「明日へのエールプロジェクト」の一環で、学生とアスリートが今とこれからを一緒に語り合う「オンラインエール授業」。 第34回目の講師は、10歳の頃から空手を始め、高校3年時にインターハイで優勝し、全日本選手権女子形で5度の優勝、2012年世…

「明日へのエールプロジェクト」の一環で、学生とアスリートが今とこれからを一緒に語り合う「オンラインエール授業」。

第34回目の講師は、10歳の頃から空手を始め、高校3年時にインターハイで優勝し、全日本選手権女子形で5度の優勝、2012年世界選手権女子形での優勝など様々な大会で活躍。現在は全日本空手道連盟協会委員として普及活動や選手の指導にあたっている宇佐美里香さんだ。全国高空手部の現役部員約30名や顧問の教員が集まり、今のリアルな悩みや質問に答えた。

「高校時代の経験が礎に」

早速、宇佐美さんは画面を通して高校生と交流を図ったあと、高校時代を振り返っていく。帝京高校に進学をすると、そこから本格的に空手の形を始める。「当時の目標は『1つ上の先輩のようになりたい』という憧れがあった。その先輩は空手の形をとても大事にしていた人でもあった。それと道着の洗濯は後輩に頼むが、その先輩が自分で道着を洗っていたのを見て、私も自分の道着は自分で洗濯するようになった。また先輩は授業の合間に道場へ足を運び、一人で黙々と練習する姿を見て学ばせてもらった」と回想した。

そして、宇佐美さんが高校2年生の時にキャリアの分岐点になった出来事についてを語った。「憧れていた先輩がインターハイで敗れて6位となり、悔しくて泣いている姿を見て、来年、インターハイに出場する目標を立てた」という。目標とするインターハイに向けて、腕を磨きながら空手と向き合った中で「(インターハイ前の)全国選抜大会に出場する時に、『周りの選手がうまくてどうしよう・・・』と決勝戦を前に怖くて震えてしまい『形ができない』、『試合に出たくない』とトイレで泣いていた。何とか気持ちを切り替えて試合に臨んだ辛い思い出がある」と話すと「ただ、それを経験したからこそインターハイに向けて、練習から気持ちを入れ替えた思い出がある」と、それがインターハイ優勝への原動力となっていたことを明かした。

空手を通して培ったものは、現在、どう生きているのか。「毎日、部活漬けで空手に対する思いが熱かったからこそ3年間、続けられた。自分の成長を感じられたことで大学進学の際にも空手を選択した。憧れの先輩の存在が大きく、努力の仕方を学べたことや自分のことは自分ですること、礼儀の正しさも、現在に生きている」と空手界の申し子は高校時代の経験が礎になっていることを口にした。

オンラインエール授業は質疑応答のコーナーへと移る。「技術」、「メンタル」、「進路」の3テーマを高校生たちが、宇佐美さんに質問をした。

「日ごろの練習メニューを自分たちで考えているが、練習中に取り入れるのに何を重視したらいいのか?」という質問に対して、宇佐美さんは「私の高校時代を振り返ると、同じように自分たちで考えて基本動作からバンバンやっていた覚えがある」と言う。空手で必要な体力を空手の中で鍛えるため、前屈立ちなどで数分止まった後に突き技をする負荷のかかるメニューに入れる練習法もあると紹介し、「周りいる仲間もライバルだと思って練習をした方が『ライバルに負けない』と思うことで我慢強さが試合に役立つ」と豊富な答え。

また「移動基本練習をして空手の基本動作を体に覚えさせ反復する練習をして形にもっていく。そして走り込みやダッシュなどを取り込み体力をつける。空手の土台になる基礎体力も大事になるので取り入れた方がいい」と充実した時間を送れるようアドバイスを送った。

「乗り越えてきた過程を大事に」

「世界選手権で優勝した後の気持ちや空手に対する向き合い方はどう変わったのか?」という質問が寄せられると宇佐美さんは、2012年に世界選手権で優勝をした時の心境を率直に答える。「あっけなかった。何万時間、何百時間と練習をしてきて世界を目指してきたものが、たった2分30秒の演武で終わってしまった。あっと言う間の決勝戦の舞台だったが、大事なのはそれまでの過程で、どれだけの悔しさやどれだけの気持ちでやってきたかを知ってもらいたいし、みんなにはその過程を大事にして欲しいと思う。結果だけ見れば金メダルを獲ったことでキラキラして見えるが、その裏側では苦しいことの方が多いと。乗り越えてきた過程に対し、色々な人に拍手を送りたいと思っている」と語った。

そして、世界の頂点に立った後も「空手を辞める気持ちはなく、空手を通して自分を表現できたこと、空手がないと自分ではないと思っている。空手に出会えたことに感謝しているので、空手で今後も皆さんに何かを伝えていきたい思いがある」と空手への愛を口にする。

現役を退いた今でも「毎日、空手の形の、突きや蹴り、受けなど、さらに技術が上がるように体を鍛えている」とのこと。空手道の道は続く。

「日ごろの行いで大切にしていたものは?」と訊かれると、真っ先に「感謝することを大事にしている」と挙げた。そして「現役のときは練習環境があることに感謝をして稽古していたし、日常生活で言えば、ごみが落ちていたら見ないふりをせずに拾うなど、当たり前のことを続けることを大事にしていた」と『当り前のことも、当り前ではないこと』を訴えかけた。

最後に将来の夢や進路に関する質問について。「まだ将来の夢が決まっていない、色々な人に相談をしている段階なのだが、今、宇佐美さんが高校生に伝えたいことがあれば聞いてみたい」。

宇佐美さんは「高校に進学するときに、2つ上の姉のようなミニスカートやルーズソックスを履いて髪も綺麗にしてという高校生活にも憧れはあった、また空手をやっていたので空手漬けを送る高校に進学をするかを泣いて悩んでいた。でも最後に決めたのは空手が好きだからこそ自分で空手を選択をした。大学に進学する時も、2つの道があり、自分に足りなかった精神面を鍛えるための道を選んだ。引退をしても、どちらに進むのか、分かれ道は出てくる。周りの人に相談することも大事で、最後は自分の意思を見極めて道を選んだ方がいい」と岐路に立った時のヒントを口にした。

どんな人にも才能があることを信じている宇佐美さんは「ここにいる人も、一人ひとり才能があり、まだ開花していない人もいれば、開花している人もいる。私であれば空手の形で開花をした。次の新しいことでも、自分の目標を達成したい思いもある」。常に目標を定め、その道の才能を開花させるていくための大切さを熱心に伝えた。

宇佐美里香さんが語る“明日へのエール”

最後に“明日へのエール”を求められた宇佐美さんは「空手を続けるときには目標をもって進んで欲しい。キラキラした憧れる気持ちをもって、空手を綺麗な気持ちでやって欲しい。高校生活が悔いの残らないように過ごしていけば将来、役に立つ経験となる。自分の意思でしっかりと歩んでいって欲しい」とエールを送ると、参加者それぞれが空手の構えのポーズを取り記念撮影をし、オンラインエール授業は終了した。

今後もさまざまな競技によって配信される「オンラインエール授業」。

これからも、全国の同世代の仲間と想いを共有しながら、「今とこれから」を少しでも前向きにしていけるエールを送り続ける。