とりあえず早めに追い込んでいるケースが自分は多いと思うので、あまりカウントが悪いという状態がないとは思うのですが、そのいいカウントの状態などでいかに厳しいコースに攻めていけるか(を突き詰めているため)、それでコントロールがよく見えるのかなと思います。

――それでは、制球力に関してご自身の評価としてはそれほどでもないのでしょうか

 自分的には、キャッチャーの構えているところに投げようということで、たまにコントロールミスをすることもあるので、そこにきっちり投げようという印象はあまりないですけど。キャッチャーが捕りやすい、いいキャッチングができるようにという感じで投げています。

――四球もとても少ないですが

 フォアボール出したくないと思っているので。それに尽きると思います(笑)。よく高校の監督(五島卓道監督、昭52教卒)が言っていた『負けの三大要素』というのがあって、それが『四死球、バント失敗、エラー』なんですけど。(監督から)「四球を出すくらいなら打たれてこい」というように言われていたので、高校の時からの教えであまり四球を出さないようにしています。そんなにキチキチに投げているというよりかは、ちょっとアバウトに投げている感じですね。

――他にもいろいろなお話を伺いました。柴田迅選手(社4=東京・早大学院)は「早川は1番走りこんでいるのではないか」とおっしゃっていましたが、これに関してはいかがでしょう

 1番走っているかどうかは分からないのですが、走らないと下半身がふわふわすることもありますし、投げていてバテるのが一番怖いと思うので、そういう面ではしっかり走らないといけないと思いますね。和田さん(毅、平15人卒=現福岡ソフトバンクホークス)とかもそうですし、小島さん(和哉、平31スポ卒=現千葉ロッテマリーンズ)とか大竹さん(耕太郎、平30スポ卒=現福岡ソフトバンクホークス)とかも結構走っていて、ランニングの重要性というのがわかってきたので。ランニングをメインに考えて、トレーニングは二の次、というふうにはしています。

――今までの練習メニューの中でも特に走り込みに力を入れてきたということですか

 そうですね。走ることに関しては気を抜かないというか、(手を)抜かないようにやっていましたね。

――「後輩にアドバイスをしている」という話もちらほら伺いました

 自分からアドバイスすることはないのかな。あるのかな。どうなんですかね。聞きに来てくれることもありますし、自分がその選手の投球フォームなどを見ていて気になったと思うところは「こうしたほうがいいんじゃない?」というアドバイスをすることはありますけど、自分が言ったことを全部やれというような強制はしないようにしています。

――特に誰にアドバイスをすることが多いですか

 自分がよく教えるのは長柄(昂、人3=石川・金沢桜丘)と森田(直哉、スポ3=早稲田佐賀)ですかね。彼らも聞きにきたりするので、あの2人には結構教えたりしています。長柄はここ最近はちゃんとストライクが取れるようになった(笑)という面で、下半身の使い方が少しは良くなったのかなとは感じます。

――いくつか苦情もお伺いしております

 苦情!?

――結城壮一朗投手コーチ(教4=大阪・早稲田摂陵)から「とにかく食べない」「ご飯を食べろ」と伝言をいただきましたが、それについてはいかがでしょう

 それについては事実です(笑)。事実なんですけど…。食べてはいるんですけど、体重がなかなか増えないので。消費の方が自分は多くて、摂取量が追いついていない状態なので、それは仕方ないということで流しておいてください(笑)。

――以前の対談では「自粛期間から夏にかけて体重を80キロでキープしている」という話もあったのですが、今回行ったアンケートには77キロと記載されていました。これも消費量が摂取量を超えてしまった結果でしょうか

 そう…。ふっ(笑)。そうとは言えないですけどね。「夏の時に80キロキープできていたのに(涼しくなった)今なんで80キロキープできないんだ」って言われると(答えるのが)難しい話ではありますけど(笑)。動きやすいのは77キロくらいで、夏は体力勝負でもあるので80キロくらい(がちょうどいい体重)で、水分量とかも多かったとは思うのですが、今はそんなに(必要ない)。暑さとかもないので、そういう面では77(キロ)くらいが自分の中ではベストかなと思っているのですが、80(キロ)の方が球速は出ているのかなというふうに思います。球速出したいなら体重を増やせばいいかなと感じますね。まあ動きやすさ重視で自分は体づくりをしているので。

