コロナ禍により、甲子園大会は史上初めて春夏連続で中止となったが、日本高野連はその救済措置としてセンバツ出場が決まってい…
コロナ禍により、甲子園大会は史上初めて春夏連続で中止となったが、日本高野連はその救済措置としてセンバツ出場が決まっていた32校を招待して8月10日から17日まで「2020年 甲子園高校野球交流試合」を開催した。各校1試合だけの出場ではあったが、連日、激しい戦いが繰り広げられた。そこで試合を観戦した4人のスカウトに、注目選手の評価について聞いてみた。投手に続き、野手を見ていきたい。

スカウトから高い評価を受ける花咲徳栄の4番・井上朋也
井上朋也(花咲徳栄3年/181センチ・86キロ/右投右打)
「今大会の打者ではナンバーワンだと思います。村田修一(現・巨人コーチ)の若い時の感じに似ています。スイングにクセがないですし、ボールに対しての反応、対応がいい。木製バットになっても十分に結果を出せると思います。外野からサードにコンバートされていましたが、肩も悪くないですし、プロでもやっていけると思います」(スカウトA氏)
「足は速いし、肩もあるし、身体能力は抜けている。間違いなくプロレベルの選手です。高校生でありながらあれだけのスイングができるのは立派。あとは確率の問題ですが、これは経験を積めばなんとかなる。元気もあるし、先輩たちにかわいがられるんじゃないかな」(スカウトC氏)

世代を代表する強打者、明石商の来田涼斗
来田涼斗(明石商3年/178センチ・78キロ/右投左打)
「あれだけフルスイングできるのは魅力です。体つきやスイングの雰囲気は高橋周平(中日)に似ていますね。ただ、木製バットになった時に苦労するかもしれません。足は十分にプロレベルですが、肩はどうかな......弱いわけではないけど、そこまで強いとも感じなかった。とはいえ、いい選手であることに間違いはないです」(スカウトB氏)
「パワーはあるし、三拍子揃っているから3位までには消えるでしょう。ただ、インコースが打てないのが気になるし、肩は強いけど刺せる肩ではない。あと気になったのは、体が大きくなりすぎてキレがなくなっているように感じました」(スカウトC氏)

旧チームから主軸に座る履正社・小深田大地
小深田大地(履正社3年/177センチ・86キロ/右投左打)
「力はあるし、当たれば飛んでいく。素材としては申し分ないです。ただ、確率がまだまだ。とくに左投手が相手だと、外角の球が見えていない感じがします。上のレベルになれば間違いなくそこを攻められますから、対左投手というのが課題になりそうですね。ミート率が上がってくれば、プロでも十分にやっていけると思います」(スカウトA氏)
「バッティングはすばらしいですね。ただ、体が少し硬いように思いますし、守備も最初は苦労するかもしれません。バッティングを評価して2位か3位という声もありますが、私のなかでは4位か5位かなと。球団によって評価がわ分かれる選手だと思います」(スカウトD氏)

1年夏に名門・東海大相模の4番を任された西川僚祐
西川僚祐(東海大相模3年/186センチ・92キロ/右投右打)
「当たったら飛ぶし、パワーは高校生離れしています。ただ、一塁到達4.6秒と足がなく、敏捷性がないのが気になります。外野の守備にしても、今のままではプロでは厳しいでしょうね。即プロというよりは大学でしっかり鍛えてからのほうがいいと思います」(スカウトB氏)
「スイングスピードはトップレベル。見た目は荒っぽいけど、オドオドしているのを隠しているようにも感じます。ただ体は大きいし、長距離砲として育ててみたいという球団はあるかもしれないですね」(スカウトC氏)

1年春から星稜の中軸を担ってきた内山壮真
内山壮真(星稜3年/172センチ・72キロ/右投右打)
「バッティングは毎年マイナーチェンジしているし、センスのよさを感じます。中学の頃からプロ一本と進路を決めるなど、野球にかける想いが伝わります。本当のことをいうと、もう少し体が大きければ......というのはあります。ロッテの田村龍弘みたいになる可能性はありますが、プロでレギュラーを獲れるかは疑問です。キャッチャーも内野もできるユーティリティとしてなら持ち味を発揮しそうです」(スカウトA氏)
「昨年までショートを守っていて、今年はキャッチャー。広陵時代の上本博紀(阪神)を思い出しました。ただ、上本は力がないのを自覚して技術で打っていたのに対し、内山はガンガン振りたがる。これまではセンスでできていた部分があったと思いますが、それを今後どうするか。プロの世界で生き残るためには、バッティングスタイルもそうだし、ポジションも考えないといけないかもしれないですね」(スカウトD氏)

