前日、相手の棄権で決勝進出を決め、男子ツアー26人目の王者の座を手に入れた第2シードのアンディ・マレー(イギリス)が、「BNPパリバ・マスターズ」(ATP1000/10月31日~11月6日/フランス・パリ/賞金総額374万8925ユーロ…

 前日、相手の棄権で決勝進出を決め、男子ツアー26人目の王者の座を手に入れた第2シードのアンディ・マレー(イギリス)が、「BNPパリバ・マスターズ」(ATP1000/10月31日~11月6日/フランス・パリ/賞金総額374万8925ユーロ/室内ハードコート)のシングルス決勝でジョン・イズナー(アメリカ)を6-3 6-7(4) 6-4で下して世界ランキング1位獲得に華を添えた。

 第1セットは3-2から相手のサービスゲームをブレークし、主導権を握った。第2セットはタイブレークでのダブルフォールトが響き、落としたが、最終セットは5-4から相手のサービスをブレークした。苦しみながらも勝利をつかんだマレーは2度3度と小さくジャンプし、全身で喜びを表した。

 今季3度目のATP1000の制覇で、ウィンブルドン、リオ五輪を含む年間8勝は自己最多。7勝で並んでいたノバク・ジョコビッチ(セルビア)を抜き去り、単独1位となった。

 5月以降、12大会のうち11大会で決勝に進出した。9月のデビスカップでフアン マルティン・デル ポトロ(アルゼンチン)に敗れてから負け知らずで、連勝は19まで伸びた。

 ジョコビッチが失速、ロジャー・フェデラー(スイス)とラファエル・ナダル(スペイン)が故障に苦しんだ今季のツアーを独走した形だ。

 試合後の記者会見で世界1位としてプレーした気分を聞かれると、こう答えた。

 「1週間でこの地位を失ってしまうかもしれないのだから、楽しもうと努めたよ。コートに立ったら、ランキングのことも何も考えていなかった。ただこの試合に勝つことだけを考えていた」

 13日にイギリス・ロンドンで開幕する「ATPファイナルズ」での自身とジョコビッチの成績次第で、また2位に戻る可能性もある。しかし、「勝ち負けより、ベストを尽くしたいと思っている。気分よくシーズンを終えたいからね」と最終戦に臨むスタンスは定まっている。

 1位から陥落したジョコビッチがATPファイナルズで意地を見せれば、ランキング1位の椅子をめぐる熾烈な戦いがふたたび見られるはずだ。

 錦織圭(日清食品)の2年連続3回戦敗退は残念だったが、こちらも最終戦での巻き返しを期待したい。

 マレーの1位奪取に関連する記録を見れば、今季の錦織の頑張りにあらためて気づかされる。マレーが5月以降の12大会で唯一、決勝進出を逃したのが、錦織に準々決勝で敗れた全米オープンだった。

 今季のATP1000大会ではジョコビッチが最多の4勝、マレーが3勝と〈BIG4〉が強さを見せつけたが、BIG4以外で2度の決勝進出を果たしたのは、錦織が唯一だ。

 今季もATP1000での初優勝はならなかった錦織だが、ローマの準決勝ではジョコビッチを苦しめた。初タイトルは手の届くところまできているはずだ。

(テニスマガジン/ライター◎秋山英宏)