自ら先制打放ち、過去5試合で3得点の味方打線に“喝”■中日 7-1 巨人(7日・ナゴヤドーム) 首位を走る巨人が7日、敵地・ナゴヤドームで最下位の中日に1-7の完敗を喫した。要因は相手先発の左腕・大野雄大投手に5安打10三振1得点に抑えられ…

自ら先制打放ち、過去5試合で3得点の味方打線に“喝”

■中日 7-1 巨人(7日・ナゴヤドーム)

 首位を走る巨人が7日、敵地・ナゴヤドームで最下位の中日に1-7の完敗を喫した。要因は相手先発の左腕・大野雄大投手に5安打10三振1得点に抑えられ、完投を許したこと。大野雄とは昨季から相性が悪い。巨人で22年間スコアラーを務め、2009年ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)第2回大会では侍ジャパンのチーフスコアラーとして世界一に貢献した三井康浩氏がその背景を分析。この日の試合においても「巨人に付け入るスキが全くなかったわけではない」と語った。

 この日の大野雄は、完璧に近い内容ではあった。球威があり、失投がほとんどない。「『何も初球からそんな所に投げなくてもいいだろ』と言いたくなるくらい、全ての球がストライクゾーンいっぱいの所にビタビタ決まっていました」と三井氏。特にツーシームはホームベース上、かつ低めでストライクからボールになる絶妙のコースに決まり、巨人の打者の空振りを誘った。失投は、4回先頭の北村にど真ん中のストレートを左翼席に運ばれた1球くらいだった。

 圧巻は、5-1とリードして迎えた7回の投球だった。先頭の岡本を外角低めのスライダーで遊ゴロに仕留め、ウィーラーには左前打されたものの、大城をフォークで、若林を外角低めいっぱいの147キロ速球で、連続空振り三振に切って取った。「ここをこの試合のヤマと見たのでしょう。“ギア”が1つ上がった感じでした。巨人打線は点を取ろうという勢いさえ失せましたね」と三井氏は言う。

 さらに、直近の5試合でなんと3点しか取れていなかった中日打線にあって、大野雄は2回2死一、二塁の好機に自ら中前へ先制適時打を放った。この場面は、1死一、三塁としながら井領の二ゴロで三塁走者・高橋が本塁タッチアウトとなり、チャンスが消えかかっただけに、巨人に与えたショックは大きかった。三井氏は「井領の二ゴロの際、三塁走者の高橋は足が速くないですから、ギャンブルスタート(ボールがバットに当たった瞬間にスタート)をかけるべきだと思いましたが、実際にはゴロ・ゴー(ゴロになったのを見てからスタート)でした。中日首脳陣は、最近あまりにも点が取れていなかったため慎重になったのだと思います。あのまま無得点に終わっていたら、『また今日もダメか』とムードが沈み込みかねないところでした」と指摘した。

大野雄の巨人との対戦防御率は、昨季も今季も1点台

 大野雄の巨人戦先発は今季2度目だった。前回は7月3日の東京ドームで、1安打完封勝利の菅野に投げ負けたが、大野雄も7回4安打10奪三振2失点(自責1)の内容だった。巨人との今季対戦防御率は1.13。実は昨季も巨人には、味方打線の援護に恵まれず2勝2敗だったものの、通算27回5失点(自責4)で対戦防御率1.33と抜群だった。

 三井氏は「巨人戦にことさら闘志を燃やす投手というのは、最近では少なくなりましたが、大野雄からは気合が伝わってきます。“星野イズム”をほうふつさせますね」と、かつての中日のエースで巨人戦通算35勝31敗、勝率.530を誇った星野仙一氏になぞらえた。大野雄も“巨人キラー”の系譜に連なりつつあるのだろうか。

 もっともこの日、三井氏が巨人スコアラーの立場にあったと想定して、全くのお手上げで対策の立てようもなかったかといえば、そうではないという。今季8試合に登板してトータル2勝3敗、防御率3.35の大野雄は、最近6試合連続で木下拓とバッテリーを組んでいるが、「このバッテリーは、同じ球種を2球続け、それがうまくいけばさらにもう1球、という傾向がある。このデータを持って臨めば、あるいは攻略の糸口をつかめたかもしれません」と見た。巨人の唯一の得点となった北村の1号ソロは、初球から2球続けてストレート、ツーシーム1球を挟み、さらに3球続いたストレート(6球目)をとらえたものだった。

 気合満点の大野雄に完全に抑え込まれた巨人打線。次回は徹底的に対策を練ってやり返す番かもしれない。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)