――逆に早川選手からチームメートの方々についてもお伺いしていきたいと思うのですが、今の4年生はどのような代ですか

 本当に感謝しかなくて。下級生に対するアドバイスもそうですし、みんなでチームをつくろうという感じがすごく見える代です。(主将の)自分が率先して頑張ろうというよりは、4年生一人一人がリーダーシップを持ってチームづくりしてくれているからこそ、自分はピッチャーに専念できていると思うので。4年生には感謝しかないかなと思います。

――1年生の時の対談では、同期について「個性が強いっていう感じで、逆にまとまっている感じは正直自分的には感じられない」とおっしゃっていましたが、3年半の月日を経てだいぶまとまってきた感じですか

 いやー…。成長したんですかね(笑)。まとまっているようにしか自分の中では見えていないので。こんなに人って変わるんだって思うくらい(笑)。4年生になってから急にまとまりが出始めたのかなとは思いますけど、何ですかね。オータムフレッシュリーグとか、新人戦とかで結果を出してきて、そういうところで徐々に『チームのために頑張ろう』と(いう雰囲気に)なってきたのかなと思うので、そういう意味ではまとまりのある学年になったなとは思います。

――自分たちの代で優勝したいというモチベーションもあるのでしょうか

 いやー、もう、それしかないですよね。優勝を経験していない代でもありますし、優勝をずっと夢見てこの四年間野球をやってきているので。みんなが一つの方向を向いてやっているからこそ、団結力が生まれてきていると思うので、本当に夢をかなえたいなというのはあります。

――アンケートには、主将を経験して良かったことに『主将としての自覚と責任』と、難しかったこととして『メンバー内とメンバー外のモチベーション』とそれぞれ書かれていましたが、詳しく教えて下さい

 自覚と責任は投球を見てもらった通りだと思います。1点差の均衡(した試合)の中でもしっかり投げ切って勝てているというのは、(背番号の)10番という重みが自分のことを成長させてくれている(結果だ)とすごく実感しているので、そこはプラスのことだなというように感じています。メンバーとメンバー外の話に関しては、自分たちはメンバー外の選手もしっかりと動いてくれて、『チームに貢献したい』という気持ちが見えているので、4年生は全然オッケーだと思うのですが、メンバーだった選手がメンバー外になった時に、1、2、3年生の選手たちはグレ気味というか、ちょっと違う方向に行きがちな選手が多いかなというのはすごく感じていて、そこが難しいなと。そういう選手のモチベーションをどうやったら持っていけるのかなと悩むことは多々ありました。その中でも、4年生のメンバー外の先輩たちが「こういうふうにモチベーションをもって動いたほうがいいよ」というようなアドバイスをしているところを見ると、やっぱりそういうことを経験したからこそ言える立場でもあると思うので、そういう意味ではメンバー外の選手も頑張ってくれているなと感じています。

――今の話を踏まえてではないですが、改めて主将の役割とは何でしょうか

 チーム全員をどれだけ1つの方向に矢印を向けることができるかというのが主将の役割だと思います。その中では言動も大事ですけど、自分が率先して動くことで変わってくるのかなと思います。言動よりも行動の方が自分は大事かなと思うので。言うだけ言って「あの先輩、動いてねーよ」って言われるのが一番良くないと思うので、そういう面では一番そこをやっていければなと思います。

――ではここまでの主将としての自己評価を点数化するならどれくらいになるのでしょうか

 いや50点くらいだと思いますね、本当に。 それ以外の50点は自分たちの学年の学生コーチの杉浦(啓斗新人監督、文構4=東京・早実)、結城、児玉(魁音、商4=千葉・芝浦工大柏)、他の4年生たちが頑張っているからこそチームが成り立っていると思うので。本当に今の4年生がいなかったらチームとして成り立っていないのかなと思います。

