2020年、東京六大学秋季リーグ戦。賜杯の行方は早慶2校に絞られた。早大が1勝1分以上となった場合、悲願の逆転優勝となる。永遠のライバルを下し、六大学の頂をつかむか。はたまた、目下で賜杯を逃し、塾の胴上げを許すか。天下分け目の戦いが、今始…
2020年、東京六大学秋季リーグ戦。賜杯の行方は早慶2校に絞られた。早大が1勝1分以上となった場合、悲願の逆転優勝となる。永遠のライバルを下し、六大学の頂をつかむか。はたまた、目下で賜杯を逃し、塾の胴上げを許すか。天下分け目の戦いが、今始まる。
早大投手陣の柱は、絶対的エース早川隆久主将(スポ4=千葉・木更津総合)だ。ここまで防御率0.25と圧巻の投球を見せている。しかし、慶大には分が悪く、対慶大の通算防御率は5割台。過去に何度も辛酸をなめている。自身最後の早慶戦、宿敵を沈めずして、早稲田のユニフォームは脱げない。第2先発は徳山壮磨(スポ3=大阪桐蔭)が有力。西垣雅矢(スポ3=兵庫・報徳学園)、今西拓弥(スポ4=広島・広陵)、柴田迅(社4=東京・早大学院)との継投リレーで最少失点に抑えたい。
チーム防御率リーグトップの『最強投手陣』に襲いかかるは、全員が打率3割超えの『最強クリーンアップ』。特に4番の正木智也(3年)は5試合連続でマルチ安打を放ち、チームをけん引している。また、規格外の長打力を誇る廣瀬隆太(1年)にも警戒が必要。下位打線では主将の瀬戸西純(4年)が打率こそ低いものの、チームトップの9打点を挙げており、厄介な存在だ。
慶大の第1先発は東京ヤクルトスワローズドラフト1位の木澤尚文(4年)だろう。最速155キロの直球はもちろん、打者の手元で変化するカットボールは一級品。そう簡単には打ち崩せない。第2先発の森田晃介(3年)も実力は十分。さらにブルペンでは防御率0.90の若き守護神・生井惇己(2年)が出番を待つ。変則的なフォームから繰り出される緩急ある投球を何とかして攻略したい
一方の早大打線、今季最大のブレークを果たしたのは5番の丸山壮史(社3=広島・広陵)だ。明大2回戦では右翼席に先制3ランをたたき込んだ。得点圏打率5割の勝負強さでたまった走者を返したい。また、野村健太(スポ=山梨学院)はルーキーながら打率3割超え。伝統の一戦で、放物線を描くことはできるか、期待が高まる。
躍進を遂げた2人とは対照的に、瀧澤虎太朗副将(スポ4=山梨学院)、金子銀佑(教4=東京・早大実業)、吉澤一翔副将(スポ4=大阪桐蔭)の4年生3人のバットは湿っている。しかし、瀧澤は盗塁、金子は好守、吉澤は犠打と、それぞれが『優勝』の1ピースとなるべく、懸命なプレーを続けている。学生最後の大舞台、これまで数々のドラマを見せてくれた3人の雄姿が見たい。
GRIT--。
昨年末、早大野球部は『泥臭く』を意味するこの言葉をチームスローガンとして掲げた。くしくもこの1年は、泥水をすするような出来事の連続となった。野球ができるかさえ危うい中、『優勝』の2文字だけを追い求め、走り続けた稲穂戦士たち。激動の1年は今、ついに終わりを迎えようとしている。「死に物狂いで慶応を倒しにいきます」(早川)。宿敵を打ち倒し、必ずや5年ぶりの栄光をつかんでみせる。
(記事 望月清香、写真 池田有輝、荻原亮、望月清香)