「黄金世代」臼井麗香インタビュー(後編)「黄金世代」について語った前編はこちら>>今季の飛躍が期待される「黄金世代」の"ビューティークイーン"臼井麗香。その愛らしいルックスからは想像できないほど、彼女のこれまでのゴルフ人生は壮絶なものだった…
「黄金世代」臼井麗香インタビュー(後編)
「黄金世代」について語った前編はこちら>>
今季の飛躍が期待される「黄金世代」の"ビューティークイーン"臼井麗香。その愛らしいルックスからは想像できないほど、彼女のこれまでのゴルフ人生は壮絶なものだった。ゴルフはもちろん、自らの目標に対しては非常にストイックな姿勢を見せる彼女の、知られざる素顔に迫る――。
プライベートについても語った臼井麗香プロ
――9歳でゴルフを始める以前は、タカラジェンヌを目指していたそうですね。
「はい。3歳の時に祖母がダンススクールに入れてくれたんですが、宝塚歌劇団出身の先生がやっているスタジオだったんです。そこでダンスを教わっているうちに、『私、宝塚(のスター)になりたい!』って思って、バレエやボイストレーニングにも通うようになりました」
――憧れのトップスターなどはいましたか。
「いませんでした。恥ずかしい話なのですが、まだ宝塚音楽学校を受験すらしていないのに、『私が宝塚の"センター"になるんだ』って思っていたんです(笑)。ですから、(すでに宝塚で活躍している劇団員も含めて)全員がライバルに見えてしまって......。自分が一番になりたかったので、他の人の活躍には嫉妬してしまうというか。小さい時から(何事においても)『私が真ん中で、一番前じゃなきゃイヤ!』っていう思いが強かったんですよね」
――それほど宝塚に憧れていながら、9歳になってゴルフを始めたのはどうしてですか。
「当時、テレビアニメの『とっとこハム太郎』が大好きで、どうしてもハムスターを飼いたかったんです。そうしたら、祖父が『ゴルフをやれば、ハムスターを買ってあげる』というので、『じゃあ、ゴルフやる!』って(笑)。
毎日100球打てば、ハムスターを買ってあげると言われたんですが、いつの間にかスパルタ指導をされていて......。小学校の授業が終わると、祖父が校門の前で車を止めて待っていて、そのままゴルフ場に連れて行かれて、パター、アプローチの練習を暗くなるまでやって、そこから練習場に行って200球打つ、という感じで......。家に帰ってからも、パットを100球決めるまで寝かせてもらえませんでした。約束どおりハムスターは買ってもらったんですが、子どもながらに『割が合わない!』って思っていました」
――日々厳しい練習をこなして、友だちと遊ぶこともできないわけですよね。ゴルフをやめたいとは思わなかったのでしょうか。
「それが、負けず嫌いな性格に火がついちゃって、『こんなに練習するからには、絶対プロゴルファーになる!』って、自分から言い始めたらしいです。『プロにならないんだったら、一球も打たない』とか言って。昔から、目標を決めて、そこから逆算して『意味がないな』と感じたことは、一切やりたくないタイプでした」
――小さい頃の、負けず嫌いを象徴するエピソードなどはありますか。
「小学校3年生か4年生の時の話なのですが、私は短距離が得意で、運動会の徒競走ではいつも1位だったんですね。でも、障害物競走の時に指示された物を見つけられず、2位になってしまって。自分が2番になったことを受け入れられず、校庭で大泣きしたんです。もう担任の先生がどう慰めても泣き止まず、他の生徒や保護者もドン引きするくらい泣きじゃくって。運動会が続行不可能になりそうなくらい大泣きしていたんです。本当に恥ずかしいくらい、昔から負けず嫌いだったんですよね」
――だから、どれだけ練習が厳しくても、ゴルフをやめることはなかったんですね。
「ただ、プロゴルファーになるって決めてはいましたけど、本音では(ゴルフを)やめたかったです。『こんな日がいつまで続くんだろう』って。『明日、やめる』『明日、やめる』......そう思いながら、気がついたら今日になっていた、という感覚です(笑)。
だって、祖父に毎日怒られて、『ゴルフを楽しい』と思ったことは、一度もなかったですから。一度、口答えしたら、ゴルフ場に置いていかれたこともありましたしね。大会に参加して成績がよくても、いいスコアで回って当たり前みたいな感じで褒めてもらえないし......。それどころか、成績がよかった日でも、帰りの車の中は説教で......。それがイヤで、疲れて寝たふりをしていました(笑)」
――それでも、小、中学校時代にはさまざまな大会で優勝したり、好成績を残したりして頭角を現していきました。
