フランス・パリで開催されている「BNPパリバ・マスターズ」(ATP1000/10月31日~11月6日/賞金総額374万8925ユーロ/室内ハードコート)のシングルス3回戦で、「ATPファイナルズ」(11月14~20日/イギリス・ロンドン…

 フランス・パリで開催されている「BNPパリバ・マスターズ」(ATP1000/10月31日~11月6日/賞金総額374万8925ユーロ/室内ハードコート)のシングルス3回戦で、「ATPファイナルズ」(11月14~20日/イギリス・ロンドン)の出場権獲得を狙うふたり、マリン・チリッチ(クロアチア)とダビド・ゴファン(ベルギー)が対戦し、チリッチがゴファンを6-3 7-6(9)で倒してロンドン行きの7番目の切符を獲得した。

 今年はラファエル・ナダル(スペイン)とロジャー・フェデラー(スイス)が故障ですでにシーズンを終えているため、現在、ロンドン行きのポイントレースで確定していない出場枠は、8席のうち2席を残すのみ。この試合前にはレース・ランキングで8位のドミニク・ティームが(7位はナダル)、2回戦でジャック・ソック(アメリカ)に敗れ、もはや他力本願の身に。そして9位のチリッチが、この日の勝利でティームを追い抜いて7番目の席をもぎとった。

◇チリッチ「ロンドン行きは僕の目標だった」

 試合後、シーズンの半ばにはATPファイナルズ出場を果たすと予想していなかったのでは、と聞かれたチリッチは、「予想していた。僕はこのためにプレーしていたんだ」と答えた。

 「ATPファイナルズに出場することは、僕にとってはシーズンの目標だった。世界トップ8に入るということは、すべての選手が願っていることだろう。それは間違いなく世界最高峰の大会のひとつであり、あのような形式で世界のトップ選手たちと競い合うというのは、間違いなく特別なことだ。だから、その目標を果たすことができたのは本当に素晴らしいことだよ。特にここ数週間に起きたような、出場権を巡る戦いの末に勝ち獲ったというのは、僕にとっていっそう大きなことだ」

 これ以前のチリッチとの3対戦に全勝していたゴファンだが、この日はチリッチのほうが常にリードする展開に。チリッチは「今日はリードを保ち続け、自分のテニスをすることに気持ちを集中させていた。そして言うまでもなく、アグレッシブにプレーするが、過剰にアグレッシブにはならないようにね」と説明した。

 巧みなプレースメントで揺さぶりをかけ、粘りと攻撃性を適切に織り込んだプレーで優位に立ったチリッチは、先週、錦織圭(日清食品)を倒して優勝したバーゼルで、さらなる自信を得たことも勝因のひとつだと言い添えた。

 「試合での判断もよかったと思う。タイブレークでマッチポイントをものにしなかった場面でも、僕は臆さず打ちにいっていた。それが僕のテニスの重要な部分だと思う」

◇ゴファン「今季に関して何の後悔もない」

 それは、奇妙なアップダウンの見られた試合だった。チリッチが第1セットを6-3で取ったあと、第2セットは互いにサービスをキープしつつ進んだが、第8ゲームでゴファンは攻撃的なストロークで振り回し、強烈なリターンでチリッチにミスを強いて、このセット初めてのブレークに成功する。

 ところが、自分のサービスをキープすればセットを取れるという5-3からの第9ゲームで、ゴファンはアンフォーストエラーを連発。あっという間に0-40となり、最後はダブルフォールトをおかして、文字通り自らブレークを献上してしまった。

 もつれ込んだタイブレークをダブルフォールトで始めたゴファンは、いいプレーとまずいプレーを交互に繰り返しながらも、一度は9-8とセットポイントを握る。しかし、より決然と食らいついたチリッチがフォアハンドの強打とサービスエースでマッチポイントを握り返し、最後はゴファンが当たり損ねのフォアハンドをアウトして、ゲームセットとなった。

 会心のプレーによるブレークの直後に、4本連続のアンフォーストエラーをおかした第2セット5-3からの第9ゲームについて、ゴファンは溜息をつきながらこう振り返った。

 「たぶんメンタルの問題だったのかもしれない。第2セットは集中して、第1セットよりもずっといいプレーをし、ついにブレークを果たしたとき…もっとも難しい部分をやってのけたと思ってしまい、あとはサービスを打ってセットを終わらせるだけだ、という考えになり、ミスから始めることになってしまったのかもしれない。そこから彼がいいリターンを入れてきて、またミスが続いてしまった。あれはまずいゲームだった。次からはもっとうまくやるよ」

 ATPファイナルズ出場に燃えていたチリッチとは対象的に、ゴファンは出場を逃したことについて、特に気にしてはいないと言った。

 「僕はそれをボーナスと見ていたんだ。いいシーズンのあとのプレゼントとしてね。ここでよりよい成績を出したら行けたかもしれなかったけど、それはシーズンの頭に立てた目標ではなかった。僕は今季に関して何の後悔もない。僕はすべての試合で全力を尽くした。そしてその結果は非常にポジティブなものだった」

 ゴファンはこの日敗れ、これ以上ポイントが伸びなくなったため、残る1席を獲得する可能性があるのは、2回戦で敗れ、もはやポイントを伸ばせないティーム、まだ勝ち残っているトマーシュ・ベルディヒ(チェコ/2回戦をこれから戦う)、ジョーウィルフリード・ツォンガ(フランス)となる。3回戦で錦織を0-6 6-3 7-6(3)で破ったツォンガは、このパリで優勝した場合にのみ、ロンドン行きが可能となる。

(テニスマガジン/ライター◎木村かや子)