GI馬3頭を含む12頭が第56回札幌記念のゲートを飛び出した。 大外12番枠から木幡育也のトーラスジェミニが内に切れ…
GI馬3頭を含む12頭が第56回札幌記念のゲートを飛び出した。
大外12番枠から木幡育也のトーラスジェミニが内に切れ込みながらじわっとハナに立った。
ミルコ・デムーロが乗る1番人気のラッキーライラックは、トーラスジェミニを1馬身ほど前に見る2番手の外につけた。1、2コーナーを回るときもデムーロはガチッと手綱を抑えたままだった。
トーラスジェミニが単騎先頭のまま向正面に入った。1馬身ほど後ろにラッキーライラック。そこから3馬身ほど後ろの内に横山典弘のノームコア、それをマークするように、大野拓弥のペルシアンナイトが1馬身半ほど後ろにつけている。
前半1000m通過は1分0秒3。コースもメンバーも違うが、トーラスジェミニが4着と健闘した前走の函館記念のそれは58秒8。トーラスジェミニにとって、ペース的には前走より楽だが、直後にラッキーライラックら強豪がいるという点では、今回のほうが負担は大きい。最後に速い脚を使えるタイプではないので、淀みのないペースで粘り込みを狙うべきか。それとも、このままゆっくり行くべきか、木幡としては難しい選択だっただろう。
大きな動きのないまま、馬群は3コーナーに入って行く。
勝負どころで、ラッキーライラックが外からトーラスジェミニにじわっと並びかける。
4馬身ほど後ろの内にいたノームコアが、馬群のなかから差を詰めてきた。
直線入口でラッキーライラックが先頭に立ち、スパートした。トーラスジェミニは2番手で踏ん張っているが、見るからに苦しそうだ。
ラスト200m地点で、ノームコアが馬場の真ん中から2番手に上がり、ラッキーライラックを追いかける。
「4コーナー手前まですごく上手く来られました。いつも最後はいい脚を使ってくれる。それにも増して、今日は具合がよかったので、放してからはすごい動きでしたね」と横山。
ノームコアは、ラスト100mで並ぶ間もなくラッキーライラックをかわし、追いすがるペルシアンナイトも突き放し、先頭でゴールを駆け抜けた。
2着はペルシアンナイト、3着はラッキーライラック。終わって見ればGI馬の1-2-3だった。牝馬による札幌記念制覇は、2014年のハープスター以来6年ぶり。あのときも、ゴールドシップ、ホエールキャプチャ、ロゴタイプといったGI馬のいる豪華メンバーだった。
「返し馬で、ダイレクトに調子のよさが伝わってきたので、自信を持って乗りました。ほぼ考えていたとおりの競馬ができました」
サラリとそう話した横山は、道中、やや行きたがっていたのを上手く宥め、4コーナーから直線にかけてもスムーズにエスコートした。馬の強さを、名手が見事に引き出した。
(文:島田明宏)