今回の対談は、今春入学した1年生の島田高志郎(人通1=岡山・就実)。長い手足を活かした伸びやかなスケーティングや、見る者の心を捉える表現力が印象的だ。練習拠点とするスイスでの生活や練習、試合に対する心構え、憧れの早稲田生として迎える今シーズ…

今回の対談は、今春入学した1年生の島田高志郎(人通1=岡山・就実)。長い手足を活かした伸びやかなスケーティングや、見る者の心を捉える表現力が印象的だ。練習拠点とするスイスでの生活や練習、試合に対する心構え、憧れの早稲田生として迎える今シーズンの目標などを伺った。

※この対談は7月6日に行われたものです。

「学びたいという気持ち」


早稲田パーカー姿の島田選手

 

――まず、フィギュアスケート以外のことから質問させていただきます。コロナウイルスの影響で大変な中ですが、大学生になって気持ちの変化はありますか

 

ちょっと言い方は変かも知れないんですけど、コロナウイルスの自粛期間のおかげで大学生活の準備が整ったというか。僕は通信制のeスクールの方で在学させていただいているので、その面ではすごく準備は整ったなというふうに思いますし、気持ちの入れ替え的にもすごくいい期間だったなというふうには思います。

 

――自粛期間は家でどのように過ごされましたか

 

そうですね、だいたいトレーニングとか、フィギュアスケートに対する心構えとかだったり。あとは、暇な時間はそれこそ大学の準備を始めたり友達と電話したりゲームしたりっていうのが日課でした。

 

――好きなゲームを教えていただけますか

 

好きなゲームですか(笑)。その時期は大乱闘スマッシュブラザーズというNintendo Switch のゲームとか、あとは携帯のスマホゲームとかをやっていました。

 

――早稲田大学を選ばれた理由を教えてください

 

やはりスイス、海外に住んでいるので、どうしても他の通学制の大学を選ぶのはすごく難しくて。あと、早稲田大学さんのホームページとかいろいろ見させていただいたときに、自分が本当にどうしても学びたいという気持ちが強くて。大学にいかない手段とかもあったんですけど、でもどうしてもスケートをやっているなかで、違う学ぶことを実行していったらまた違う自分も見つけられるんじゃないかということで、早稲田大学さんのサイトとか本当にたくさんチェックして、自分にとってすごくいい環境というか自分がまた少し人として成長できるんじゃないかと思って選ばせていただきました。

 

――人間科学部ではどのような勉強をされていますか

 

最初どういうふうに進めていいか分からなくて。でも今1番特に興味を持っているのが行動分析学で、それはすごく自分が楽しみながら講義を受けさせていただいています。

 

――それが、面白いと思う授業の1つということでしょうか

 

そうですね、自分に結びつける部分とかもありますし。将来自分がコーチとか振付師とかになりたいなっていう思いもあるので、そういった教育の場面だったりとかそういうものを学んでいくにあたってすごく役に立っているなというふうに思いました。

 

――今後、学業との両立のうえで、どのようなことを大事にしていきたいですか

 

そうですね、本当に継続していくことが1番大事だと思っていて。忙しい週だったりとか、どうしてもできそうにないっていうときでも本当に少しの間を見つけてこれから勉強に取り組んでいきたいなっていうふうに思いますし、意外とやってみたら今まではスケート1本というか、スケートにしか集中してこなかったんですけど、他の勉強で課題ができたときの達成感だったりとかそういう得るものがすごくあって。まだ2ヶ月くらいですけど、やってみてそういう実感がすごく多かったので今のところは生きてるって感じです(笑)。

 

――次に海外での生活についてお聞きします。コミュニケーションなど、難しい点はありますか

 

中学3年生の時に海外に行って、そのとき全くのゼロの状態から初めていきなり海外に放り出されたという感じで。今でも特に何を勉強したとか、英語を上達させたというわけでもなくて、周りから聞いていったら自然と英語が少しずつ身についていったっていう感じなので、まだまだ文法だったりとかちゃんとした単語っていうものは使えてなくて。今回eスクールの方で英語の科目も必修としてあったので、また基礎から見直せるいい機会だなっていうふうに今は思っています。

