「ボクは日本が大好きです!」 初出場の全米プロ選手権(8月6日~9日/カリフォルニア州)で強豪トッププロを退けて、メジャー初制覇を遂げたコリン・モリカワ。勝利後に日本への思いを聞いてみると、人懐っこい目を細めて笑顔でそう語った。8月に行なわ…

「ボクは日本が大好きです!」

 初出場の全米プロ選手権(8月6日~9日/カリフォルニア州)で強豪トッププロを退けて、メジャー初制覇を遂げたコリン・モリカワ。勝利後に日本への思いを聞いてみると、人懐っこい目を細めて笑顔でそう語った。



8月に行なわれた全米プロ選手権を制したコリン・モリカワ

 一時は首位に7人が並ぶ大混戦となった全米プロ。最終日の熾烈な争いのなか、C・モリカワは14番(パー4)で15ヤードのアプローチを直接カップに沈め、チップインバーディーを奪って1つ抜け出した。

 そして、勝負を決めたのは、距離の短い16番パー4だった。この日は、グリーン手前にカップが切られ、ピンまで294ヤード。幸運にもC・モリカワにとっては、ドライバーで1オンが狙える距離だった。

 彼がドライバーで放ったボールは、グリーン手前から転がっていって、ピン手前2mに1オン。このパットを慎重に沈めてイーグルを奪い、後続を引き離した。

「16番は1オンを狙うつもりではなかったけど、今日のピンまでの距離が(ボクの)ドライバーショットとちょうど同じだった。それで、『これは狙うべきだ』と決めた」

 冷静な判断力を持ち合わせるC・モリカワは、その後の17番、18番を手堅くパー。最終的には、2位タイのダスティン・ジョンソンらに2打差をつけての完勝だった。メジャー挑戦はわずか2戦目ながら、最後まで落ち着いたプレーを披露。23歳で早くもメジャーチャンピオンの仲間入りを果たした。

 身長175cm、体重73kg。世界の舞台で戦うには、決して恵まれた体格とは言えない。そのため、平均飛距離は297.3ヤードでツアー97位(2019-2020シーズン。以下同)だ。

 しかしながら、グリーンを狙うショットの精度がピカイチ。その貢献度を示すツアーデーターのショットゲインドは、+0.884。ツアー2位を誇る。その正確なショットを武器にして、並み居るパワーヒッターたちとも互角に戦い、メジャータイトルまで手にした。

 日系アメリカ人の父と中国人の母を持つC・モリカワ。ゴルフを本格的に始めたのは、6歳の頃だった。自宅近くのゴルフコースには練習場がなく、「いつもコースに出て、球を打っていた」という。

「おかげで、グリーン周りのショットがものすごく身についた」と、C・モリカワ。幼い頃から培ってきたものが、プロとなった今、大きな武器となっている。

 大学は、サンフランシスコの名門、カリフォルニア大バークレー校に入学。経営学を専攻し、勉学に励んだ。同時に、ゴルフでは在学中、オールアメリカンのファーストチームに3度も入っている。世界アマチュアランキングでも1位に輝き、文武両道を地でいく男だった。

 そして昨年6月、大学を卒業すると、すぐにプロ転向。プロデビューわずか6試合目にして、ツアー初勝利を決めた。その後、日本で開催されたZOZO CHAMPIONSHIPに参戦し来日を果たす。

「日本でプレーすることは、とても特別なことだった。父も、祖父母も、日本では暮らしていないけど、ここは自分の国だと感じた」

 そう言ってほほ笑むC・モリカワは、全米プロ最終日の前夜にはガールフレンドと日本食を食べて、勝負に挑んだことも明かしている。

「昨晩はうどんを食べた。ボクは本当に日本食が大好きなんだ。日本食は世界一のフードだと思っているよ」

 今年行なわれたメジャー大会の2戦目、ニューヨーク郊外のウイングドフットGCで開催された全米オープン(9月17日~20日)でも、C・コリカワは優勝候補に挙げられていた。しかし、タイガー・ウッズ、ジャスティン・トーマスと同組で回った予選ラウンド2日間で通算7オーバー。2日目、最終9番ホール(パー5)の、3mのパーディーパットを外し、一打及ばず予選落ちとなった。

「メジャーには一度勝ったけど、もっともっと勝ちたいんだ」

 メジャーチャンピオンとして自信を持って挑んだ全米オープンだったが、思うような結果を残せなかった。それでも、C・モリカワの実力の高さは誰もが知っている。再びメジャーで優勝を争う日も、そう遠くはないだろう。

 それが、11月に開催される初出場のマスターズ(11月12日~15日/ジョージア州)であっても不思議ではない。