新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、今年の日本グランプリシリーズはここまで全試合が中止となっていた。久しぶりのグランプリ大会となった田島直人記念には多くのトップ選手が集結。非五輪種目の女子300メートルでは青山聖佳(大阪成蹊AC)が日…

 新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、今年の日本グランプリシリーズはここまで全試合が中止となっていた。久しぶりのグランプリ大会となった田島直人記念には多くのトップ選手が集結。非五輪種目の女子300メートルでは青山聖佳(大阪成蹊AC)が日本記録を更新するなど、ハイレベルな争いが見られた。早大からも5選手が出場。女子走幅跳で漁野理子(政経4=和歌山・新宮)が3位、男子400メートル障害では後藤颯汰(スポ2=長崎・五島)が4位に入った。

(記事 大島悠希)

★後藤が4位に入るも、レース内容には納得できず(男子400メートル障害)


1台目のハードルを越える後藤

 男子400メートル障害はエントリーした選手の半分が欠場。「タイムレースで欠場者も多かったので、とりあえず組1着。タイムより順位を狙っていこう」と、後藤は結果重視でレースに臨んだ。スタートから勢いよく飛ばしトップでレースを展開したが、7台目のハードルで足をぶつけるミス。競り合う展開でホームストレートに戻ってきたが、ミスによる減速が響き、2位でゴールするのが精一杯だった。先に行われた1組の2選手にタイムで上回れ、後藤は4位で大会を終えた。
 「大きい大会で4番を取れたことはうれしい」と語る一方で、どこか浮かない表情を試合後に見せていた後藤。ハードルで足をぶつけるミスさえなければ、さらなる上位で大会を終えることができただけに悔しさの残るレース内容となった。前半の走りにはそれなりに満足している様子が伺えるだけに、関東学生対校選手権、田島直人記念で課題となった後半の走りを来季に向けて改善していきたいところだ。「最初の大会で全カレの標準を突破し、今年3位だった関カレでは優勝を目指します」と宣言した後藤の走りに来季は注目していきたい。

 

★後輩と共闘し、漁野が3位入賞(女子走幅跳)


漁野は2回目以降は記録を伸ばすことができなかった

 女子走幅跳には漁野と吉田梨緒(スポ2=北海道・立命館慶祥)が出場。学内の記録会以外では久しぶりに2人で揃って臨む大会となった。「2人で跳躍を見合って臨めたことは自分の力にもなりましたし、吉田の力になっていると思います」(漁野)との発言が示す通り、試合中から2人が言葉を交わしている場面が数多く見受けられた。
 漁野は1本目で5メートル89(-0.1)とまずまずのジャンプを見せたが、「助走が若干走れない部分があった」とその後は思うように記録を伸ばせなかった。吉田は2本目で5メートル61(+0.7)を記録したが、その時点で4本目以降の試技に進める上位8人に入ることができず。続く3本目は、これまでお世話になってきた先輩の漁野に対する『恩返しの気持ち』を込めて跳ぼうと臨んだが、記録を伸ばすことはできなかった。漁野が3位、吉田が12位で試合を終えた。
 次戦の木南道考記念大会は、漁野にとって引退試合となる。昨年のトワイライト・ゲームズ以降塗り替えることができていない自己ベストの更新が目標だ。体の状態は悪くないだけに、期待が持てそうだ。

★大隅が競技生活を締めくくる(女子走高跳)


競技後に記念撮影。左から仲野、大隅、山田

 女子走高跳には今大会を最後に現役を引退する大隅愛(人4=香川・高松一)と山田実来(人2=神奈川・桐光学園)の2選手が出場した。まず初めの高さは1メートル65。大隈は1メートル66、山田は1メートル68の自己記録に迫る高さからの競技開始となった。関東学生対校選手権から1週間と、両選手とも疲労が完全に取れていない中での試合。その中で、「最後の試合だったので、そこは気持ちでカバーするしかない」(大隅)、「今日は1メートル65を飛びたい」(山田)と強く意気込んで大会に臨んだ。しかし実戦慣れしていないことも影響してか、両選手とも3本の試技を全て失敗。特に大隈は8月の競技会で1メートル65を飛ぶなど状態も悪くなかっただけに、悔しい結果となった。
 大会の終了後には、今大会に出場していた競走部OGの仲野春花(平30スポ卒=福岡・中村学園女)からも、労をねぎらう言葉を掛けられた大隅。けがなどで苦しい時期もあった早大での4年間を、「恵まれたいい環境で人間的に成長することができました」と振り返った。入学時から自己記録は1センチしか伸ばすことができなかったが、早大の競走部に入学したからこそ得ることができたものもきっとあったはずだ。競走部で得たかけがえのない経験は、きっと大隅の今後の人生においても生かされていくのではないだろうか。

(記事、写真 大島悠希)