 

――海外の生活で大変なことはありますか

 

ルームシェアをしているんですけど、家事とかは全部1人でやらないとダメなので、生活していくっていうこと自体が1番大変だなっていうふうには思っています。

 

――料理をされたりするんですか

 

そうですね、毎回自炊なので結構作っています。

 

――得意料理はありますか

 

何を持って得意といえばいいのか分からないんですけど(笑)そうですね、なんだろうな。よく作るというか何回か作ったりしているのはメンチカツとかだったり。大体は栄養をとにかく入れないと、ということでスープとかに野菜をとにかく入れて体調管理の方(を大切に)という感じでやっています。

 

――逆に、日本と比べて良いところはありますか

 

すごく自然が豊かで、スイスって言ったら思い浮かぶのがアルプスのハイジの世界だ、みたいな感じなんですけど、本当に周りを山に囲まれて生活しているので空気が澄んでいて、そこがいいところだなっていうふうに思っています。

「人の記憶に残る選手になりたい」

――続いて、フィギュアスケートに関することを質問させていただきます。まず、高校時代のことについてお聞きしたいのですが、高校時代に特に力を入れて頑張ってきたことは何ですか

 

やはりずっと海外にいたので、とことんスケートと向き合う生活はできていたんですけど、その中で表現面だったりとかスケーティング技術の習得というものにすごく力を入れていました。

 

――先ほど、自粛期間中にトレーニングをされていたというお話がありましたが、具体的にはどのようなトレーニングをされていましたか

 

ほとんどは体幹トレーニングだったり、ウエイトトレーニングだったりというものをしていて。それはスイスのチームの人たちとZoomを通してみんなで一緒に一丸となってやっていたんですけど、そのほかには自主的にランニングに行ったりとか。それももうずっとマスクをしながらのランニングだったので吐きそうになりながらやってたんですけど(笑)、そういうのをやっていました。

 

――普段の練習や試合で何か愛用されているものはありますか

 

自分が愛媛県出身なのでそこのマスコットキャラクターのペットボトルホルダーとかそういうものを持って行ったり、あとは母が刺繍のオーダーをしてくれたタオルとかを持って行ったりはしています。

 

――もし可能であれば、この場で見せていただくことができるものはありますでしょうか

 

はい。ペットボトルホルダーがこちらで、刺繍入りのタオルは毎回試合にお守りとして持って行っています。


島田選手愛用品

 

――フィギュアスケートの面において、早稲田大学を選ばれた理由は何ですか

 

もともと、先輩の石塚玲雄(スポ3=東京・駒場学園)くんに、早稲田大学を考えているんですというふうに僕から言ったら、ぜひスケート部の方に入ってねというふうに言っていただいていて。それで仲間意識っていうか一緒に試合に出たいなっていう思いもそこで生まれました。スケート部があるっていう存在もそうなんですけど、そういったことがきっかけです。

 

――大学生になって、技術面、表現面で新たに頑張っていきたいことを教えてください

 

昨シーズン、技術の面で怪我がありつつもちゃんとした練習がまず積めていなかったので、まずは充実した練習というか生活を送りたいなというのが今の小さな毎日の目標です。その中で、本当に今はスケーティングとか表現力の面では少しずつ自分というものが確立できてきたなっていうふうに感じているので、毎日本当に今はジャンプにすごく力を入れて練習しています。

 

――早稲田大学に入学されてから、フィギュア部門の方々と交流はありましたか

 

一度顔合わせ会ということでZoomにはなるんですけど、部員全員が集まって挨拶っていうのをさせていただきました。

 

――早稲田大学内でも、学外でも仲の良い選手はいらっしゃいますか

 

新入生で、同じ学部で同じeスクールなんですけど、西山真瑚(人通1=東京・目黒日大高)くんというアイスダンスをやっている子とすごく仲が良くて。本当に同年代で小さい頃から一緒に顔を合わせていたので。時々、自分が「このレポートやばいよね」っていう形で連絡をとったり、お互いし合ったりしていますね。

