チーム事情から見るドラフト戦略2020〜広島編 2016年から3年連続でセ・リーグを制した広島だが、昨シーズン4位に沈む…
チーム事情から見るドラフト戦略2020〜広島編
2016年から3年連続でセ・リーグを制した広島だが、昨シーズン4位に沈むと、今シーズンも序盤こそ上位に食い込むことがあったが、7月以降は最下位争いを演じるなど、苦しい戦いを強いられている。
今シーズンここまで(10月25日現在)の成績を見ると、チーム打率.261はDeNAに次ぐ2位、得点も巨人に次いで2位と、攻撃力に関しては悲観することはない。一方、投手陣はチーム防御率4.30(リーグ5位)と苦戦。チームの立て直しを図るには、投手陣の整備が急務だ。
昨年は、大船渡の佐々木朗希(ロッテ)、星稜の奥川恭伸(ヤクルト)、東邦の石川昂弥(中日)に人気が集中したなか、明治大の本格派右腕・森下暢仁の一本釣りに成功。森下は1年目からローテーション投手として期待どおりの活躍を見せ、新人王最右翼に挙げられている。
この森下をはじめ、近年、広島の投手陣の中核を担っているのは、野村祐輔、大瀬良大地、九里亜蓮、床田寛樹、薮田和樹など、大卒のピッチャーたちだ。とくに今年のドラフト候補は大学生に好素材の投手がひしめきあっており、ぜひとも獲得しておきたいところだ。

最速156キロを誇る亜細亜大の平内龍太
実力なら、早稲田大の最速155キロ左腕・早川隆久(左投左打)だ。早稲田大の小宮山悟監督が「20年にひとりのサウスポー」と語ったように、まず左で150キロを超すのはそれだけで貴重だ。また、変化球の精度も高く、ストレートを含めたどの球種でも空振りが取れるのが魅力的だ。たとえ調子がよくなくても、試合をつくれる投球術とメンタルの強さもある。総合的に見ても、今回のドラフト候補では間違いなくNo.1投手だ。
当然ながら競合は必至。なんとしても即戦力投手がほしいというチーム事情のなか、リスク覚悟で獲りにいくのか、それとも一本釣りできそうな選手を狙うのか......。
仮に一本釣りできそうとなれば、どの投手を獲得すべきか。そのひとりがトヨタ自動車の栗林良吏(右投右打)だ。もともと栗林は中日が狙っていたが、中京大中京のエース・高橋宏斗(右投右打)がプロ志望届を出したことで状況は一変。根尾昂、石川昂弥に続き、高校球界のスターの獲得を目指すという。
そこで栗林の一本釣りの可能性が出てきたわけだ。栗林のよさは最速153キロというスピードよりも打者の手元で加速するボールの強さだ。大卒(名城大)の社会人だが、本格的に投手を始めたのは愛知黎明高校2年の時からで、まだまだ伸びしろが期待できる。
大学生にも即戦力の逸材がいる。慶応大の木澤尚文(右投右打)、亜細亜大の平内龍太(へいない・りゅうた/右投右打)、法政大の鈴木昭汰(左投左打)は実戦能力に長け、先発、リリーフどちらでも適性がある。
なかでも平内はリリーフとしての適性が高そうで、クローザー受難の広島にとってはうってつけの人材ではないだろうか。絶対的守護神へと成長してくれれば、投手力は劇的に変わるはずだ。
そして今回のドラフトで広島がやるべきもうひとつのミッションが、鈴木誠也の後継者探しだ。近い将来メジャー挑戦の噂もあり、実現するかしないかは別として、チームの顔というべき選手の後釜は早いうちに見つけておきたい。
推薦したい選手は、中京学院中京の元謙太(内外野手/右投右打)と花咲徳栄の井上朋也(内外野手/右投右打)だ。ともに中距離型だが、ツボにくれば楽々とスタンドインできる長打力も秘め、走攻守にバランスの取れた選手だ。
広島には、今シーズン出場機会を大幅に増やした坂倉将吾(22歳)や、2年前のドラフト1位・小園海斗(20歳)、今季一軍デビューを果たした、羽月隆太郎(20歳)、林晃汰(19歳)など、徐々にではあるが次の世代の若手たちが芽を出し始めている。
まだまだリーグ3連覇を達成した時の中心選手を脅かすまでには達していないが、数年後に向けての土台づくりは着々と進んでいる。その足場をさらに強固なものにするためにも、今年のドラフトでどんな選手を指名するのか注目したい。