結果

▼男子

▽400メートル障害

タイムレース決勝

後藤颯汰(スポ2=長崎・五島)51秒61(2組2着)(4位)

▼女子

▽走幅跳

決勝

漁野理子(政経4=和歌山・新宮)5メートル89(-0.1)(3位)

吉田梨緒(スポ2=北海道・立命館慶祥)5メートル61(+0.7)(12位)

▽走高跳

決勝

大隅愛(人4=香川・高松一)記録なし

山田実来(人2=神奈川・桐光学園)記録なし

コメント

大隅愛(人4=香川・高松一)

――ラストイヤーとなった今季を振り返って

コロナという状況の中で、例年とは違い関カレ(関東学生対校選手権)も対校戦ではなくなるなどいろいろあったのですが、自分が戦うことも周りが応援してくれることも変わらないので、ある試合に感謝してやるだけだなと思い試合に臨んできました。

――その中で自粛期間はどのような練習をして過ごされましたか

自粛期間は今まで以上に自分がやりたい練習をできました。坂や補強メインでお尻周りとかの強化に努めました。

――記録会では1メートル65を飛ばれていましたが

それこそお尻周りを強化したことで助走が安定したのと、踏み切りも力強くなったので、それが自己記録につながったと思います。

――この大会に向けてコンディションはどうでしたか

関カレの後で跳躍練習をして、その時にバーを1メートル65まで上げようと思ったのですが、疲労もあって全然調整はしきれなかったです。ですが最後の試合だったので、そこは気持ちでカバーするしかないなと思っていましたが、実力不足でした。自分の実力を思い知らされた試合となりました。

――今日の跳躍はいかがでしたか

練習跳躍した感じだといけるなと思っていたのですが。今年4回の試合は学内の試合だったので普段のグラウンドの状況で試合に出れたのですが、競技場の試合に対応しきれなかったので、そこは悔しいです。

――最後の試合を振り返ると

本当に多くの人が応援してくれて、結果は出なかったのですが、皆に「頑張った」と言ってもらえたので、記録的には成長できなかったのですが、恵まれたいい環境で人間的に成長することができました。感謝でいっぱいです。

――早大での4年間はどのような4年間でしたか

けがとかもあり苦しい時期あったのですが、ここまで続けてきて良かったです。続けてこれたのは、紛れもなく皆がいたからだなという思いがあります。

漁野理子(政経4=和歌山・新宮)

――日本選手権から今大会に向けて、コンディションは維持できてましたか

そうですね。日本選手権の時よりは体のコンディションはいいのかな、そこまで悪くはないのかなと感じてました。

――今日の体の調子はどうでしたか

正直自分でも、試合前のアップを見ても調子がいいのか悪いのかそこまで分からなかったのですが、悪くはないと感じて、思いっきりいこうかなと思いました。

――1本目の跳躍を振り返ると

練習跳躍で自分の思い描く跳躍をできたので、そのイメージでいこうと決めていました。正直助走の流れが悪かったので、もう少しうまく跳び込みに入れたらなと思いました。

――6本目までの跳躍はどうでしたか

グラウンドのコンディションも良かったですし、自分の調子自体も悪くはなかったのでもう少し記録を狙えるかなと思いました。この2週間、日本選手権が終わってからはウエイトだったりとパワーを付ける練習にシフトしていた部分もあったので、そういう部分で助走が若干走れない部分があったのかなと思いました。

――今大会は吉田選手と臨む最後の大会でしたが、その部分は

今季は試合がなかなか開催されていなこともあり、学内では一緒に試合に出れていたのですが、外の大会で一緒に出るのは初めてでした。自分自身楽しみな部分もありましたし、2人で跳躍を見合って臨めたことは自分の力にもなりましたし、吉田の力になっていると思います。

――競技中は吉田(梨緒、スポ2=北海道・立命館慶祥)選手や、鹿屋体育大の山本渚選手と話をされていましたが

吉田とは、跳躍の部分でここが駄目だ、ここを修正しようといった話をしていました。鹿屋体育大の山本さんとかとは、「コンディションの割に記録が出ないね」、「もう残りも少ないから一緒に頑張ろね」といった話をしていました。

――次の大会で漁野さんは引退となりますが、この残り一週間はどのように過ごされますか

もうあと1試合で終わってしまうので、できることはあまり少ないというか、欲張って何かをやるというよりかは自分で一つやることを決めて、自分だったり監督だったりを信じて、あと残りの練習もして試合に臨みたいと思います。

――最後の大会に向けた意気込みをお願いします

自己ベストを昨年の7月以来更新できていないので、自己ベスト更新と早稲田記録の更新を、最後狙っていきます。

後藤颯汰(スポ2=長崎・五島)