大型遊撃手として注目を集める中京大中京・中山礼都
中山礼都(中京大中京3年/179センチ・80キロ/右投左打)
「大型ショートで化ける可能性は大いにあると思います。スイングは前が大きく、福留孝介(阪神)みたい。昨年秋の神宮大会では好守備を連発していたし、スケールの大きい選手だと思います。上位で指名する球団もあるかもしれないですね」(スカウトB氏)
「神宮大会の時はすごくよく見えたのですが......。スイングは左肩が下がって、顔が寝てしまうクセがある。あれを修正できないと厳しいんじゃないかなと思いますね。肩もいいですが、やや力任せ。すべてのプレーにおいて確実性がほしいですね」(スカウトC氏)

明豊戦で2安打1本塁打と活躍した県岐阜商・佐々木泰
佐々木泰(県岐阜商3年/180センチ・78キロ/右投右打)
「私のなかでは今大会ナンバーワン打者です。スイングは速いし、足も肩もある。守備はまだ課題がありますが、鍛えれば問題ないと思います。進学を希望しているそうですが、プロ志望届を出せば間違いなく指名される選手です」(スカウトD氏)

星稜戦で5打数2安打と活躍した履正社の4番・関本勇輔
関本勇輔(履正社3年/177センチ・85キロ/右投右打)
「大阪の独自大会の大阪桐蔭戦では走られていましたが、甲子園では盗塁を3つ刺しました。二塁送球タイムは1.8秒が出ますし、肩はいいです。また、バックネットにぶつかりながらキャッチャーフライを好捕したり、ああいう大舞台でいつも以上にやれるというのは何かを持っているのかなと思います。スイングも悪くないですし、体のサイズもある。育てがいのあるキャッチャーだと思います」(スカウトB氏)

尽誠学園との交流試合では無安打に終わった智弁和歌山・細川凌平
細川凌平(智弁和歌山3年/174センチ・75キロ/右投左打)
「三拍子揃った選手であることに間違いはないのですが、すべてにおいて物足りなさがあります。だた、昨年秋までは外野手で、それ以降から遊撃手になったように、内外野守れるというのはアドバンテージになるでしょう。それに彼のプレーを見ていると『絶対にやってやるんだ』という気迫を感じる。根っからの野球小僧という感じがします。こういう選手が案外プロに入ってから伸びるので、そういう意味では楽しみな選手です」(スカウトA氏)

東海大相模の不動の1番としてチームをけん引する鵜沼魁斗
鵜沼魁斗(東海大相模3年/175センチ・75キロ/右投右打)
「センスのよさがプレーに溢れています。バッティングでの間の取り方やヘッドの使い方がうまいし、積極性もある。リードオフマンとして面白い選手になるような気がします」(スカウトC氏)

大阪桐蔭との交流試合では無安打に終わった東海大相模・山村崇嘉
山村崇嘉(東海大相模/180センチ・85キロ/右投左打)
「肩は強いし、スローイングもいいのですが、ショートとして見ると物足りなさがあります。バッティングは高校通算50本近いホームランを放っているように、パワーは申し分ありません。ただ、全体的に淡白な印象があり、プレーに粘りがほしいですね」(スカウトA氏)

倉敷商戦でレフトオーバーに二塁打を放った仙台育英の入江大樹
入江大樹(仙台育英3年/185センチ・83キロ/右投右打)
「大型ショートとして注目されていますが、捕球であったり、送球であったり、プレーがちょっと雑なように感じました。あとバッティングに関しては、パワーがあるのはわかりましたが、あの打ち方だと木製になったときに苦労するかもしれません。それでもポテンシャルの高さは間違いないですから、育ててみたいと思う球団はあるかもしれないですね」(スカウトD氏)