4か月遅れて幕を開けた東京六大学春季リーグ戦。1試合総当たり制による8日間の短期決戦は3日間を終え、連日30度超えとい…

 4か月遅れて幕を開けた東京六大学春季リーグ戦。1試合総当たり制による8日間の短期決戦は3日間を終え、連日30度超えという暑さ以上に白熱した試合を見せている。それは練習自粛というかつてない経験の最中、各校の選手たちが努力した成果に他ならない。その中で、何人か印象的な選手がいた。

「自粛期間中、大学生の中で自分が一番バットを振ったんじゃないかと思うくらいにやってきた」

 そんな言葉を残したのは、11日の東大戦で決勝2ランを放った法大の4番・村田雄大外野手(4年)。名門・横浜高で4番を務めた主砲は大学3年間、出場わずか2試合で本塁打どころか安打もなし。「自分が思い描いた野球の道とは違う形になり、心が折れそうになった時もあった」という。迎えた最終学年の春、未曾有の感染症拡大により始まった自粛期間で変わった。

 自宅に戻る選手もいる中、寮に残って気持ちを切らさず、個人でできる練習に励んだ。しっかりと球を打とうと、武蔵小杉から新横浜のバッティングセンターまで自転車で行き、自費で打ち込んだこともある。努力の甲斐もあって、自粛明けのオープン戦で好調をキープ。「練習も人一倍やる男。4番を任せると思った」と青木久典監督を認めさせた。

 リーグ戦初安打が初本塁打となった試合後、村田は「自粛期間は僕にとってはプラスの期間だった」と胸を張った。

 投手で驚かせたのは、早大のエースで主将・早川隆久(4年)。10日の明大戦で先発した左腕は自己最速を4キロ更新する155キロをマークした。名門の背番号10を着ける男は自粛期間中、本格的な投げ込みができない状況を逆手に取り、体づくりを徹底。敢えてボールを触らない期間を設け、代わりにランニング量を増やして成長を求めた。

 こうして上がった神宮の真夏のマウンド。「試合ができることに感謝しながら、関係者の皆さんへの感謝の気持ちを持って一戦必勝で六大学の素晴らしさを見せて行こうと思った」という覚悟を白球に込め、12奪三振で1失点完投。圧巻の好投でチームの開幕戦白星をたぐり寄せた。

 12日の立大戦で8回途中2失点で16三振を奪った慶大・木澤尚文(4年)は暑い時期の登板を想定してトレーニング量を増やし、奪三振ショーにつなげた。東大は勝利に届いていないものの、近くの公園で選手たちが集まって素振りをするなど、初戦の慶大戦で相手の倍となる8安打を放ち、8回までリード。各打者が鋭い振りを見せ、2試合続けて善戦を演じている。

 各校、それぞれ自粛中の練習環境は異なるが、誰もが経験したことのない事態であることは同じ。その中で選手たちは試合ができないことを嘆くより、今できることに打ち込み、真夏の春を迎えようと努力してきた。

 早大の小宮山悟監督は初戦の明大戦後、「イレギュラーな形にはなったけど、選手が取り組んできた練習の成果を発揮する場。彼らの努力がきっと分かってもらえると思う」と指導者としての思いを明かした。8日間の短期決戦はあと5日。全国26連盟で唯一、春のリーグ戦を戦う東京六大学の選手が、成長の跡をグラウンドに記す戦いをぜひ目に焼き付けてほしい。

 

<Full-Count 神原 英彰>