あるスポーツ新聞の担当記者に聞くと「戦力面では慶應が最も充実しているのでは」と返ってきた。なるほど、2016年秋から8…
あるスポーツ新聞の担当記者に聞くと「戦力面では慶應が最も充実しているのでは」と返ってきた。なるほど、2016年秋から8季連続で勝ち点4を挙げ、3位以上のAクラス。昨秋を含め、その間3度のリーグ制覇に輝くなど”陸の王者”は、いま再び黄金期を迎えている。福田拓也主務は胸を張ってチームの特徴を挙げた。

「170人の部員がそれぞれの持ち場で力を発揮して日本一を目指している。指示待ちの人が誰ひとりいない。なぜ、いまこれをやっているのか?全員が理由をハッキリと答えられる集団。自立ができたチームです」
今年のスローガンは「本気」だ。「人生の中でも170人超がひとつの目標に向かって取り組むことはそうそうないでしょう。ならば、限られた時間の中で力を100%出し切ろうと、この言葉に決めました」と瀬戸西純主将が力を込めた。

ピンチをチャンスに変えようと、コロナ禍でもできることに取り組み、結束力を高めた。4月から2カ月間の自粛期間中には部員の発案で週3回のオンラインミーティングを開催。就任1年目の堀井哲也監督は言う。
「私からも提案、提言しましたが、残りは選手が自身の取り組みを発表したり、選手間での討論の場にした。それにより相互理解が深まり、一体感が生まれました」
創部は何と1888年。早稲田と最初に戦ったのは1903年年11月21日のことだ。しかし、伝統にあぐらをかくことなく、日々アップデートを重ねてきた。最近では「ラプソード」「トラックマン」といったデータ器機を導入。今年からはアナリスト部門も立ち上げた。

「頭脳集団の東大より頭を使い、技能集団の法政より技術力を高める。盟主と言われる早稲田に負けないプライド、明治以上の人間力を発揮し、立教よりも自由と博愛の精神を持とうと選手に伝えている。いろんなカラーがあるのが慶應の魅力」と堀井監督は言う。

もちろん、130年の歴史を誇るだけに伝統の重みも感じている。「過去の主将の名前を見るだけで立派な人ばかり。そんな方々が私が主将になったときにアドバイスをしてくださった。そんなところも慶應の強み」と瀬戸西主将。一方、福田主務は「マネジャーとしては野球部OBはもちろん、慶應出身者、慶應ファンの方と交流し、話を聞かせていただく中で、慶應の野球が人生の一部になっているのだろうと感じる場面がたくさんありました。60年以上神宮に通っている人も珍しくありません」と感謝の思いを伝えた。

当然のことながら早慶戦には本気度が一段と増す。「球場の雰囲気からして違う。ふだんは“慶應義塾体育会野球部”として戦っていますが、早慶戦は”慶應義塾”を背負って挑んでいるイメージ」と福田主務の言葉は熱かった。
宿敵との一戦だ。瀬戸西主将が「早稲田も死に物狂いでくる。NHKで全国中継され、アマチュア球界の注目度も高い。絶対負けられない戦い」と続ければ、堀井監督も「六大学の総意でリーグ戦の最後に組まれている特別な試合。その意味に応えないといけない」とかみしめるように話した。

2位に甘んじた今春のリーグ戦。球場に入れない応援団からデッカい横断幕が贈られ、ふだんはトレーニングルームに飾られている。堀井監督は「勝利の思いを込めて贈ってもらったもの。毎日見て、勇気をもらっている。いいプレーで、勝つことで、その思いに応えていきたい」とV奪回への決意を口にした。
その秋季リーグではスポーツギフティングサービス「Unlim(アンリム)」も初めて実施され、伝統の東京六大学としても画期的な取り組みのひとつとなる。支援金が集まれば、より安全でより高度な練習をするための設備面が充実。それが探究心や向上心にもつながり、技術のレベルアップに結びついていくわけで、見る者の心を打つプレーが求められる。

もちろん、その下地は整っている。今秋も155㌔右腕のエース木澤尚文と森田晃介の二枚看板が健在。野手も好守好打の瀬戸西主将を中心にまとまりがある。東京大、立教大に連勝して好スタートを切った。目指すは早慶戦で決める完全優勝だ。