 

――憧れの選手、影響を受けている選手はいらっしゃいますか

 

憧れの選手というか現役ではないんですけど、ステファン・ランビエールコーチ、今の自分のコーチなんですけど、その人をすごく尊敬していてその人のような人の心に残る演技ができることを目標にスケートをやっています。あとは、もちろん羽生結弦選手とか、技術の面でもアスリートの魂としての部分でもすごく尊敬していて。一緒に試合とか出させていただいているんですけど、オーラとかが全く違うのでそういった言葉では表せない何かっていうものが今後自分にも身についてくるといいなっていうふうに思っています。

 

――ステファン・ランビエールコーチは島田選手にとってどのような存在ですか

 

本当に自分の第2の父親のような存在です。氷上面では厳しく本当にストイックで、僕が今の良かったでしょって思っても、どんどん違うアドバイスが飛んできたりするので(笑)。他のスケート以外の生活の面では本当に心の支えとしても、メンタル面でもそうですし、あと、よくレストランとか(に連れていってもらったり)ステファン自身の料理を振る舞ってもらったりだとかいろんなサポートをしてもらっているので本当にありがたい存在です。

 

――ランビエールコーチにはどのような料理を振る舞ってもらえるのですか

 

なんでも作れちゃうんですね。日本食とかもトライしていますし。スイスはチーズとか乳製品がすごく有名なので、ラクレットとかチーズフォンデュとかをみんなでパーティー用に一緒に食べたりだとか。あとはそうですね、この前は唐揚げを作ってもらいました。

 

――続いて昨シーズンについてお聞きします。昨シーズン、シニアデビューされていろいろなことがあったと思いますが今ご自身で振り返ってみてどんなシーズンでしたか

 

全体を通して見たら、もう自分の思い描いていたデビューとは本当にゼロというか悔しい結果になってしまったんですけど、その経験はとても必要だったなと今なら自信を持って言える練習が進められているので、その点に関しては本当にいい糧になったなというふうには思います。

 

――4回転の方にも精力的に取り組まれていますが、自粛期間を経て現在、どのような練習を行っていますか

 

自粛期間中、自分が何も跳べなくなってしまうのではないかと不安があったんですけど、やはりその期間中にちゃんとトレーニングをしていたおかげで結構思ったよりも早くジャンプに関しては感覚を取り戻すことができています。今は、ショートプログラムに4回転2本、フリーに3本っていう練習をしていて、4回転サルコーだったりトーループの安定感が少しずつ上がっている感じですね。

 

――今後チャレンジしてみたいジャンプはありますか

 

今後というか今チャレンジしているジャンプなんですけど、4回転ループと4回転ルッツにチャレンジしています。

 

――練習の方はいかがですか

 

結構ループもルッツも回ってこけるところまではいっていて、自分の感覚と技術があと少し一致すればもうすぐのところまで来ていると思うので、これからもちろんけがとか体の状態と向き合いながらの練習にはなると思うんですけど、少しずつトライしていきたいなというふうに思います。

 

――以前けがをされていたこともありましたが、体との付き合い方で何か意識していることはありますか

 

もちろん、自分で食生活とかも見直さなければいけないので、そういうところはベースにずっと自分の意識の中に持っていて、それ以外はけがに対する恐怖心をなくすというのが今の課題というか。やはりずっと練習をしていると体の疲れだったりとかどこかしら痛いっていうのはもうずっと一定にあったりずっと感じていることなので、それに対してどうやってケアをしていくかっていう、予防という前よりも後の方が大事だといまは感じていますね。

 

――少し話がそれてしまいますが、今着ていらっしゃるパーカーは早稲田のものですよね。いつ購入されたのですか

 

はい。これは、大学が始まるちょっと前くらいですかね。そのぐらいに知り合いからもらいました。

 

――そうだったんですね。お似合いです

 

ありがとうございます。

 

――話を戻しまして、今シーズンに関してお聞きします。話せる範囲で構わないので教えていただきたいのですが、プログラムはどのようなものを用意されていますか

 

