さまざまなスポーツイベントが徐々に再開され始め、ビーチバレーボール界もその流れに追随。国内トップツアーの『マイナビジャパンビーチバレーボールツアー2020』が1大会のみ、縮小開催ながらようやく開幕にこぎつけた。 今シーズン唯一の国内公式戦…

 さまざまなスポーツイベントが徐々に再開され始め、ビーチバレーボール界もその流れに追随。国内トップツアーの『マイナビジャパンビーチバレーボールツアー2020』が1大会のみ、縮小開催ながらようやく開幕にこぎつけた。

 今シーズン唯一の国内公式戦となる『立川立飛大会』は10月31日、11月1日の日程で、東京都・タチヒビーチにて行なわれた。人数制限はあったものの、有観客で行なわれた大会には男女各8チームが出場。シングルトーナメントで覇権が争われた。



今季国内ツアーで唯一開催された立川立飛大会に出場した坂口佳穂

 大事な一戦を前にして「優勝したい」と意気込む坂口佳穂(24歳/マイナビ)と村上礼華(23歳/ダイキアクシス)のペアは第8シード。1回戦の相手は第1シードの強豪、石井美樹(30歳)&村上めぐみ(35歳)だった。

 9月のビーチバレー千葉市長杯(1セットマッチで行なわれた下部カテゴリーの大会)でも対戦し苦杯をなめている難敵だが、来春行なわれる予定の五輪予選『東京2020ビーチバレーボール日本代表チーム決定戦』(開催国枠男女各1チームを争う)を見据えると、どうしても乗り越えておきたい相手である。

 強力なサーブ、緻密なディフェンスと攻守に隙のない女王ペアを相手に、坂口は「攻め続けないと勝つことはできない」と話してゲームに入った。しかし、村上めぐみの変化の大きいサーブ、ショット(軟打)で的確にボールを落としてくる攻撃に、出鼻をくじかれてしまう。2-6と序盤から差をつけられ、早々にタイムアウトを取らざるを得なくなった。

 それでも、このタイムアウトで堅さの取れた坂口&村上礼華ペアは、そこから挽回を図る。身長165cmと小柄な村上めぐみにサーブを集め、相手の攻撃リズムを崩していく。そして、村上礼華のサーブ、坂口の強打が決まり始めると、点差も縮まって12-12と追いついた。

 中盤からは、ネット際に落とすドロップショットとエンドラインを狙ったディープショットを交互に繰り出し、石井&村上めぐみを前後に揺さぶっていく。坂口が「相手はディフェンスがうまいので、常に前後に動かし続けないといけない」と語った戦術が芽を出し始めた。

 その結果、14-12と逆転。後半は得点を先行し、点差を保ったまま終盤までゲームを進めた。

 ところが、トップランカーの石井&村上めぐみペアは、「普段のリズムではなかったが、我慢しながらプレーしていた」(石井)と、決して慌てることがなかった。村上めぐみが淡々とサイドアウトを切って、石井のスパイクが決まり始めると、坂口&村上礼華ペアの勢いも失速。トップランカーの巧みなゲーム運びに再び逆転を許してしまい、23-25で第1セットを失った。

 第2セットは、坂口&村上礼華ペアが巻き返しへ奮闘。序盤、坂口の強打は相手ブロックに止められるも、村上礼華のツーアタックなどトリッキーなプレーが光って、一進一退の攻防を続けた。コート奥への攻撃を有効的に使って、第1セットでは決められていた村上めぐみのショットにも対応し、10-8とリードした。

 しかし、女王ペアを下すことは容易ではなかった。村上礼華のディープショットがジャストアウトになって、14-16と点差をつけられると、試合の流れは石井&村上めぐみペアに傾いていった。石井の鋭いスパイク、村上めぐみの風をよく読んだサーブで得点を重ねられ、17-21。セットカウント0-2での敗戦となった。

 試合を振り返って、「サーブなど悪くはなかったが、ミスしてはいけないところでミスが出てしまった」と村上礼華。坂口も「勢いがないと勝てない相手。ミスが出たりして、その勢いが途切れ途切れになって、(自分たちの)流れを切ってしまった」と反省の弁を口にした。

 とはいえ、内容は一方的なものではなく、日本トップチームとの差はそれほど大きくは感じられなかった。

 相手のストロングポイントに対応したうえで、ディープショットを多用するなどして、相手を揺さぶり、その攻撃力を削いでいた。「常に手を打っていかないと、すぐに修正してくるだけの強さを持っている」(坂口)という強敵に対して、事前に練っていた戦術を実行し、それは十分に機能していた。

 加えて、これまでのようにミスを連発して自滅気味に崩れることもなかった。試合終盤における経験の差、集中力の差で、わずかに及ばなかった試合だったと言える。

 ゆえに、坂口も、村上礼華も、この敗戦を前向きに捉えている。村上礼華が「(石井&村上めぐみペアと)前回対戦したときよりも手応えがあった」と言えば、坂口も「(試合の)主導権は渡してくれなかったが、やられた感じはなかった」と語った。

 目標にしていた今シーズン唯一の公式戦での優勝は叶わなかったが、この1試合から得たものは大きい。戦いの舞台が以前のような状態に戻るのはいつになるかはわからないが、来春に向けて、坂口&村上礼華ペアへの期待は膨らむばかりだ。