「早川さんのために打ってきます!」。そう張り切った蛭間拓哉(スポ2=埼玉・浦和学院)は、6回無死一、三塁の絶好機で打席へ。2ストライク1ボールからの4球目、甘く入った直球を打ち返すと、高々と上がった打球は右翼席へと吸い込まれた。「本当に打っ…

「早川さんのために打ってきます!」。そう張り切った蛭間拓哉(スポ2=埼玉・浦和学院)は、6回無死一、三塁の絶好機で打席へ。2ストライク1ボールからの4球目、甘く入った直球を打ち返すと、高々と上がった打球は右翼席へと吸い込まれた。「本当に打ってきたので頼もしい後輩だなと思います」(早川隆久主将、スポ4=千葉・木更津総合))。エースの力投に打線が応え、東京六大学春季リーグ戦(春季リーグ戦)白星スタートを切った。

6回に3ランを放ち、右手を掲げる蛭間

約4カ月間の延期を経て、ついに開幕を迎えた春季リーグ戦。今季は1試合総当たり制で行われる短期決戦であり、勝率によって順位が決定される。今後に勢いをつけるため是が非でも勝利したい開幕戦、早大は明大と激突した。

初回、先発の早川は150キロを超える直球を連発すると、3番打者への2球目には自己最速となる155キロを記録。この回を三者凡退に抑えて流れを呼び込むと、その裏リードオフマンの金子銀佑(教4=東京・早実)が中前打で出塁する。その後2つの内野ゴロで2死三塁となり、打席には早大の新たな主砲・岩本久重(スポ3=大阪桐蔭)。初球の変化球を捉えると打球は中堅手の頭上を越え、適時二塁打となって幸先よく1点を先制した。しかし直後の2回、早川は安打と犠打で2死二塁のピンチを招くと、明大7番・ルーキー西川黎に中前適時打を許してしまう。その後は早大のルーキー熊田任洋(スポ1=愛知・東邦)にもリーグ戦初安打が生まれるなど両校走者を出したものの、得点には結びつかず同点のまま前半を終えた。

初回に適時打を放ち、ガッツポーズする岩本

「自分がふざけて「点欲しいわー」とか言っていたら、ベンチワークでも(蛭間が)「早川さんのために点取るぞ!」とか言い始めて」(早川)。ベンチの雰囲気も良い中で迎えた6回裏、早大は先頭の3番・瀧澤虎太朗(スポ4=山梨学院)がセンター右に二塁打を放つと、岩本も左前打で続いて無死一、三塁の好機をつくる。ここで蛭間が右越えに3ランを放ち、勝ち越しに成功した。援護をもらった早川は、5回以降二塁を踏ませない圧巻の投球を見せる。「初回から球が浮いていたが中盤以降修正できた」(早川)。8回には上位打線から3者連続三振を奪い、完全に試合の流れを掌握した。するとその裏にはまたも蛭間が、今度は右中間にソロ本塁打を放って駄目押しに成功。早川は9回もマウンドに上がると、最後は代打・植田理久都からこの日12個目となる三振を奪ってゲームセット。9回123球の力投で、自身初の完投勝利を挙げた。

自身初の完投勝利を挙げた早川

 投打がかみ合って快勝を収めた早大。早川の好投はもちろんのこと、1番・金子の初回出塁や4番・岩本、5番・蛭間の好機での一打など、各選手がそれぞれの役割をしっかりと果たしたことがこの結果につながったのだろう。次は中1日での法大戦。「この勢いのまま行きたいのはやまやまだが、勢いを勘違いして調子に乗っていると負けてしまう」と早川は気を引き締めた。明日の練習でいい準備をし、開幕2連勝を飾りたい。

(記事、写真 池田有輝)