「ただ、高校時代はずっと調子がよくなくて、とりあえず全国大会には出ているけど、上位争いができない時期がありました。高校1年生の時に、同い年の(勝)みなみがプロツアーで史上最年少優勝を飾って『すごい!』と思ったけど、私もできるとは思えなかったですね」
――高校卒業後に受けた最初のプロテストでは不合格でした。
「その当時はずっと調子がよくなくて、ゴルフにまったく自信が持てなかったんです。(プロテストに)このままでは『絶対に通らない』『落ちる』と思っていました。
そう思っていましたけど、ベストは尽くしたいじゃないですか。それで、その時できることを考えたら、他の人より長く練習をすること。それしかできないと思って、朝5時半に起きてランニング。練習場で4時間、ショットの練習やトレーニングをして、そのあとパット、アプローチの練習を4時間。それが終わったら、もう1回練習場に戻ってショットの練習と、一日14時間の練習を自分に課したんです。結局、最終テストの3日目までは(合格)圏内だったんですが、その年は落ちてしまって......」
――プロテストに落ちたショックは大きかったのでしょうか。
「落ちるとわかっていましたから、落ち込みはしなかったですね。『明日からどうしよう』って、すぐに気持ちを切り替えていました。そうして、1年間努力して、もう一度プロテストを受けることを決意して。『ダメなら違う職業に就こう』と決めて、1年間練習したんです。これが最後って」
――もしプロテストに合格していなかったら、どうなっていたんでしょうね。
「勉強をし直して、違う大学へ進学していたと思います。その後、アメリカでもう一度ダンスを習おうと。それで帰国したら、今度はダンスを教える側に立ちたいなと思っていました。ゴルフにはもう『絶対関わらない』と決めていました」
――翌年のプロテストは見事に合格。そのストイックさの根底にあるものは何でしょうか。臼井選手を突き動かしているものは何なんでしょう。
「何なんですかねえ!? 物心ついた時から『ムダなことは一切しない』っていう考えでやってきているので。もちろん、プロになれたから満足ということではまったくなくて、これから達成しなければいけないことがいっぱいあります。
実は私、プロになった時に『28歳で引退する』って決めたんですね。それで、ノートには引退までの目標も全部書いてあって。何歳でこれを達成して、何歳でこれって。何歳で賞金ランキング何位、何歳でいくら稼ぐ、そのスタッツまで全部決めているんです。賞金女王は何歳で取る、その時の金額まで決めています。ノートのとおりに現実が進むのか、今から楽しみです」
――ということは、今はゴルフ以外のことには興味がない、と。
「ないですね。28歳までは、極力ゴルフに時間を割きたいので、趣味もいらないです。時間がもったいないので。だったら寝る時間を少しでも確保したいくらいで。だって、今でも時間が足りてないくらいなんですよ。トレーニングメニューを考えて『あれもやりたい』『これもやりたい』とスケジュールを組むと、一日24時間じゃ足りなくて。もちろん、夏だったら海に行ったり、ちょいちょい遊んだりはしますけど、その時は練習時間ではなくて、睡眠時間を削ります」
――28歳で引退というのは、少し早いようにも思いますが。
「そんなことないですよ。今は年下の子たちもどんどん出てきていますし。だから、私は長いスパンで活躍できるようなゴルフを目指していないんです。スイングも、これを30歳を超えてもやっていたら、必ずどこかが故障するっていうスイングをしているんで。28歳までに完全燃焼します」
――引退後の人生設計はすでに考えておられるのでしょうか。
「何か仕事をするのでしょうが、どんな仕事をすることになっても、そこで一番になりたいです。結婚も、できれば30歳手前でしたいですね。玉木宏さんのような人がタイプですが、私の仕事を応援してくれる人が理想です(笑)」
――お話をうかがって、今季目標となる1勝もそう遠くない日に実現できそうな印象があります。
「ありがとうございます。がんばります! ただ優勝争いになると、真っ直ぐ打てても、飛びすぎちゃうんですよね。アドレナリンがすっごい出ちゃって。アドレナリンってどう抑えたらいいの?っていうのが、今の悩みです(笑)」
(おわり)
臼井麗香(うすい・れいか)
1998年12月7日生まれ。栃木県出身。
身長158cm。血液型O。
女子ゴルフ界を席巻する
「黄金世代」のひとり。
2019年シーズン出場27試合。
賞金ランキング59位(獲得賞金1978万499円)。
2020年シーズン出場資格=QTランキング37位。
日本ウェルネススポーツ大学在学中。