笹生優花の秘める力がいかに大器か--それを知らしめるには十分な一打だった。かつ、初優勝をたぐり寄せたウイニングショットでもあった。 プロデビュー2戦目となったNEC軽井沢72(8月14日〜16日/長野県・軽井沢72ゴルフ 北コース)の最終…

 笹生優花の秘める力がいかに大器か--それを知らしめるには十分な一打だった。かつ、初優勝をたぐり寄せたウイニングショットでもあった。

 プロデビュー2戦目となったNEC軽井沢72(8月14日〜16日/長野県・軽井沢72ゴルフ 北コース)の最終日、2位に2打差をつけて迎えた16番パー5。ティーショットで285ヤードのビッグドライブを放った笹生は、ピンまで残り195ヤードのセカンドショットで"6番"アイアンを手にした。

 放たれた高い弾道のボールは、ピンの手前「2、3歩」(本人談)の位置にピタリと止まった。

 大会直後に自然とつけられた「和製タイガー」「女ウッズ」の異名も、最終日に来た赤黒のウエアや、日本人の父とフィリピン人の母との間に生まれたという出生だけが理由ではないだろう。ドライバー平均「260ヤード」の飛距離にしろ、アイアンの精度にしろ、笹生のゴルフが日本の女子ゴルフ界にあって"タイガー級"に規格外なのだ。

 最終日はコースレコードに並ぶ「63」(1イーグル、7バーディ)で回り、2位に4打差をつけての通算16アンダーで大会を制した。

「まだ『優勝したな』という実感は、自分には入ってきていない。もう少し時間が経ったら気持ちに入ってくるのかな。(5位タイに終わった開幕戦の)アース・モンダミンカップから1カ月ぐらい試合がなくて、試合勘がなくなったので、イチから練習する感じで調整してきました。(アース・モンダミンカップでは)2日目にスコアを落としたけど、今回は落とさなかった(2日目はイーブンパー)。経験が生きたのかなと思います」



プロ2戦目のNEC軽井沢72でツアー初優勝を遂げた笹生優花

 イーグルを決めた16番は、勝負のホールと睨んでいた。

「17番パー3が難しいので、16番でイーグルが取れれば、17番でボギっても大丈夫かなと。スライスラインでしたけど、決められた。自分はけっこう緊張するタイプで、18番まで優勝を意識することはありませんでした」

 2001年6月20日、フィリピンに生まれた笹生は、8歳からゴルフを始めた。弱冠14歳でフィリピンツアーで優勝し、日本の女子ツアーにもアマチュアとして参戦するように。2018年アジア大会では、個人と団体で金メダルを獲得した。

 数多のタイトルを引っ提げて臨んだ昨年の米女子ツアーのQTは通過できなかったものの、続いて受験した国内のプロテストに合格。昨年11月からジャンボ尾崎に弟子入りし、氏の邸宅で同級生の西郷真央らと研鑽を重ねてきた。主にアプローチの重要性を教わってきたという。

「アメリカに行きたいと思ってQTを受けたんですけどダメで......。結果的には、日本でプロというのを経験できてよかった。日本で経験をいっぱい積んで、自分で大丈夫かなと思ったら、アメリカにトライしてみたい気持ちはあります。(将来の夢は)世界一です」

 彼女の大きな目標は来年の東京五輪だ。現時点では、フィリピンのゴルファーでトップの世界ランキングである。

「今後の試合をがんばって、ランキングを落とさないようにしたいです。まだまだ1勝しただけ。持っている力以上の力を出さないと!」

 日本とアメリカの国籍を持っていた女子テニスの大坂なおみと同様に、日本では22歳までに国籍を選択する必要がある(大坂は日本を選択)が、来年に延期された東京五輪を待って、日本国籍を選択するという選択肢もある。

「国籍を選ぶ時が来たら、日本を選ぼうと思っています。日本人としての心を持ってがんばりたい」

 渋野日向子ら「黄金世代」(1998年度生まれ)、安田祐香らの「プラチナ世代」(2000年度生まれ)でもない、2001年生まれの女王が誕生した。