"美しすぎるプロ野球選手"として注目を集めていた加藤優が、昨年11月に『埼玉アストライア』を退団。今年1月には今シーズン…
"美しすぎるプロ野球選手"として注目を集めていた加藤優が、昨年11月に『埼玉アストライア』を退団。今年1月には今シーズンはどのチームにも所属しないことを発表し、4月からは横浜DeNAベイスターズのベースボールスクールでコーチを務めることになった。はたして、チームを退団し、スクールのコーチに就任した理由は何だったのか? すべてを語ってもらった。

今年4月にDeNAのベースボールスクールのコーチに就任した加藤優
── 女子野球界で名を馳せた加藤優さんですが、4月より横浜DeNAベイスターズのベースボールスクールでコーチを務めています。就任に至った経緯を教えてもらえますか。
「今年2月にベイスターズ主催で女子選手向けの野球教室が開催されたのですが、そこで講師をやったことがひとつのきっかけになり、スクールのコーチのお誘いを受けました」
── 本格的な指導は初めてということですが、子どもたちに対し、どのように野球の魅力を伝えていきたいと考えていますか。
「おもに小学校1〜2年生を担当しているのですが、野球を楽しいなって思ってくれるような成功体験を増やしてあげたいと考えています。数カ月やってきて、限られた時間のなかでどう伝えていけばいいのかという難しさを感じていますし、そこは試行錯誤しながらやっていますね」
── 加藤さんが野球を始めたきっかけは何だったんですか?
「5歳から始めたのですが、少年野球チームの指導をしていた父の影響が大きかったですね。兄も野球をやっていたので、ごく自然なカタチで野球を始めたんです。コーチたちがすごく楽しく野球を教えてくれた記憶が残っています」
── 当時、ほかに女子選手は?
「少なかったですね。私は神奈川県秦野市出身なのですが、市内には私を含めて3〜4人しかいなかったと思います。ただ今はスクールもそうですけど、どこのチームにも必ずひとりは女の子がいますし、普及という面で見るとすごくうれしいですよね」
── その後、加藤さんは中学生になるとリトルを経て「秦野ボーイズ」に所属しますが、硬式はハードルが高かったのでは。
「いえ、兄の影響もあって硬式に進むのは私のなかでは普通のことでした。高校生になるとソフトボール部に所属したのですが、スピード感があって面白さを感じていたものの、やっぱり野球をやりたいという思いが強く、退部して野球を続けることにしたんです」
── 当時、どこを目標に野球をやろうと思ったんですか。
「女子硬式野球の日本代表です。初めて意識したのは中学校2年生の時ですね。代表の存在を知り、中学2年生の時にテストを受けたのですが、落ちてしまいました。ただ代表合宿には呼ばれて、そこでレベルの高い先輩方を目の当たりにして、あらためて女子硬式野球の日本代表になりたいなって。
高校3年生の時にようやく日本代表候補になることができたのですが、何度目かの代表合宿の時に、この3年前に発足した女子プロ野球リーグの選手が5名参加したんです。プロの選手たちは本当にレベルが高かった。結局、私はこの時は代表にはなれなかったのですが、このままではダメだと感じ目標をプロへ切り替えたんです」
── 2016年から約4年間『埼玉アストライア』でプロ野球選手としてプレーをしました。
「プレーや技術はもちろんフィジカルの面においてもレベルの高さを感じましたね。そういう中でプレーすることで自分自身の成長をすごく感じています。ただプロという夢は叶いましたが、自分としては通り道のひとつだと思っていたんです」
── 昨年11月にチームを退団しました。女子プロ野球についていま思うことは。
「一緒にやってきた仲間がプロで頑張っているので、応援させてもらっています。女子プロ野球は、子どもたちや学生たちの目標として必要不可欠なものだと思っていますし、おそらく関係者の方々はどうやって盛り上げるか模索しながら活動していると思うんです。私としては、このままじゃいけないという気持ちや、女子野球界に違う形で貢献したいという意欲もあって、考えた末に退団させてもらったんです」
── 思い入れがあるがゆえの行動だったと。