フリースケーティングは、日本語訳で、「パガニーニの主題による狂詩曲」というものを滑らせていただいて、後半はボーカル部分でイタリア語なんですけど、エ・サラ・コジというすごく雄大なボーカルになっていて、それを自分が今練習している中でもすごく気に入っていて。雄大に滑れる曲なので、これからどんどん練習量を重ねて磨いていけたらなっていうふうに思います。ショートプログラムはまだ振付師さんは公表できないんですけど、『ファイヤーダンス』っていう情熱的な曲を滑らせていただきます。

 

――将来はどのような選手になりたいですか

 

ステファンコーチに憧れる理由と少し重なるんですけど、人の記憶に残る選手になりたいなっていうのが一番の目標です。やはり昨シーズン痛感したというか、自分はすごく負けずぎらいなので、しかも欲張りなので記憶にも記録にも残れる選手になりたいなっていうふうに今シーズンはもっと強い気持ちで、頑張りたいなっていうふうに思っています。

 

――ファンの皆さんにメッセージをお願いします

 

早稲田大学の学生の1人として、スケート部にも入らせていただいたことがまずすごく嬉しいです。これから大学生活、オンラインで本当に今の時点でも大変だなっていうふうに思っているんですけれども、スケート以外の部分でも人として成長できるっていうのがまだ2ヶ月ですけど、やってみてすごく自分のためになるなって思っているので、これからとことん自分を磨いていきたいなっていうふうに思います。今はこういう時期なのでなかなか人様の前で滑ることはできてはいないんですけど、また皆様の前で滑れる時には成長した自分を見せたいですし、そういう思いで練習を頑張るのでこれからも応援よろしくお願い致します。

 

――ありがとうございました!


今シーズンの目標

 

早スポプレゼンツ質問リレー

選手の方同士が気になることをリレー形式で次の選手に質問し、それを受けてお答えいただくというコーナーです。今回は、前回の対談でお話を伺った、馬場はるあ(社1=東京・駒場学園)選手から島田選手への質問です。

馬場 試合前のルーティンで自分で変わっているなと思うもの(特徴的なもの)はありますか? 

島田 何だろうな、今までは日本にいたときはお好み焼きを食べるっていうのがルーティンであって。すごく美味しいお好み焼き屋さんがあって、そこで毎回頑張るぞって気持ちを込めてそのお店に行かせていただいていたんですけど、最近はルーティンを作らないように逆に意識しています。

 

――それには何か理由がありますか

 

やはりルーティンがないとできないっていう状況を作りたくなくて。そのルーティンが必ず実行できるものならいいんですけど、実行できなかったりだとか直前になってこれをやらないとやばいっていう気持ちが出てきてしまう可能性があるので。そういったものをなるべくなしにして自然体の状況でラフな感じで試合に望めたらなっていうふうに思っているので、あまりルーティンは作ってないですね。

 

――質問をくださった馬場選手や次の対談予定の石塚選手と交流はあったりしますか

 

馬場選手とはあまりなくて、今回Zoomで顔合わせ会をやったときに初めてお互い認識ができたかなというふうに思っています。玲雄くんもすごく最近だと思います。ノービスの頃から玲雄くんの名前はすごく知っていて、一昨年の東日本選手権とかそこらへんで顔を合わせたりだとか他にも全日本選手権で僕がジュニアからの推薦選手で出場させていただいているときから玲雄くんとすれ違ったりというか一緒の大会に出ていることはあったんですけど、本当に最近になって話すようになったりした感じですね。

(取材・編集 犬飼朋花、岡すなを、中島美穂)

◆島田高志郎(しまだ・こうしろう)

2001(平13)年9月11日生まれ。岡山・就実出身。人間科学部eスクール1年。爽やかな笑顔を見せながらしっかりとした口調でお話をしてくださいました。このインタビューに合わせて着てくださっていた早稲田パーカーがとてもお似合いでした!シニア2年目となる今シーズン、昨年の経験を活かしてさらに磨きのかかった演技に注目です。