フランス・パリで開催されている「BNPパリバ・マスターズ」(ATP1000/フランス・パリ/10月31日~11月6日/賞金総額374万8925ユーロ/室内ハードコート)のシングルス2回戦でのビクトル・トロイツキ(セルビア)に対する勝利で…

 フランス・パリで開催されている「BNPパリバ・マスターズ」(ATP1000/フランス・パリ/10月31日~11月6日/賞金総額374万8925ユーロ/室内ハードコート)のシングルス2回戦でのビクトル・トロイツキ(セルビア)に対する勝利で、錦織圭(日本/日清食品)はATPツアーでの300勝目を記録した。

 記録は自然な歩みの結果であり、目指すことではないとも言う。この数字が意味するところを外国の記者たちに尋ねられた錦織はこう答えた。

 「素晴らしい数字だと思う。でもそれがいいのか悪いのかはわからない。僕は試合毎に勝利を挙げようと努めているだけで、500勝や1000勝については考えていない。今年は、かなりよかったと思う。多くの試合に勝ち、多くの大会でプレーした。毎年強くなってきていると感じている」

 しかしその数分後、ATPツアーでの最初の勝利が2007年7月だったことを指摘されると、錦織は少しの間考え込んでからこう答えた。

 「2008年くらいからかかっていると(実際には2007年から)。そう考えると1000勝は、死ぬまでにできるかなって(笑)。今年が一番多く試合をしているので、今年のようにあまりケガがなければ、もっともっと試合数もこなせると思う。何勝と言われても、そんなにピンとはこないけれど、なるべく増やしていきたい」

  今年は、昨年優勝したバルセロナの決勝でラファエル・ナダル(スペイン)に敗れ、優勝はメンフィス(ATP250)での1大会に留まっている。その反面でマドリード、ローマでベスト4、マイアミ、トロントで決勝進出とATP1000レベルで一貫して好成績を挙げるようになってきた。

 そのことを親しいベテラン記者に指摘された錦織は、「痛いところをつかれましたけど」と微笑んでから、「確かに優勝が少ないのは少し気にはなっている。今回も(バーゼルで)決勝にいったけれど、勝てないのはともかく、決勝であまりいいテニスができてないというのが続いている。その“やるせない感”というのはあるし、何か足りてないんだろうな、と感じている」と率直な気持ちを漏らした。

 ATP250の大会など小さめの大会を多くこなせば、それだけ優勝のチャンスは増え、実際にそういう道を選んでいる選手もいる。しかし「大事なのはマスターズ(ATP1000)やグランドスラムで活躍することなので、目標はそちらにおいている」という錦織は、「マスターズの準優勝、ベスト4などが増えてきているという面での充実感は、昨年と比べてもまったく違う。それプラス、ATP250や500レベルの優勝などがついてくれば、もう少しうれしさは増すだろう」とも言い添えた。

 ちなみに、最多勝利数はジミー・コナーズ(アメリカ)の1256勝、次がロジャー・フェデラー(スイス)の1080勝、勝利製造マシンと言われた現在、アンディ・マレーのコーチであるイワン・レンドル(アメリカ)が1068勝と続く。ナダルは806勝で7位につけ、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)は745勝で11位だ。錦織のコーチであるマイケル・チャン(アメリカ)は662勝で15位につけている。

 一試合ごとに取り組んで、大きな数字は考えない。この、この上なく正しい姿勢で錦織はこれからも一歩一歩進んでいく。

(テニスマガジン/ライター◎木村かや子)