「女子野球界にはプロにはなっていないけど、レベルの高い選手がたくさんいると思うんです。ゆくゆくはそういった部分を整えるというか、たとえば男子野球のようにレベルの高い選手は当然のようにプロを目指すといった環境を作っていけたらといいなと思うこともあります」
── 埼玉西武ライオンズや阪神タイガースが女子チームを発足しましたが、いずれは12球団すべてが女子チームを持ってほしいという思いはありますか。
「はい。おそらく、それが女子選手のみんなの夢じゃないかと思いますね」
── やはりプレーする以上、明確な目標が欲しい。
「今は女子の高校野球が盛り上がっていて、硬式野球部がある高校が、全国で40校以上あるんです。私の時代は5校ぐらいしかなかったですし、プロの存在もあり急速に増えたと思うんです。ただ高校から先を考えると、まだ大学に女子硬式野球部があるのは6校ぐらいですし、あとはクラブチームや野球をしながら仕事をする社会人チームなどがありますが、まだまだ不安定な印象です。ですから今は、高校から先の道を模索する時期なのではないかと思います」
── 加藤さん自身、まだ現役ということですよね。
「はい。期間限定で『GOOD・JOB』というチームに参加させてもらいましたが、基本的に所属チームはありません。ですから今は、自分でトレーニングを積みながら、今後どうやって行動すべきなのか考えながら日々を過ごしています。私の役割は、とにかく女子野球の存在をより世間に知っていただくということだと思っています」
── プライベートのことも聞きたいのですが、最近のマイブームは何でしょうか。
「ちょっと古いんですけど、アニメの『NARUTO』を見ることですね。今はそれが至福の時間です(笑)」
── そういえばYouTubeなどでもアニソンなどの歌を披露していますね。
「趣味としては歌がダントツで一番ですね。幼い時から歌を録音して楽しんでいたので、それが今につながっている感じです」

今後は女子野球発展のために尽力したいと語る加藤優
── 今後はSNSなどを活用し野球に関して発信していきたいという思いはありますか。
「そうですね。YouTubeはあまり更新できていないのですが、最近ツイキャスなど個人的にネット配信などを始めたので、そういったところでファンの方や女子野球に興味のある方と交流していけたらなと考えています」
── 以前、自主トレを一緒にやったことのある秋山翔吾選手(シンシナティ・レッズ)がメジャーで頑張られていますが、なにか印象に残っている言葉などはありますか。
「あまり多くを語る方ではなく、姿で見せてくれる印象ですね。ただ自主トレの際、私以外にも何人か女子選手が参加したのですが、その対応にすごく感激したのを覚えています。秋山選手は、私たちの試合動画を事前にチェックしてくれていて、ノートにチェックポイントをまとめてアドバイスしてくださったんです。本当にありがたいと思いましたし、そういった誠実な対応は見習っていきたいなって」
── スクールで指導している立場としても大いに参考になりますね。
「秋山選手にはスクールのコーチになることを報告させてもらったのですが、『自分が教えたことを生かしてくれたらうれしいな』とおっしゃってくれたので、ぜひ指導に反映させたいと思います」
── スクールのコーチとして、また現役選手として今後どんな活躍をしてくれるか楽しみです。
「指導者として野球の楽しさを子どもたちに伝えつつ、選手として理想を描けたらなと思っています。先ほどもお伝えしましたが、私の役割は女子野球を多くの人に知ってもらうことです。女子選手が当たり前のように野球をして、より高いレベルを目指せる環境づくりに少しでも協力できたらうれしいですね」
PROFILE
加藤優(かとう・ゆう)/1995年5月15日、神奈川県生まれ。少年野球チームの監督だった父親のすすめで5歳から野球を始める。 少年野球チーム、リトルリーグ、ボーイズリーグを経て、高校時代から企業チーム「アサヒトラスト」に所属し、女子野球日本代表候補に選出される。2016年に女子プロ野球選手として「埼玉アストライア」に入団。2019年にベストナイン受賞(外野手部門)するも、同年11月に退団。現在はチームに所属せず、自身の夢を叶えるためトレーニング中 加藤優・厳選フォトはこちら>>