――瀧澤虎太朗副将(スポ4=山梨学院)や吉澤一翔副将(スポ4=大阪桐蔭)、金子銀佑選手(教4=東京・早実)の働きなどはいかがですか

 100点満点だと思います。チームの中でも銀佑だったり、吉澤、瀧澤は試合中でも下を向かずに鼓舞して、「まだまだいけるぞ」っていうような声掛けをしたりしているのを見ていると、本当に勝ちたい気持ちが伝わってきますし、それが下級生にも伝染というか、伝わっていくと思うので。下級生にもズバズバ言うこともできていると思いますし、練習中に鼓舞することもできていると思うので、そういう面では瀧澤、吉澤、金子は特に頑張ってくれたかなと思います。

――小宮山悟監督(平2教卒=千葉・芝浦工大柏)はどのような指導者ですか

 いやー。すごい人ですよね。簡単に人を変えられるというか、あまり自分の中でも解決できていなかった中でも、そういうのを一瞬でパッてわかって。「ここがダメだからここをこうしたほうがいいよ」っていうふうにアドバイスをしてもらったことで、変わる選手も多いと思うので。指導がわかりやすいというのもすごいと思いますし、理論でやってきたからこそ言葉で伝えやすいと思うのですが、本当にすごいなと感じています。

――ドラフトの話もいくつかお伺いします。石井一久GMがくじを引き当てた際、楽天のブースは大盛り上がりでしたね

 そうですね。楽天さんに指名をもらって、自分の中ではパ・リーグに行くこともすごく楽しみにもしていましたし、どちらのリーグに行っても変わらないとは思うのですが、パ・リーグは各球団に強打者がいて、すごく楽しみだなというのはあったので、そういう面ではすごくいいなと。東北も自分とはあまりなじみのない場所なので、新天地に行って心機一転、第二の野球人生を歩んでいければなと思っています。

――ドラフト指名直後の記者会見では「あまり考えてはいない」とおっしゃっていましたが、やはり柳田選手や吉田正尚選手などの球界を代表するようなバッターに投げてみたいというのはありますか

 そうですね。投げてみたいというのはありますけど、意外と先輩たちと対戦してみたいなっていうのがあって。投げ合いもそうですけど、中村奨吾(平27スポ卒=現千葉ロッテマリーンズ)さんだったり、石井一成(平29スポ卒=現北海道日本ハムファイターズ)さんだったり、鳥谷さんだったり、意外とパ・リーグには早稲田(出身の選手)は多いと思うので、野手の先輩方と戦ってみたいなというのはありますね。

――小島さんと投げ合う時も来るかもしれませんね

 そうですね。投げ合う時がくれば、楽しんで投げられればなと思います。そういう意味では今後の楽しみの1つではあるかなと。

――1位指名を祝福する連絡は来ましたか

 そうですね。大竹さん、小島さんもそうですけど、六大学の先輩方からも連絡が来たりしたので、そういう面では『やっと同じ舞台に立てるんだな』という自覚が少しづつ実感してきたかなと思うのですが、まだまだ早慶戦が終わらないとなかなか実感も沸かないかなというのはありますね。

――指名挨拶などもまだですよね

 そうですね。まだです。全部プロに移行するのは早慶戦が終わってからってことで。早慶戦が自分の中でも命かけて戦おうと思っているので。

――具体的にどのような連絡のやりとりがあったか教えていただけませんか

 小島さんや大竹さんは「同じリーグで戦うことになるけど、これからも頑張っていこうね」というかたちで連絡をもらって、柳町さん(達、現ソフトバンクホークス)からは「おめでとう」という連絡がきたと同時に、「また打たせてもらいます」という連絡がきました(笑)。あとは津留崎さん(大成、現東北楽天ゴールデンイーグルス)と連絡先を交換して、いろいろ話して、という感じです。

――ドラフト直後の記者会見で『早稲田で学んだことは何でしょうか』とお伺いした際、早川選手は「歴史の重みや言葉の奥深さ」だと答えていただきました。早稲田の歴史を学ぶ意義はどこにあるのでしょうか

 早稲田のユニホームを着る上で、歴史を知らずにプレーをしていても、早慶戦の重みだったり、早稲田大学野球部としての自覚もなかなか芽生えてこないと思うんですよ。ましては自分はキャプテン、チームのトップに立つ人間がそういうのを学ばないでああだこうだ言っても「お前、早稲田の何を知っているんだ」というふうになってしまうと思うんですよね。歴史を例えに出しながらミーティングで話せば選手としても納得しやすいと思いますし、早稲田大学野球部の存在をしっかり(他の)選手に伝えるためにも自分が率先して学ばなければならないのかなと思いますね。