――関東学生対校選手権(関カレ)から今大会に向けて、どのような調整をしてきましたか

2本関カレでは走ったので、とりあえず疲労を抜くことを考えて、今大会に臨みました。

――どのような目標を立てていましたか

関カレは51秒87で自分の目標としていた50秒80には届かなかったので、この大会ではコンディションを合わせてタイムを狙っていこうとは思っていたのですが。今回のレースでは7台目で失敗してしまい、そこから流れが悪くなりました。タイムとしてはセカンドベストなのですが、目標の記録を達成できなかったので悔しかったです。

――タイムレースでしたが、意識したことはありますか

タイムレースで欠場者も多かったので、とりあえず組1着。タイムより順位を狙っていこうと意識しました。

――自身の走りを振り返ってみると

8台目まで自分が先頭で、絶対3番目以内に入れると思ったのですが、7台目で足をぶつけてしまい、流れが悪くなってしまいました。大きい大会で全体4番を取れたのはうれしいですが、タイムが悪かったので…。次の大会は来シーズンになるのですが、全カレ(日本学生対校選手権)の標準を最初の大会で切って、全カレまで行きたいと思います。

――前半のは走りはどのように捉えていますか

関カレよりは前半動いていて、いい流れができているなと思います。

――来シーズンに向けて、修正していきたいポイントは

全体的な走りもそうなのですが、ラストの7台目から10台目が課題になっているので、そこでタイムをなるべく落とさないように。前半もなるべく上げれるようなレースをしていきたいと思います。

――来季に向けた意気込みを、最後にお願いします

来季は最初の大会で全カレの標準を突破して、関カレでは今年3位だったので次は優勝を目指します。日本選手権の標準を切れるように頑張っていきたいと思います。

山田実来(人2=神奈川・桐光学園)

――今大会に向けて、どのような意気込みで望みましたか

先週に関東学生対校選手権(関カレ)に出ていたのですが、その時に記録なしで終わってしまいました。自身の強みであった強い踏み切りというのが関カレの少し前から取り戻してきたので、それを意識して関カレには臨んだのですが、踏切位置が近すぎました。その修正を加えながら、あとは疲労を抜く感じでこの大会に調整しました。

――自粛期間はどのように過ごしていましたか

自粛期間は競技場が使えなかったので、家の周りや近所の坂を走っていました。跳躍ブロックで毎日メニューを報告したりして、皆のやってることを参考にしながら練習していました。

――最初の高さが自己記録に近い高さだと思うのですが、その点意識したことはありましたか

スタートが(1メートル)65であってもどんな高さであっても、今日は(1メートル)65を飛びたいなと思っていたので、力みとかはなかったです。練習で(1メートル)65まで高さを上げることがなかったので、久しぶりに見る高さになってしまったことはもったいなかったです。

――今日の跳躍を振り返ると

今日は、跳躍練習を始めていない影響もあって助走が安定しなかったので、1本1本違う形になって、修正することができなかったです。

――今後への目標はありますか

今季はなかなか記録を出すことができていなくて、来年の関カレの標準記録も切ることができていないので、まずは冬季に走りをメインで練習をして、来季の初戦で(1メートル)65を飛べるようにしていきたいと思います。

吉田梨緒(スポ2=北海道・立命館慶祥)

――コロナ渦はどのようなトレーニングをしてきましたか

そうですね。自粛期間中は集合できない状況だったので帰省しないといけなかったのですが、帰省先でもトレーニング場が閉鎖されたり、競技場が使えなかったりしました。家の近くの坂で走力を上げる練習が中心でした。

――その中で、コンディションはどうですか

これまで上がってきた記録が、今は段々と下がっている状態です。考えないといけないことが増えて、それがまだ自分の中で消化できていないことが結果に表れていると思います。この冬季練習で自分の足りない部分と向き合って、また戦える準備をしたいなと思います。

――今日の跳躍はいかがでしたか

全体的に、走力、最大筋力とかの跳躍選手として必要なアベレージ、また瞬発力が落ちているので、そこの部分から底上げしないといけないなという課題を痛感しました。

――漁野さんと挑む最後の大会だったと思うのですが、その部分について

そうです!はい!!2年間お世話になっている漁野(理子、政経4=和歌山・新宮)さんとの試合だったので、すごい思い入れが強く。自分も恩返しをしたいなと思ったのですが、本当に悔しさの残る大会だったなと思います。でも近くで漁野さんが跳躍しているところを見れて、良かったなと思います。

――試技中にも漁野さんと話をされていましたが、どのようなことを話されていたのですか

エールをいただきました。いつも練習の時もそうなのですが、親身に相談してくださったりと。試合の時も、どんな時でも、力になる言葉を掛けてくださるので、感謝の気持ちでいっぱいです。3本目は何も考えずに、恩返しの気持ちを込めて跳ぼうと思っていたんですけど…。本当に悔しいです。

――来季に向けて意気込みをお願いします

走力面。ウエイト面。瞬発系を一からつくり直して、新しい跳躍を完成させたいです。今の自分に合った跳躍ができるように、頑張っていきたいと思います。