真夏の神宮にフレッシュな風を感じさせる。 8月10日に開幕した東京六大学春季リーグ戦、全国から実力者が集まる神宮の舞台…
真夏の神宮にフレッシュな風を感じさせる。
8月10日に開幕した東京六大学春季リーグ戦、全国から実力者が集まる神宮の舞台で、早くもデビューを飾った1人がいる。なかでも、印象的な選手の一人が明大・西川黎外野手。昨夏の甲子園で日本一に輝いたメンバーの一人である。
「7番、ライト 西川君」
初戦(10日)の早大戦、経験のある先輩とともにスタメンで名前がアナウンスされた。すると第1打席、この日最速155キロをマークした早大のエース左腕・早川隆久(4年)からタイムリー。ドラフト1位候補に挙がる逸材に対し、初打席初安打初打点といきなり結果を出した。
「リーグ戦の雰囲気を楽しむことと、積極的にプレーすることを念頭に置いて試合に臨みました」という一戦だったが、さすがは大舞台慣れしている。「自分が思っているより緊張することなく、プレーすることができました」と強心臓ぶりを覗かせた。

続く11日の立大戦も2安打1打点。13日の慶大戦は3番で出場し、クリーンアップを託された。この日は無安打だったが、6番に座った法大戦はタイムリー二塁打。ここまで14打数4安打、打率.286、3打点と奮闘。4試合を終え、充実感が身を包んでいる。
高校時代から大舞台には強かった。履正社で昨夏の甲子園に出場。主に「6番・右翼」で全試合スタメン出場し、井上広大(現阪神)らとともに日本一を達成した。「(1回戦の霞ケ浦戦で)ホームランを打った時の感触と歓声は忘れることができません」と振り返る。
大観衆に囲まれながら、冷静さを保ち、結果を出すことが求められる甲子園。日本で一番長い夏、6試合の経験で大きな成長を得ることができた。
「打席に入る前に、前の打者の攻め方を見て、どのボールを狙っていくかを考えて打席に入ることができるようになったことです。冷静に状況判断をすることができるようになったと思います」
将来はプロ入りを夢見る18歳が選んだのが、東京六大学の明大だった。「最初から六大学に行きたいと思っていた」と憧れがあったが、高校で一緒にプレーした先輩の竹田祐(3年)、西山虎太郎(2年)が活躍する姿を見て「同じところでプレーしたい」と明大の門を叩いた。
伝統的にハードな練習で知られる名門。「無駄なミスをしない、隙のないチームというイメージがありました」と明かすが、実際にプレーしてみると、選手のレベルと意識の高さに驚いたという。
「練習の中から一球に対する執着心があり、リーグ戦で結果を残すために妥協することなく練習しているところが凄いし、自主練習の量が物凄く多いなと感じました」
新型コロナウイルス感染拡大により、下級生は実家に帰省するという期間もあったが、再開後から持ち味のミート力でアピール。開幕スタメンを掴み、いきなり神宮の舞台で躍動している。

そんな1年生にとって刺激になる存在がいる。
早大・熊田任洋、立大・池田陽佑ら、他校の1年生だ。彼らもすでに神宮デビュー。初戦で対戦した熊田も「9番・遊撃」で開幕スタメンを掴み、15日の慶大戦で1号ソロ。池田は救援で初登板となった11日の初戦・明大戦を2回無失点で開幕戦初登板初勝利という快挙を演じた。
「やはり、他の大学の同い年の選手が活躍しているというのはとても刺激になります」と明治の1年生。一方で「負けないように頑張ろうと思いますし、これから4年間、何度も対戦すると思うので切磋琢磨していければいいなと思います」と誓った。
幕を開けた大学野球シーズン。当面の目標はベストナインを獲ること。「まだまだ未熟ですが、これから4年間でヒットを多く打てるように頑張りたい」。タイプは異なるが、高校の先輩・安田尚憲(現ロッテ)の実力はもちろん、野球に取り組む人間性を目標にしているという。
174センチ、68キロの体に大きな夢を宿して、戦う東京六大学の舞台。
「六大学は一球一球に本当に緊張感があって張り詰めた雰囲気を感じます。150キロを超えるようなストレートを投げる投手が何人もいて、それを簡単に打ち返す打者も多くいるところです。高校時代に名前を聞いたことがある選手ばかりで六大学のレベルの高さを感じています」
17日は今季最終戦となる東大戦を迎える。4連敗という厳しい戦いで生まれた紫紺の息吹。4年間の道のりは始まったばかりだ。
<Full-Count 神原英彰>