――そのように早稲田を学び始めたのは、主将に就任してからですか

 そうですね。主将に就任して、小宮山監督から「お前は早稲田を知れ」というふうに助言をもらったので、ちょくちょく早稲田を学ぶようにはしました。

――プロのその先の将来の話に関して言えば『最後は高校野球の指導者になりたい』と考えているとお伺いしたのですが、それについて詳しく教えて下さい

 後には指導者という立場でプロ野球選手を輩出できればなとは思っています。指導者になって(キャリアを)終われればなと思っていますね。

――影響を受けた指導者などはやはり木更津総合高の五島監督や小宮山監督などでしょうか

 そうですね。五島監督、小宮山監督、中学校の監督さんもそうですけど、そういう方々にはすごくお世話になりました。野球に対してのアドバイスもそうですけど、人間としての成長というのを促してくれたので、そういう面では野球を教えるというよりかは人間的なものをつくっていければなと思います。

「全身全霊で、死に物狂いで慶應を倒しにいきます」


法大1回戦で三振を奪い、雄たけびを上げる早川

――お時間もだいぶ経ってきたので、そろそろ締めに入ろうかと思います。1戦目の相手先発は東京ヤクルトスワローズにドラフト1位で指名された木澤尚文選手が濃厚ですが、どのような投手ですか

 パワーピッチな感じもしなくもないんですけど、意外と繊細でもあるのかなと思います。強気で押してくるので、そこに負けないように打者陣が立ち向かっていかないといけないと。冷静なように見えてアツいものを持っているので、立ち向かっていければなと思います。

――カットボールのキレがすごいみたいですが、どう攻略しましょう

 カットボールを打ちましょう(笑)。カットボールを打って、投げるボールがなくなれば、という感じです。

――木澤投手以外にも慶大には好投手がそろっていますが、相手投手陣をどのようにみていますか

 リリーフで大崩れするケースもあまりないので、しっかりそのピッチャーの特徴をつかみながらつなげて打っていければ、相手バッテリーにプレッシャーも与えていけると思うので、ボディブローのようにヒットや四球などで(塁に)出ていければなと思います。

――警戒している打者はいますか

 全員だと思いますね。特に誰というよりかは、つながる打線でもあると思うので。一人一人大事に、アウトを一個ずつ取るというのが大事かなと思います。

――これで最後の早慶戦となりますがいかがですか

 先発を何回か経験させてもらっていますけど、一回も先発で勝てていないんですよね。リリーフで去年初めて勝ったくらいで。先発として勝って終わりたいというのはあるので、土曜日に向けてしっかりと調整していければなと思います。

――さらに言えば明治神宮大会が中止となったことにより、学生生活最後の大会となってしまうと思います

 このチームと一緒に野球ができるのもラストなので、有終の美を飾りながらも後輩にいい経験をさせて、自分が引退できればいいかなと思います。やっぱり優勝というのは必須なのかなと思います。

――心残りみたいなものはありますか

 もうちょっと大学1、2年生でしっかり野球やっとけよっていうふうに(笑)、過去の自分に伝えたいなとは思いますけど、それもいい経験だと思うので、自分の中では内容の濃い四年間を過ごせたのかなと思います。

――最後に早慶戦への意気込みを教えて下さい

 自分たちは勝つことしかないと思うので、一戦一戦、一球一球、噛みしめながら最後の早慶戦をものにできればと思います。全身全霊で、死に物狂いで慶應を倒しにいきます。

――ありがとうございました!

(取材・編集 山田流之介)

◆早川隆久(はやかわ・たかひさ)

1998(平10)年7月6日生まれ。180センチ、77キロ。千葉・木更津総合高出身。スポーツ科学部4年。投手。左投左打。両校が無敗のまま行われる早慶頂上決戦。早大は優勝するために1勝1分、または2連勝が必要で、1戦も落とせません。そして、早川選手ら4年生にとってはこれが最後の試合となります。「一戦一戦、一球一球、噛みしめながら」という言葉通り、支えてくれたチームメートへの感謝の気持ちも込めて、『全身全霊』で戦います。